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All Photos by Chishima,J.
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ヒカンザクラの花にやって来たメジロ(亜種リュウキュウメジロ) 2009年1月 沖縄県国頭郡国頭村)
(文章は、日本野鳥の会十勝支部報「十勝野鳥だより」166号(2009年4月発行)より転載、一部加筆・修正
:前編、中編)
1月24日:午前6時半、早朝探鳥会へ。冬の沖縄の朝は遅く、まだ真っ暗である。やんばるの森へ向かう道中、空が白んでくる。ヤンバルクイナが見れそうな場所を中心に数か所を回ったが、どこへ行ってもバスを降りると頗る寒い。凍えるほどだ。最初はオーバーな格好に見えたOさんの、十勝と同じ緑のダウンコートが、実は一番の勝者であった。ヤンバルクイナは一部の人が一瞬見ただけだったが、シロハラクイナやリュウキュウハシブトガラス(この固有亜種のカラスは、中・南部では非常に見づらい)を堪能した。一旦宿に戻り、泡盛片手の朝食後、再度やんばるの森へ。相変わらず寒い。それでもメジロ(亜種リュウキュウメジロ)やヒヨドリ(亜種リュウキュウヒヨドリ)が、ヒカンザクラの濃いピンク色の花に群がっているのを見ると、あぁ此処は南国なのだなと実感する。
ハシブトガラス(亜種リュウキュウハシブトガラス)
2009年1月 沖縄県国頭郡金武町
九州以北の亜種に比べると、かなり小型である。八重山諸島の亜種オサハシブトガラスは、更に小さい。同一種内の亜種は北に行くほど大型化するという、ベルクマンの法則に合致する。
やんばるの林道は立派だ。これは褒めているのではない。林道の規模を遥かに超えて、舗装・拡幅されている。この国はどこかで金の使い道を誤ってしまったようだ、だからこそ、今回のような大人数のバスツアーでもアプローチできるのは皮肉な話である。昼食は、大宜味村で香友会会員の金城笑子さんが営む「笑味の店」で、伝統的な地元の食材をアレンジした「長寿膳」を頂く。金城さんから料理の説明を受けながら、地元のシークワーサーを随所に生かした料理の数々に、大きな御膳も瞬時に参加者の胃に収まっていく。午後は芭蕉布の里として名高い喜如嘉を訪れる。イグサなどの湿田が広がる、どこか懐かしい感じのする田園地帯だ。今回のもう一人のガイドである、野鳥の会本部の安西英明さんがリュウキュウヨシゴイを見つけ、皆で観察する。安西さんはどこでもいち早く鳥を発見し、それをただ見せるだけではなく、ユニークなトークで生態系やその保護にまで熱く語られ、一同は安西ワールドに惹き付けられた。喜如嘉の後は、久高さん方の活動の拠点となっている、「やんばる学びの森」に移動。樹冠部がブロッコリーのように広がる照葉樹林の中に設置されたトレイルを歩きながら、森やそれを取り巻く活動についてレクチャーを受ける。ここでは、姿こそ見れなかったものの、ヤンバルクイナやノグチゲラ、アカヒゲの声を間近に聞くことができた。
日没を迎え宿に戻り、昨夜と同じく居酒屋「シーサーズ」へ。ここの料理は本当に美味しい。当然酒も進むが適当なところで切り上げる。今晩は、森へのナイトツアーが待っているのだ。森では久高さんが事前に見つけておいてくれた、樹上で休むヤンバルクイナを見に行った。驚かさないため、2班にわけて見学に行ったところ、先発部隊はしっかり見れたようだが、僕の加わった後発隊では、木から下りる後姿を一瞬見られただけだった。こればかりは野生の生き物を対象としている以上仕方無い。一度に大勢が見に行って、塒を放棄されるより余程良い。何しろまた行くための、口実ができたではないか。宿に戻ったら近所の寿司屋へ繰り出そうかなどと、一部飲兵衛の間で囁いていたのだが既に閉まっており、おとなしく眠りに就いた。
「長寿膳」の解説をされる金城さん
2009年1月 沖縄県国頭郡大宜味村
イグサ畑の中のリュウキュウヨシゴイ(メス)
2009年1月 沖縄県国頭郡大宜味村
国内では南西諸島だけに生息する本種は、広く東南アジア方面まで分布する。このような分布パターンは、ムラサキサギ、リュウキュウツバメ、キンバト、シロハラクイナなどにも共通する。
やんばるの照葉樹林
2009年1月 沖縄県国頭郡国頭村
イタジイを中心とする亜熱帯照葉樹林。
1月25日:泡盛を片手に朝食(ごく一部のメンバーだけです、念のため)後、ホテル発。途中、許田の道の駅で土産を買ったりして、東シナ海を右手に見ながら国道58号線を南下する。午前9時過ぎ、金武に到着。相変わらず鳥が多く、見ていて飽きることが無い。続いて目指すは、那覇市の漫湖干潟。ここはペリー提督が来航した時代にはたいそう風光明媚な土地だったらしいが、現在では住宅地やビル街に囲まれ、何本もの橋が湖面を横断している。まず環境省の水鳥・湿地センターを見学し、標本や展示、映像等を通して干潟について学んだ。次いで干潟に出る道を歩き、マングローブや干潟を間近で体験すると同時に、ズグロカモメ、ダイシャクシギ等を観察できた。Iさんの友人の方(沖縄在住)に、御自身で作っているというサトウキビを頂き、移動のバスの中で齧ってみる。確かに甘い。そうしているうちに次の目的地、那覇の「てんtoてん」に到着していた。この、沖縄らしい入り組んだ住宅地の中にあるお店で昼食。木灰すば(沖縄そば)、古代米おにぎり、田イモを使った料理など、そのどれもが美味しかった。当然ビールも進む。食事後は今回の目玉の一つ、沖縄に古くから伝わるものの近年は途絶えていたという、ブクブクー茶の登場。香友会沖縄支部長の安次富順子さんに立てていただいたお茶を賞味する。相次ぐ豪華メニューにしばし時を忘れ、しかし飛行機の時間は着実に迫っており、クロツラヘラサギの観察は諦めて空港へ急ぐ。この辺りから、ようやく馴染んできた沖縄を離れる寂しさと、鞄に残っていた泡盛の処理を兼ねて飲み続け記憶が曖昧であり、これ以上詳述できないのが残念である。何はともあれ無事帯広に戻って解散し、ツアー前を含めると一週間の旅程は終了した。
ズグロカモメ(冬羽)
2009年1月 沖縄県豊見城市
九州や沖縄では干潟や河口で普通に見られる本種も、世界的には東アジアに数千羽が生息するだけの希少種。
ブクブクー茶
2009年1月 沖縄県那覇市
ツアーへの参加は、費用の問題もあって直前までかなり悩んだが、やはり参加して良かった。「2泊3日で10万円は高いのでは」と言う人もいた。確かに、個人旅行で行けばツアーよりはかなり安く抑えられるだろう。しかし、今振り返ってみると久高さんや安西さんのような、長年地元で活動されてきた方にしかできないガイドを受けれたこと、長寿膳やブクブクー茶といった伝統食に出会えたことなど、個人旅行ではできえぬ経験をできて、参加費はむしろ安かったくらいではないかとさえ思っている。こうして文章を綴っていたら、琉球での濃密な日々が脳裏を過り、感傷的な気分になってきた。泡盛はまだ残ってたかなぁ…、ロックで一杯飲ろうかなぁ、遠くない再訪を夢見ながら。
鳥見に興じる参加者たち
2009年1月 沖縄県国頭郡国頭村
(完)
(2009年4月10日 千嶋 淳)