鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

冬の海獣

2006-01-31 08:04:38 | ゼニガタアザラシ・海獣
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Photo by Chishima,J. 
(氷上のゴマフアザラシ 1999年1月 北海道網走市)

 厳しい冷え込みが続いた1月上旬のある日、海辺へ出かけた。厳冬期としては珍しいくらいに凪いだ海は、十勝晴れの陽光を受けて燦然と輝いていた。穏やかな気持ちで海面を眺めていると、突如その一角が盛り上がるのを認めた。慌てて傍らに置いていた双眼鏡を手に取り、視野に入れる。黒色の体に小さめの背びれ、そしてこの控えめな浮上は間違いない。ネズミイルカである。その後暫くの間、2頭のネズミイルカは砂浜の波打ち際に近い、ごく狭い海域で潜水と浮上を繰り返していた。夏場によく出会うカマイルカの群れなんかは、こちらが呆気に取られているうちにどんどん移動して、すぐ見えなくなってしまうのとは随分対照的だ。あんなに狭い海域で一体何をしていたのだろうか?ちなみに、晩秋から冬期の道東沿岸では、このようにネズミイルカが波打ち際でみられるのは決して珍しい光景ではない。そういえば以前、晩秋に死亡したネズミイルカ数頭の胃内容物を見る機会があったが、カジカ科魚類やタウエガジ科魚類、ハタハタ、コマイなど沿岸底層性魚類がその大半を占めていたのが印象的だった。秋から冬はそうした沿岸性魚類の多くの産卵期に当たり、普段以上に接岸するので、中には岸近くの藻場に集まる種類もいるだろう。ネズミイルカはそれらを狙って波打ち際で索餌していたのではないだろうか。ネズミイルカは、英名を’Common porpoise’といい、その名の通り北半球の冷・温帯の海域では普通にみられる小型のイルカである。北海道の沿岸でも四季を通じて各地で観察できるが、その生活史や分布は意外にも不明な点が多い。

ネズミイルカ2006年1月 北海道中川郡豊頃町
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Photo by Chishima,J. 


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 流氷初日やその接岸がマスコミを賑わすことの多くなるこれからの季節、北海道では同じ海獣類でも鯨類よりアザラシやアシカの仲間である鰭脚類の方が目にする機会がぐっと多くなる。特にアザラシ類は、日本に分布する種のうちゼニガタアザラシ以外は流氷上で繁殖するため、冬の後半に数を増す。その中でもずば抜けて多いのがゴマフアザラシである。3月中・下旬にオホーツク海や根室海峡の流氷上で、アニメで一躍有名になった白い幼体毛に包まれた子を出産する。一般には冬期に流氷とともに北方からやってくると言われることの多い本種だが、非繁殖期には沿岸に上陸して過ごす習性をもっており、千島列島などで夏期を過ごして、道東沿岸を経由して繁殖海域に向かう個体も少なからず存在するものと思われる。十勝では流氷があまり来ないため見る機会は多くないが、繁殖に参加しない若い個体(通常3~5歳程度で性成熟に達する)が河口や海岸に出現する。そのような個体は北海道のほかの場所でもみられ、特に日本海側に多く、稚内近郊の抜海は近年ゴマフスポットとして名を知られるようになった。ほかの氷上繁殖型アザラシは、クラカケアザラシが外洋性であるために、またワモンアザラシアゴヒゲアザラシはそもそもの来遊数が少ないために、なかなか見られない。それでもこれらの種の幼獣の中には、分散の過程で大きく南下する種もいるものだから、アゴヒゲアザラシなどは例の「タマちゃん」で全国民の知るところとなった。

ゼニガタアザラシ
2005年8月 北海道東部
初夏に岩礁で繁殖する本種の冬の生態は、採餌回遊に出るとも繁殖場の周辺にとどまるとも言われ、謎が多い。
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Photo by Chishima,J. 

