![Img_1211 Img_1211](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/49/ef/082a2aa2a9c736b7fbf91feb74a6f0fb.jpg)
All Photos by Chishima,J.
(日高山脈を背に飛ぶハシボソミズナギドリ 以下すべて 2013年5月 北海道十勝沖)
17日に調査を実施しました。5月は、上旬はまだ天候が不安定がちで、月末に近付くと海霧が発生するようになりますが、その間の短い期間は、晴れれば海、大地、空の青が渾然一体となって、その中で山々の残雪のみが白く浮かび上がるという一年でもこの季節だけの絶景を見せてくれます。その青い世界の中で出会う海鳥や海獣は最高です。そこで今年は2回、観察会と調査という形でこの時期に傭船を企てたのですが、12日に予定した観察会は時化と悪天候のため、あっさり中止となってしまいました。17日も当初の週間予報では雨や曇りで、今年はあの青を見られないかと思いましたが、近づくにつれ予報が好転し、当日は快晴で海も局地的にうねりはあったものの概ねベタ凪という最高のコンディションでした。残雪を頂いた日高山脈や阿寒の山並みも、期待通り筆舌に尽くしがたい美しさでした。
鳥の方は出港後しばらくすると、えりも方向から釧路方向へ一途に飛翔するハシボソミズナギドリの「川」と出会い、これは沖合に達して引き返し、ごく沿岸に到達するまで続きました。群れの密度は南千島近海やオホーツク海で見るような索餌群に比べると疎らで、ある一点だけ見るとそれほど多いとは思えないのですが、かなりの幅にわたって同一方向を目指す「大河」の構成員は相当な数に上ります。この日の調査だけでも、数えられた鳥は35000羽を超えました。4月末から7月にかけて、道東の岬や海岸ではこのようなミズナギドリ類の「川」がしばしば見られます。厚岸沖の大黒島では滞在した数日間、日の出から日没まで(夜間は不明)「川」が止めどなく流れていたこともありました。そんな「川」を望遠鏡で眺めながら、一度あの中に身を置いてみたいと願っていたので、夢が一つ叶いました。「川」に溶け込むためにはただ近付くだけでなく、ちょっとしたコツが必要なことがわかったのも収穫でした。
他にもヒレアシシギ2種やアビ類、ヒメウ等の、冬羽とは驚くほど異なる鮮やかな夏羽を堪能できたのも5月ならではでしょう。また、やや沿岸寄りではウミガラス類やウトウといった魚食性のウミスズメ類が多く観察され、餌となる魚群がいたのかもしれません。ウミガラス類の大部分はハシブトウミガラスでした。ハシブトウミガラスは中部以北の千島列島やベーリング海等北海道よりも北の海で繁殖し、越冬のため北海道近海に渡来する種類です。ところが繁殖期も迫ったはずのこの時期、多くのハシブトウミガラスが十勝沖で毎年見られます。繁殖前に栄養を付けているか、繁殖年齢前の若鳥が残っているあたりが考えられる理由で詳細はまだわかっていませんが、翼の羽が磨滅した鳥が多く、これらは若鳥かもしれません。
ハイイロヒレアシシギ(手前)とアカエリヒレアシシギ(いずれもメス夏羽)
![Img_1761 Img_1761](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/21/fa/547461c4ca126501f96b7c86662d6baf.jpg)
例年この時期から増えるコアホウドリは2羽が観察されたのみでした。船頭さん曰く「海が冷てぇから魚がみんなロシアさ行ったんだ」。魚がロシアに行ったかどうかはさておき、この日の道東太平洋の海面水温が平年より1~2℃低かったのは確かです。
着岸後は船頭さんの番屋でサケのチャンチャン焼きや煮ツブ等の魚介類を囲みながら鳥談義や海談義に花を咲かせ、解散しました。例年になく曇りや雨の多いこの5月ですが、ベストタイミングでの航海でした。
確認種: キンクロハジロ スズガモ シノリガモ クロガモ アカエリカイツブリ アビ オオハム シロエリオオハム ハシジロアビ コアホウドリ ハイイロミズナギドリ ハシボソミズナギドリ ヒメウ ウミウ キョウジョシギ アカエリヒレアシシギ ハイイロヒレアシシギ ミツユビカモメ ユリカモメ ウミネコ カモメ オオセグロカモメ ハシブトウミガラス ウミガラス ウミスズメ ウトウ オジロワシ ハシブトガラス 海獣類: キタオットセイ
*十勝沖調査は、NPO法人日本野鳥の会十勝支部が日本財団より助成を受けて、漂着アザラシの会、浦幌野鳥倶楽部との連携のもと行われているものです。
ウミスズメ
![Img_2238a Img_2238a](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/52/4c/bddee35de828cbb66f40067e0170ecb2.jpg)
(2013年5月20日 千嶋 淳)