鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

140917 十勝沖海鳥・海獣調査

2014-09-19 14:49:15 | ゼニガタアザラシ・海獣
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All Photos by Chishima,J.
アホウドリの若鳥 以下すべて 2014年9月 北海道十勝沖)


 午前5時半、快晴の中を出航。港を出ると冷たい風が頬を撫で、海面はいくらか波が立ち、季節の変わり目を過ぎたことを実感しました。オオミズナギドリやハイイロミズナギドリが数~10羽程度で次々と現れ、出港後40分ほど経過するとコアホウドリも散見され始めました。それらが同じ方向を目指しているように見え、オオミズナギドリの密度も高くなって来たのでこれはもしやと思っていると…。

 いました。水深120m付近で操業中の底曳網漁船。そして私はもちろん、船頭ですら見たことないというほど密集した多数のクロアシアホウドリ。150羽以上がまるでカモメ類のように漁船に群がり、その中には約50羽のコアホウドリと、更にはアホウドリの若鳥が1羽!!オオミズナギドリやカモメ類も多く、目の前で繰り広げられる「秋の信天翁祭」にただひたすら夢中と興奮の中にあった1時間弱でした。クロアシアホウドリは普段より、上下尾筒の白い成鳥が多い印象でしたが、季節的なものなのか索餌能力の違いなのかは不明です。しかし、普段は広い海に分散しているはずの海鳥が、操業中の漁船を見付けて短時間の内に続々と集まって来る能力には驚くばかりです。今回のような晴天だけでなく、濃霧の日にも集まるので、視覚だけでなく嗅覚も重要な役割を果たしているのでしょう。


クロアシアホウドリの群れ
コアホウドリアホウドリカモメ類の姿も見える。Img_2676


 復路はオオミズナギドリがほぼ絶え間なく飛ぶ中、オオトウゾクカモメが次々に現れ、近距離でも何度か見られました。優占種がいつの間にかウミネコやセグロカモメに変わると、もう沿岸。港周辺でウ類3種やハジロカイツブリも観察して船を降りました。今回はアホウドリ類が過去にないくらい多く出現したのにくわえ、多少風があったのでそれらやミズナギドリ類が水平線高くまで悠然と上昇しながら飛ぶ姿も楽しめました。ウミスズメ類はウトウが往路で1羽のみと少なく、10月後半にウミスズメの南下群が入って来るまではその状態が続きそうです。9~10月前半はもっと北の海域に移動しているのかもしれません。最近よく見られるというカマイルカの大群には出会えずじまいでした。風があって海面近くにイワシの群れがいないからではないかとは、船頭さんの見立てです。
 下船後はいつものように番屋でサケのちゃんちゃん焼き(心臓や白子も混じった、船頭さんが今季釣り上げたもの)やマツカワの刺身、贅沢にイクラを盛り付けたジャガイモ等、旬の魚介料理を頂きながら歓談し、解散しました。参加、協力いただいた皆様には厚く感謝いたします。そしてお疲れ様でした。

観察種:クロガモ ハジロカイツブリ コアホウドリ クロアシアホウドリ アホウドリ フルマカモメ オオミズナギドリ ハイイロミズナギドリ ハシボソミズナギドリ アカアシミズナギドリ ヒメウ カワウ ウミウ ヒレアシシギspp. ウミネコ セグロカモメ オオセグロカモメ オオトウゾクカモメ ウトウ トビ オジロワシ ハシボソガラス ハシブトガラス スズメ目鳥類 海獣類等:イシイルカ イルカ類 チョウ類


海面から飛び立ったオオトウゾクカモメ
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(2014年9月18日   千嶋 淳)


*十勝沖調査は、NPO法人日本野鳥の会十勝支部漂着アザラシの会、浦幌野鳥倶楽部が連携して行っているものです。参加を希望される方はメール等でご連絡下さい。
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140828 十勝沖海鳥・海獣調査

2014-09-02 17:08:42 | ゼニガタアザラシ・海獣
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All Photos by Chishima, J.
オオミズナギドリ 以下すべて 2014年8月 北海道十勝沖)


