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Photo by Chishima, J.
(上空から望む冬の十勝平野と日高山脈 2010年1月)
(FM JAGAの番組 KACHITTO(月-木 7:00~9:00)のコーナー「十勝の自然」DJ高木公平さん 2015年9月30日放送)
先日の新聞に、帯広市が若者や転出入者を対象に実施した、住み心地に関するアンケート結果が掲載されていました。畜大生や高校生、転入者、転出者いずれのカテゴリーでも住みやすい理由の第1位に「自然環境が良い」が挙げられ、畜大生では実に7割を超えていました。確かに、「帯広は緑が豊かで素晴らしい」、「どこまでも大平原が続いているね」などと、観光客の方もよく仰います。
しかし、帯広周辺の自然環境は本当に豊かなのでしょうか?今からおよそ120年前の1896年、帯広市街地の緑地面積は75%でしたが、第二次大戦後の1948年には2.3%まで激減しました。その後、少し回復したものの、近年では3.3%、市街地に隣接した大正地区でも5%に過ぎません。これは名古屋や大阪など、本州の大都会と比較しても非常に低い値です。森林が伐られたのは農地への転換にくわえ、燃料としての利用や革なめしに使うタンニン抽出のためでした。
帯広周辺の自然の乏しさは冬に、帯広空港を離着陸する前後の飛行機から見るとよくわかります。一列の防風林や小さな林が点在する以外、平野の大部分は雪原です。雪原の正体は畑。これが夏には十勝平野を緑豊かな場所に見せていたのです。帯広・十勝の「自然」は、畑や防風林の「緑」だったのです。
もちろん、畑と防風林がパッチワーク状に織り成す農村景観と、そこが産み出す農産物の数々は、世界に誇る価値のあるものに間違いありません。ただ、それと十勝平野の自然の良好さは別次元で考えるべきことを、念頭に置いておく必要があるでしょう。
それでも、市街地にも近い稲田地区や帯広の森周辺は現在でも良好な自然環境を残し、そこでは市民を主体とした活発な保護活動も行われています。こうした活動への多くの市民の参加を通じて保全の機運が高まり、生き物たちが互いに移動可能な緑地の再生・創造が進めば、自然環境豊かな、愛すべき郷土として実を結ぶ日が、きっと来ると信じています。
(2015年9月26日 千嶋 淳)