ワモンアザラシ
1999年1月 北海道網走市
北半球でもっとも個体数の多いアザラシ類である本種は、極北の定着氷が主要な繁殖地だが、オホーツク産亜種は流氷でも繁殖する。
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Photo by Chishima,J. 

アゴヒゲアザラシ
1997年5月 北海道中川郡豊頃町
頭部が赤いのは、無機鉄の酸化物・水酸化物の色素の付着によるものと思われる。海底で貝などの底性無脊椎動物を多く捕食するためだろう。
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Photo by Chishima,J. 

 同じ鰭脚類でも、アシカ科のトドキタオットセイは北海道よりも北方で夏期に繁殖し、索餌回遊のためにやってくる。トドは分布域の北太平洋の、特にアラスカ湾より西側では近年の個体数の減少が著しく、アメリカやロシアは絶滅危惧種として保護やそのための研究に力を注いでいる。北海道でも上陸場(トドは冬期の回遊中でも岩礁に上陸する)の数や来遊域の分布は縮小しているが、局所的に漁業(漁具・漁獲物)に対する被害が拡大していて、駆除という対策を取らざるを得ない地域も生じている。キタオットセイは、北海道より更に南の三陸沖が主要な越冬域である。世界有数の漁場であるこの海域でハダカイワシ類などの魚類やイカ類を食べて、翌年へのエネルギーを補充する。沖合性で岸から姿を見る機会は少ないが、回遊期に同海域を通過するフェリーに乗れば、手足を海面に出し、ゴムタイヤのように丸くなって休息する姿やイルカのようにジャンプしながら船と伴走するのを見ることは難しくない。

夏のトド
2000年7月 千島列島エトロフ島
この場所は集団繁殖地(ルッカリー)ではなく、主に非繁殖個体が集う上陸場。けたたましい咆哮を、絶壁に打ち寄せる荒波が打ち砕く。
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Photo by Chishima,J. 

回遊中のキタオットセイ
1998年4月 東京~釧路航路 三陸沖
三陸沖に来遊するのは、サハリンのチュレニー島やカムチャツカ沖のコマンドルスキー諸島で繁殖した群れである。
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Photo by Chishima,J. 

 冬の海獣といえば、以前は幻的な存在だったラッコも、最近北海道での出現が増えてきているが、ラッコについて書くのはまたの機会にしよう。


ラッコ
1997年1月 北海道根室市
頭が白っぽい印象が強いが、幼獣はこの写真のように全身が黒い。千島列島での個体数回復の影響か、近年は道東での観察例が多い。
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Photo by Chishima,J. 

キタキツネ
2006年1月 北海道中川郡豊頃町
ネズミイルカを観察した帰りに。空の青に雪原の白、それに艶のある冬毛の狐色が目に眩しかった。
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Photo by Chishima,J. 

(2006年1月20日   千嶋 淳)


漁港めぐり

2006-01-24 19:27:43 | 海鳥
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Photo by Chishima,J. 

コオリガモ雄 1997年1月 北海道根室市)

 厳寒期の北海道では、思いのほか鳥を見る場所が少ない。特に私の住んでいるような平野部の内陸だと、大方の場所は雪と氷に閉ざされてしまうので、林に出かけて小鳥たちとの出会いを楽しむか、真冬でも凍らない一部の水辺でカモやハクチョウ、ワシを眺めるくらいのものである。冬の北海道の林というと、いかにもレンジャクやらアトリ科の赤い小鳥たちが群れ飛んでいそうなイメージがあるが、これらの冬鳥は年による渡来数の差が激しく、ほとんど渡来しない年も珍しくない。そうした年には寒い思いをしながら林内を歩いても、留鳥のカラ類やキツツキ類くらいにしか出会えない日々が続く。勿論、身近な小鳥たちとの触れ合いも楽しいものではあるが、いささか物足りなくなるのが人情というものである。


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キレンジャク
1996年12月 北海道帯広市
北海道ではヒレンジャクより普通で、家の近所でもほぼ毎年見られるが渡来数は年によって著しく異なり、昨冬は現れなかった。
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Photo by Chishima,J. 

