鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

ホオジロガモ(その3) <em>Bucephala clangula</em> 3

2012-02-16 21:49:47 | 海鳥写真・アビ目、カイツブリ目、カモ目
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All Photos by Chishima,J.
(以下比較画像のメス2点除きすべて ホオジロガモ 2012年2月 北海道幌泉郡えりも町)


 一見メスのようだが全体的に茶色っぽく、特に胸から脇にかけての褐色みが強い。虹彩が暗色で、脚の橙色みが淡いことから前年生まれの幼鳥と考えられる。嘴は全体が黒く、嘴基部と目の間に将来は楕円形の白斑になるだろう白い羽毛が生じ始めていることから、性別はオスであろう。首から胸にかけて白色部が広がりつつある感じも、オスを示唆するものかもしれない。

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 潜水の瞬間。尾羽の各羽先端は擦り切れて内側へ食い込み、V字状を呈す。これはカモ類の幼羽(第1幼羽)の特徴で、マガモやカルガモでは多くの個体が秋の時点で換羽しているが、ヒドリガモやオナガガモ、潜水ガモ類等では割と遅い時期まで残す。


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 羽ばたき時の上面。中・小雨覆に灰白色と黒色が入り混じるのも若い鳥の特徴。


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 本個体とオス成鳥、メス成鳥、同幼鳥との翼上面付近の比較。メス2点の撮影データは画像中に示した。オス成鳥では小雨覆まで及ぶ翼の白色部は、分断されることなく広いエリアとして存在する。メス成鳥では白色部は中雨覆、大雨覆の各先端の黒色により、2本の暗色線に分断される形になる。メス幼鳥では白色部は大雨覆までで、中・小雨覆は灰白色と黒の混合のため、白色部を分断しているのは大雨覆の羽先1本だけに見える。本個体はメス幼鳥と近いが、次列風切、大雨覆の白色部の形、大雨覆羽先の暗色線の不明瞭さ、初列寄りの中雨覆羽先に白色部が出ない点等は、既にオスの特徴を現し始めているのかもしれない。


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 本個体は胸から脇にかけての褐色みが非常に強い。以前、「嘴がオレンジ色のホオジロガモ」「ホオジロガモとその仲間」の記事に掲載した幼鳥と比較しても、褐色みの強さは顕著。個体差なのか、換羽のタイミングの問題なのか…。尾羽の形状は確認できないが、褪色して茶色く見えるのは世代の古い羽の証拠だろう。


(2012年2月16日   千嶋 淳)


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