鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

ジャパン・バード・フェステイバル(JBF)に出展します

2012-10-23 16:08:03 | お知らせ
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Photo by Chishima,J.
ウミネコからカタクチイワシを奪うトウゾクカモメ   2010年10月 北海道十勝沖)



 11月3,4日に千葉県我孫子市で開催されるジャパン・バード・フェステイバル(通称JBF)に、漂着アザラシの会、NPO法人日本野鳥の会十勝支部、浦幌野鳥倶楽部の連名で参加します。

 JBFは10年ほど前から行われているバードウオッチャーのお祭り的イベントで市民団体やNPO法人等による活動報告のほか、光学機器メーカーのブースや有名人のトークライブなんかもある、割と大きなイベントです。


イベントHP http://www.birdfesta.net/

 当日は「地域の団体が連携して取り組む海鳥・海獣調査」ということで、2010年より十勝沖で取り組んでいる海上調査について写真やポスターを用いた展示を行う予定です。

 鳥が好きな人でしたら初心者からベテランまで楽しめるイベントだと思いますので、興味のある方はこの機会に是非お越し下さい。冊子「十勝の海の動物たち」や十勝沖の海鳥のポストカードも販売予定です。
 また、JBF期間中は、会場の一角にある「鳥の博物館」が無料開放されるそうです。


(2012年10月23日   千嶋 淳)



「青春と読書」連載、今号はお休みします

2012-10-23 14:36:47 | お知らせ
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Photo by Chishima,J.
漁船を背に帆翔するクロアシアホウドリ(右)とコアホウドリ 2012年10月 北海道十勝沖)


 集英社の本のPR誌「青春と読書」にて連載させていただいている「北海道の野生動物」ですが、10月20日発売の11月号では紙面の都合により1回お休みさせていただきます。「著者病気」とか「書けなくなって穴を開けた」とかではございませんので、ご安心ください。11月20日発売の12月号からはまた掲載させていただきますので、変わらぬご愛読をいただければ幸いに存じます。

(2012年10月23日   千嶋 淳)



121009 十勝沖海鳥・海獣調査

2012-10-10 16:27:00 | ゼニガタアザラシ・海獣
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All Photos by Chishima,J.
ミナミオナガミズナギドリ 以下すべて 2012年10月 北海道十勝沖)


 10月9日、今月2回目となる十勝沖調査を行いました。
 前回から1週間も経っていないものの、9月2回目が時化でできなかったこと、間もなくシシャモ漁が始まり船頭さんが忙しくなることから、時期を詰めての実施となりました。
 高気圧の勢力が強すぎて日中は風が吹くことが予想されたため、午前5時半、日の出とほぼ同時の出航となりました。薄暗い海を渡る風は冷たく、既に秋も後半の雰囲気です。
 航行中は鳥がやや少なかったものの、水深210m付近でコアホウドリの小群を見つけ、接近・停船したところ、操業中の漁船と勘違いしたのか鳥が集まり始め、気が付けば50羽以上のコアホウドリをはじめ多くの海鳥に取り囲まれていました。そしてその中にはオオトウゾクカモメ、アカアシミズナギドリ、ミナミオナガミズナギドリ等の姿も。アカアシミズナギドリが頻繁に潜水採餌を行い、またアホウドリ類とともに海上の漂流物をつつく姿が新鮮でした。台風の時化で水塊が変化したのか、オオミズナギドリは激減していました。
 帰りの沿岸部では、シロエリオオハムが数~数十羽の群れで続々渡っており、その多くがまだ夏羽でした。この頃には冷たい北風がいくぶん強まり、それを見越して早い時間に出航してくれた船頭さんに感謝しながら番屋で鮭やイクラをたらふく頂いて解散しました。

確認種:アビ シロエリオオハム コアホウドリ クロアシアホウドリ フルマカモメ オオミズナギドリ ミナミオナガミズナギドリ アカアシミズナギドリ ハイイロミズナギドリ ハシボソミズナギドリ カワウ ウミウ ヒメウ マガモ ヒドリガモ クロガモ シノリガモ ウミアイサ トビ オオバン オオトウゾクカモメ トウゾクカモメ クロトウゾクカモメ セグロカモメ オオセグロカモメ ワシカモメ カモメ ウミネコ ミツユビカモメ ウトウ キセキレイ ハクセキレイ タヒバリ ハシボソガラス ハシブトガラス(以上 鳥類) イシイルカ ネズミイルカ キタオットセイ(以上 海獣類)


アカアシミズナギドリ
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*十勝沖調査は、漂着アザラシの会が日本財団、NPO法人日本野鳥の会十勝支部がセブンイレブン記念財団より助成を受けて、上記2団体と浦幌野鳥倶楽部の連携のもと行われているものです。


(2012年10月10日   千嶋 淳)