 そんな時は海辺を目指す。冬の北海道の海には海ガモ類やアビ類、ウミスズメ類、カイツブリ類、ウ類など多くの北方系海鳥が越冬にやってくるからだ。オーソドックスな海鳥ウオッチングは、岬や海岸から望遠鏡を用いて、海上にいるこれらの海鳥を探す。ただでさえ気温が低いのに、岸には海からの風が容赦なく吹き付ける。鼻水は凍り、顔は半ば顔面神経痛のようになりながら、望遠鏡の視野の片隅に、波間に浮き沈みするウミバトやコケワタガモなどの珍鳥を捉えた時の喜びは、ひとしおである。しかしながら、ものぐさで寒いのが嫌いで、おまけに鳥は近くで見たいという我侭な私は、もっぱら「もう一つの方法」で海鳥の姿を探し求める。それが漁港めぐりである。

ワシカモメ(成鳥)
2000年1月 北海道根室市
数は多くないが、主に岩礁海岸やそれに隣接する港では普通種である。
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Photo by Chishima,J. 

 元来は漁船の停泊と魚介の水揚げを目的に整備された漁港であるが、防波堤や消波ブロックに囲まれた水面はそれ自体が入り江の役割を果たし、多くの海鳥が打ち寄せる波浪を避けてか漁港に入ってくる。さらに、カモメ類などは人間の水揚げ物のおこぼれに預かろうと、積極的に集まってくる。そこをちゃっかり観察しようという寸法だ。なにしろ、普通だったら望遠鏡で見るような鳥たちが、双眼鏡、時に肉眼で十分堪能できるのだから、これは魅力である。ディスプレイに興じるコオリガモの一群の、雄たちが発する「アッ、アオナ!」という酔狂な声に酔いしれたり、いつもは沖合に点のようにしか見えないウミスズメを足元に眺めることができるのも、漁港ならではの楽しみといえる。

シノリガモ(雄)
1999年12月 北海道広尾郡広尾町
英名がHarlequin Duck(道化師カモ)というのも頷ける。
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Photo by Chishima,J. 

ウミスズメ
1999年12月 北海道根室市
足元で見ると、意外と大きいことに驚く。
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Photo by Chishima,J. 

シロエリオオハム
2000年2月 北海道幌泉郡えりも町
アビ類も港以外では、近距離で見ることの難しい鳥だ。
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Photo by Chishima,J. 

 海鳥たちとの間近での出会いとともに、漁港での探鳥を魅力的なものにしているのは、珍鳥の出現頻度の高さである。ただでさえ見るのが難しい鳥が、手を伸ばせば届きそうな距離にいるのだから、嬉しくないはずがない。太平洋に沈みかけた夕陽が、薔薇色の腹をさらに赤く染め抜いたヒメクビワカモメ、クロガモとともに浮上してくるたび後頚の白が目に眩しかったアラナミキンクロの雄、寒波の後凍りかけた港の一角に飛来した10羽以上のオオホシハジロの群れ…、冬の漁港での胸ときめかす出会いの思い出は枚挙に暇がない。

オオホシハジロ(雄)
2000年2月 北海道野付郡別海町
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Photo by Chishima,J. 

 漁港探鳥の面白い点は、上記のような珍鳥も含めてどこに何が現れるかわからないという、マジカルミステリーツアー的要素が大きいところだ。確かに、その地域で一番鳥が多い漁港というのはある(中程度以上の規模の港が多い)が、思いもよらぬ場所に意外な種が現れて、なおかつその変動が激しいのが漁港の特徴である。数年前、ハシジロアビを目の前に見たのは、普段は鳥の少ない、小さな漁港だった(だからこそ目の前で見れたのである)。同じ漁港を一週間後に訪れたところ、普通種でさえ非常に少なかったので驚いたものだ。だからこそ、「今日はなかなか入りがいいな。」とか「ここはスカか…」などと一喜一憂しながらなるべく多くの漁港を回ってゆくのである。

ウミガラス
2006年1月 北海道広尾郡広尾町
この個体がいたのも、普段は鳥影の薄いごく小さな漁港だった。
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Photo by Chishima,J. 

