鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

十勝の自然62 チゴハヤブサ

2015-10-18 22:26:06 | 十勝の自然

チゴハヤブサ成鳥 2012年8月 北海道中川郡池田町)


(FM JAGAの番組 KACHITTO(月-木 7:00~9:00)のコーナー「十勝の自然」DJ高木公平さん 2015年8月31日放送)


 カラッと乾いた風が心地よい8月末から9月の十勝でよく見る猛禽類(もうきんるい)の一つにチゴハヤブサがあります。猛禽類とはワシ、タカ、ハヤブサなど鋭いくちばしやかぎ爪を持ち、他の鳥や動物を襲って食べる仲間で、以前はタカ目(もく)として一つのグループにまとめられていました。しかし近年、分子遺伝学の研究が進んだところ、ハヤブサはむしろスズメやインコに近い仲間であることがわかり、ハヤブサ目(もく)が新たに設置されました。鋭いくちばしやかぎ爪といった特徴は、他の鳥や動物を襲う習性が共通したために、たまたま似通っただけだったのです。
 チゴハヤブサは5月上旬、冬を過ごした東南アジア方面から十勝に帰って来ますが、すぐには繁殖に入りません。というのも自分で巣を作らず、主にカラスの古巣を利用するためで、カラスが巣立つ6月以降、多くのペアが繁殖を始めます。そして、およそ2ヶ月後の8月下旬から9月上旬。巣立ったばかりの、あどけない顔をした幼鳥が2羽、3羽と電柱や電線に並び、「キーキーキー」と鋭くも甘えた声で親鳥に餌をせびります。
 秋によく見られるのが農耕地や市街地、湿原などの上空を旋回しながら、大好物のトンボを捕まえる姿です。チゴハヤブサのチゴは漢字で稚魚の「稚」に児童の「児」と書く通り、普通のハヤブサの何倍も軽く、そのぶん機敏さを持ち合わせています。空中で巧みに身を翻(ひるがえ)しながら、獲物を捕え、足で押さえたまま平らげてしまう身軽さには感嘆を禁じえません。


(2015年8月24日   千嶋 淳)


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