 漁港へ向かう十勝川沿いは一面の厚い霧で一抹の不安を覚えましたが、この時期は港や調査海域の方は晴れているような漠然とした直感を抱いて早朝の道路をひた走りました。午前6時、漁港は水平線まで見通せる快晴!!大いなる期待と共に出航した港のテトラポッドにはオオセグロカモメやウミネコにくわえ、秋の渡来が始まったばかりのセグロカモメも散見され、季節の確実に移ろっていることを実感できました。

 水深300m強の沖合まで約4時間かけて往復。どこまでも続く青い空と海、波も穏やかで舳先に座っているだけで気持ちの良い日でした。鳥は、今年の傾向としてミズナギドリやヒレアシシギの大群と相変わらず出会えなかったものの、沿岸部でウミネコやオオセグロカモメ、沖合でオオミズナギドリ、アカエリヒレアシシギなどが優占する夏の終わりから秋の初めに典型的な海鳥相でした。最大沖合で操業していた底曳網漁船周辺では何羽ものクロアシアホウドリを至近距離で観察しました。やや珍しいのはエトピリカの若鳥やオオトウゾクカモメ。エトピリカ若鳥は異常ともいえる多さを示した7月よりは少なかったものの、2羽と例年(0~1羽)よりは多いようです。
 この時期ならではの鳥として、復路に次々と計3羽を確認したコシジロアジサシ(写真)があります。いずれも単独の成鳥で、2羽が海上の流木上への止まり、1羽が飛翔でした。サハリンやカムチャツカ、アラスカなどで繁殖する本種の越冬地は長らく謎で、繁殖地近海に留まるとも言われていた一方、近年では東南アジア方面が有力な候補地となっています。日本周辺での動きはまだまだ分からない点が多いものの、この5年ほど、十勝から根室にかけての太平洋上で8月下旬に毎年観察しています。少数がこの時期の道東太平洋を通過するのは確かで、今後も情報の収集・整理に努めたいと思います。


コシジロアジサシ成鳥
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 セグロカモメ同様、早期に秋を告げるハジロカイツブリが数羽、港周辺で観察されました。港内の1羽は「キィー」、「キュエー」とシギ類かクイナ類を思わせる高い声で何度も鳴いていました。メンバーにちょうど鳥声の専門家がおり、その方によると繁殖期前の3、4月頃に鳴くことはあっても、大変珍しいようです。
 波が無く見やすかったせいかイルカ・クジラ類も多く、沿岸でネズミイルカ、沖合でイシイルカとミンククジラ、双方でカマイルカが出現しました。もっとも船頭さんによると、前日には海一面のイルカ(たぶんカマイルカ)がいたそうなので、それに比べれば少ないのでしょうが。沿岸のネズミイルカが度々出現したエリアではカモメ類の鳥山やシロエリオオハム、オオハムも観察され、何らかの魚群がいたようでした。
 帰港後はいつも通り鮭やタコなど新鮮な魚介類を頂きながらの談義に花を咲かせ、昼近くに解散しました。今回の10名の参加者のうち、地元十勝は4名のみで釧路や旭川、美瑛と道内各地、あるいは東京からも参加いただきました。このような形で多くの方と船のチャーターをシェアしながら、十勝の海の生物多様性を知っていただけるのは、とてもありがたいことです。参加・協力いただいた皆様に感謝いたします。そしてお疲れ様でした。


確認種:シノリガモ ハジロカイツブリ オオハム シロエリオオハム コアホウドリ クロアシアホウドリ オオミズナギドリ ハイイロミズナギドリ ヒメウ カワウ ウミウ アオサギ キアシシギ アカエリヒレアシシギ ハイイロヒレアシシギ ウミネコ セグロカモメ オオセグロカモメ コシジロアジサシ アジサシ オオトウゾクカモメ トウゾクカモメ トウゾクカモメsp. ウトウ エトピリカ ハシボソガラス ハシブトガラス ハクセキレイ 海獣類その他:ミンククジラ カマイルカ イシイルカ ネズミイルカ サメ類 チョウ類


沿岸のネズミイルカ
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(2014年8月29日   千嶋 淳)


*十勝沖調査は、NPO法人日本野鳥の会十勝支部漂着アザラシの会、浦幌野鳥倶楽部が連携して行っているものです。参加を希望される方はメール等でご連絡下さい。