 こうして冬の漁港めぐりは続いてゆくのだが、時には油にまみれて疲弊した鳥やトラックにはねられて片翼の落ちたカモメ類、混獲され港の片隅に捨てられた海鳥や海獣の死骸を目にすることもあり、漁港が人間の経済活動のための場所だったこと、そして北海道の海鳥や海獣の置かれている現状を否応なしに思い出させられることになる。

油にまみれたオオセグロカモメ
1997年4月 北海道中川郡豊頃町
虚ろな眼光は何を見ているのか…。
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Photo by Chishima,J. 

スズガモの群れ
2006年1月 北海道中川郡豊頃町
内海を好む性質のためか、漁港でも数が多い。
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Photo by Chishima,J. 

(2006年1月16日   千嶋 淳)


渡り遅れ?

2006-01-20 08:59:10 | 鳥・秋
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Photo by Chishima,J. 
(季節はずれのノビタキ 2005年11月 北海道中川郡豊頃町)

 この11月は例年にないくらい暖かく、穏やかな日が続いた。雪もほとんど降らず、かと言って降雪前に特有の、枯れ行く褐色の大地が醸し出す悲壮感も薄い、10月の延長のような日々であった。
 そのせいだろうか、11月上旬のある麗らかな日に外に繰り出すと農耕地で1羽のノビタキに遭遇した。ノビタキは十勝地方の平野部ではいたって普通の夏鳥ではあるのだが、10月中旬までにはあらかた渡去してしまう。11月に突入してからの観察は初めてだったので、少々驚いた。もちろん何事にも例外は付き物で、いわゆる「夏鳥」が季節はずれの秋冬に観察されることはあるが、それらの多くはホオジロやカワラヒワなど植物質の食物を中心に食べる連中である。ノビタキはそれらに比べると昆虫など動物質の食物への異存の度合いが高い。少々巨視的にみると、夏鳥の小型ツグミ類(コマドリ、ノゴマなど)やヒタキ類の多くが日本より南で越冬していることから、これら動物食者には日本の、ましてや北海道の寒冷な冬ではとても生きていかれないものと思われる。だからこそ、ある時を境に判で押したように渡去してしまうのだろう。このノビタキは温暖な秋で餌となる昆虫が発生し続けた上に、同種の競合相手がいないのに気を許してついつい長居してしまったのだろうか。


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ホオジロ
2005年5月 北海道河西郡中札内村
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Photo by Chishima,J. 

カワラヒワ
2005年9月 北海道十勝川中流域
草の種子が主食。
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Photo by Chishima,J. 

 温暖で積雪もないためか、10月中に多くは渡去してしまう旅鳥のシギ・チドリ類にもずいぶん居残り組が生じ、デントコーン畑や採草地ではウズラシギやムナグロが、また河原ではハマシギやアオアシシギが下旬までみられた。ガン類やカモ類をはじめとする水鳥の多くも大きく数を減じることなく、長期の滞在を決め込んでいたようだ。それでも、冬鳥は時期に合わせて北から到来してくるものだから、11月の十勝では例年以上に多くの鳥を観察でき、楽しませてもらった。

ウズラシギ
2005年11月 北海道中川郡豊頃町
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Photo by Chishima,J. 

ヒシクイ(亜種オオヒシクイ)
2005年11月 北海道十勝川下流域
澄みきった秋の空を一群のヒシクイが横切ってゆく、鳴き声の喧騒とともに。
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Photo by Chishima,J. 

ハクガン
2005年11月 北海道十勝川下流域
十勝には、この10年ほど毎シーズン訪れてくれる。周囲はヒシクイ。
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Photo by Chishima,J. 

オオモズ
2005年11月 北海道十勝川下流域
冬鳥として少数が渡来するが、行動圏が広いためか中々お目にかかれない。
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Photo by Chishima,J. 

 そして12月。「このまま雪が降らなくて、気温も暖かいままだったりして。そしたら除雪や凍結路面から解放されるなぁ。」などと云う杞憂や妄想とは裏腹に、時期が来ればしっかり雪は降り、道路や湖沼もがっしり凍ってくれた。越冬地への移動を渋っていたかにみえたタンチョウも、掌を返したようにいなくなった。でもって積雪の後には、「どうせ春になりゃ融けるのによぉ。」、「いくら掻いたところでまた降るべ。」と悪態をつきながら家の前の雪掻きをしている自分がいる。すっかり例年通りの光景である。

晩秋のタンチョウ in 牧草地
2005年11月 北海道十勝川下流域
水辺の結氷や積雪と同時に越冬地の釧路方面へ移動するのが常だが、近年は農家の庭先などで越冬する個体も出てきている。
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Photo by Chishima,J. 

それでも、雪掻きで汗を流した後、ストーブに当たってビールなど飲みながら「この雪で鳥が動いて赤い鳥やら白い鳥やらが北海道にも押し寄せてくるのでは…。」とか目尻を垂らしながら夢想しているのだから、鳥キチというのはまったくおメデタい人種といえる。

イスカ
1996年4月 北海道札幌市
本種やオオマシコ、ギンザンマシコなど「赤い鳥」には、アトリ科の鳥が多い。
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Photo by Chishima,J. 

シロハヤブサ
2001年3月 北海道十勝川下流域
雪原でケイマフリを捕食。本種やシロフクロウ、ユキホオジロなど「白い鳥」は遥かな極北の香りを漂わせる。
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Photo by Chishima,J. 

(2005年12月25日   千嶋 淳)


終認

2006-01-12 08:56:23 | 鳥・秋
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Photo by Chishima,J. 
(ニュウナイスズメ 雄 2005年6月 北海道中川郡豊頃町)

 11月に入って一週間ほどが経過するが、北海道は10月以降温暖な日々が続いており、どうも本格的な冬が目前である実感が湧かなくて困っている。実際、近所の水辺でもハマシギをはじめ、ムナグロ、ツルシギなど渡り時期が比較的遅くまで続く種ながら、本来は旅鳥のシギ・チドリ類が例年より多く残っている印象を受ける。それでもオオハクチョウやツグミは日々数を増しているし、オオワシも到来するなど鳥の世界でも次の季節への交代劇は着実に進んでいるようである。


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ハマシギ(幼鳥)
2005年9月 北海道勇払郡鵡川町
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Photo by Chishima,J. 

デントコーン畑のオオハクチョウ
晩秋の十勝平野を、雪を先取りして白く染める風物詩。

2005年11月 北海道十勝郡浦幌町
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2005年11月 北海道中川郡豊頃町
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Photo by Chishima,J. 

オオワシ(成鳥)
2005年11月 北海道十勝川中流域
10月下旬から渡来しはじめ、11月中旬以降数を増してくる。
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Photo by Chishima,J. 

 渡り鳥がその地で最初に確認されることを「初認」、渡去前に最後に確認されることを「終認」といい、初認日・終認日はその種の滞在期間を明らかにするのに、また生物暦の観点からも重要な指標となる。夏鳥の場合、通常渡来してすぐにさえずりやその他の繁殖活動を開始するため、(渡来日ではないかもしれないが)初認はわりと容易である。これに対して、終認の把握は一筋縄には行かない。特に、陸鳥類ではただでさえ繁殖終了後は林や藪の中でひっそりと暮らしているものが多いので、気がついたらすっかりいなくなっていたということになる。そのためだろう、「北海道鳥類目録」(藤巻裕蔵著)などでも渡来時期については多くの普通種について書いてあるものの、渡去時期まで言及している種は非常に少ない。繁殖終了後は掌を返したように目立たなくなり、なおかついち早く渡ってしまう種には、エゾムシクイやコルリなどがある。キビタキやコサメビタキは目に付きにくくはなるが、カラ類の混群に参加したりしながら秋の半ばくらいまでは滞在している。一方、ベニマシコやオオジュリンは地鳴きも特徴的なため秋期にも普通にその存在を確認でき、11月に入ってもまだ残っていることがある。

キビタキ(雄)
2005年6月 北海道中川郡豊頃町
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Photo by Chishima,J. 

コサメビタキ
2005年5月 北海道帯広市
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Photo by Chishima,J. 

ベニマシコ(幼鳥)
2005年7月 北海道中川郡豊頃町
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Photo by Chishima,J. 

 10月中旬に網走地方を訪れた時のこと。ある水田地帯で(畑作・牧草地がほぼ独存する十勝地方と違い、稲作も行なわれている)熟れた稲穂に群れる約100羽のスズメに双眼鏡を向けたところ、それらがすべてニュウナイスズメだったのに驚いた。ニュウナイスズメは、十勝で見ている限りでは繁殖終了後には大きな群れを形成しているが8月後半以降はほとんど姿を目にすることがなくなるため、8月末か9月初めには南方に渡去するものと考えていたからである。待てよ、繁殖期が終って気が緩んでいる、あるいは水辺を賑わせだした水鳥の観察に現を抜かしている私の観察が十分でないかもしれぬ。そこで、日本野鳥の会十勝支部報「十勝野鳥だより」のバックナンバー、ならびにいくつかの地域で個人あるいはローカルなグループの努力によって発行されている鳥類目録から秋期のニュウナイスズメの記録を探した。9月にごく少数の記録があるにはあったが、8月後半以降の記録は非常に限られていた。やはり、十勝では秋の早い時期にいなくなる鳥だといえそうである。越冬地となる本州では、7月下旬から8月上旬には早くも訪れるというから、実際繁殖地からの渡去は早い鳥のようでもある(これは北海道からではなく、本州の高地からの漂行の可能性もあるが)。
 それでは、10月中旬に網走でみた群れは一体何だったのだろうか?北海道より北で繁殖したものが南下の途中で立ち寄ったということはないだろうか?しかし、ニュウナイスズメの分布は意外と狭く、北海道より北ではサハリン南部や千島列島南部などで、それも少数が繁殖する程度のようである。また、サハリンでは8月初めには越冬地への渡去が始まることが知られており、この辺の事情は北海道と同様と思われる。
 ただ、サハリンでも11月という遅い記録があり、一概に早い時期に渡るだけではなさそうな感もある。本州でも早くから渡りが始まるものの、渡来の最盛期は11~12月との記述があり、個体(群?)によってはゆっくりと餌を食べて栄養をつけながら南下するのかもしれない。特に、網走地方の私が訪れた一帯は稲作が盛んで、本種の好物となる稲籾が大量に存在するために一部の個体は遅くまで滞在するが、稲田のほとんど存在しない十勝地方からは早く渡去するということはありうるのではないだろうか、と想像している。
 
ニュウナイスズメ(雌)
2005年6月 北海道中川郡豊頃町
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Photo by Chishima,J. 

その想像の可否を検討するには、今回網走地方で観察した事例が一般的なのかそうでないのかを、まず明らかにする必要があるだろう。ニュウナイスズメといえば、北海道の多くの地方ではありふれた夏鳥の一つだが、その身近な鳥一つとっても分からないことだらけであり、それがまた鳥への興味の尽きない原動力でもある。
(2005年11月7日     千嶋 淳)
 


謹賀新年

2006-01-06 11:16:10 | インポート
2006年、このブログももう少しで1年。早い・・・
今年の年賀状は3種類

愛犬ラブ
2006web
Photo by Natsuko.
 
オオジシギのアップ
Web
Photo by Chishima,J. 

ゼニガタアザラシ
2006web_1
Photo by Chishima,J. 

では本年もどうぞよろしくお願いします。


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Analyzed by 侍</noscript>