121003 十勝沖海鳥・海獣調査

2012-10-03 16:20:00 | ゼニガタアザラシ・海獣
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All Photos by Chishima,J.
ハイイロミズナギドリ 以下すべて 2012年10月 北海道十勝沖)


 10月3日、十勝沖調査を行いました。
 青空の広がった時間も多く、天気は申し分なかったのですが、台風の影響なのか、はたまた季節の変わり目なのか思いのほか波・風があり、水深100m地点で引き返しとなってしまいました。調査員もバタバタ倒れてゆきました(苦笑)。
 水深50m付近にオオミズナギドリやハイイロミズナギドリの群れがいましたが、全体的に海鳥は少なめでした。特にウミスズメ類が1羽も出現しませんでした。小型種は今日の波なら見落としている可能性もありますが、ウトウも含めて1羽も出なかったのはこの調査始まって以来初めてかと思います。また、例年この時期はイワシの巻き網船団が操業しており、それにカモメ類やトウゾクカモメ類が付いているのが楽しみの一つですが、今年はイワシがいないため当海域で操業していないとのことで残念でした。代わりに多いのがサバという言葉通り、竿を入れると瞬く間に数匹のサバが甲板を跳ねていました。例年と異なるといえば、この時期港でも沖合でも多く見かけるミツユビカモメに1羽も出会いませんでした。それでもクロガモやアビ類の少しだけ増えてきた海上に、季節の移ろいを感じられた航海でもありました。

確認種:アビ シロエリオオハム クロアシアホウドリ オオミズナギドリ アカアシミズナギドリ ハイイロミズナギドリ カワウ ウミウ ヒメウ コガモ ハシビロガモ スズガモ クロガモ ビロードキンクロ シノリガモ トビ オジロワシ ハイイロヒレアシシギ アカエリヒレアシシギ トウゾクカモメ セグロカモメ オオセグロカモメ ワシカモメ カモメ ウミネコ ヒバリ ハクセキレイ タヒバリ ハシボソガラス ハシブトガラス(海獣類は出現なし)


沿岸を飛ぶトウゾクカモメ
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*十勝沖調査は、漂着アザラシの会が日本財団、NPO法人日本野鳥の会十勝支部がセブンイレブン記念財団より助成を受けて、上記2団体と浦幌野鳥倶楽部の連携のもと行われているものです。


(2012年10月3日   千嶋 淳)


マダラウミスズメ(その1) <em>Brachyramphus perdix </em>1

2012-10-02 21:34:00 | 海鳥写真・チドリ目
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All Photos by Chishima,J.
(以下すべて マダラウミスズメ 2012年7月下旬 北海道十勝沖)


 一連の写真はすべて同一個体。属名は「短い嘴の」、種小名は「ヤマウズラ」をそれぞれ意味する。以前は北太平洋に分布するものを1種として、アジア側をB.m.perdix、アメリカ側をB.m.marmoratusとして別亜種扱いすることが多かったが、1990年代中期以降は各々を別種として扱うのが一般的となっている。その場合の英名は、marmoratusがMarbled Murrelet(大理石模様のウミスズメ類)、perdixがLong-billed Murrelet(嘴の長いウミスズメ類)となる。perdixmarmoratusに比べて翼長、嘴峰長、体重が明らかに大型である。カムチャツカから千島列島、サハリン、日本海北部、オホーツク海周辺に分布し、日本へは主に冬鳥として北日本の海上に渡来する。太平洋側では東北南部~関東地方、日本海側では能登半島沖くらいまでが主な分布域だが、博多湾や奄美大島、久米島からも記録がある。

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 本種の北海道における繁殖記録としては、1961年6月の小清水町藻琴山におけるものが有名だ。繁殖羽の成鳥が採集されているのは確かだが、巣卵に関しては巣の位置や卵の数等疑問の残る記録である。とはいえ、少なくとも1980年代までのオホーツク海沿岸では夏期の観察や採集の記録もあり、少数が繁殖していたのは確かだろう。知床半島では1990年代に幼鳥も観察されているが、2000年代以降記録は激減する。道東太平洋でも、1970年代頃までは厚岸や釧路の沿岸で夏期の記録が散見された。人知れず北海道から繁殖個体群が消失してしまったか、その手前である可能性が高い。「日本鳥類目録」では第6版(2000年)、第7版(2012年)とも北海道での扱いを、Former Breeder(過去に繁殖)としている。



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 海鳥としては非常に変わった繁殖習性を持ち、沿岸から主に20km、時に55~70km離れた針葉樹林や混交林の枝上に巣をかけて繁殖する。北米のmarmoratusは樹齢200年を超えるシトカトウヒ、ベイツガ、セコイアなどの老齢林で繁殖し、伐採による環境変化には敏感で、老齢林の伐採されたオレゴン州やカリフォルニア州からは姿を消してしまった。伐採による影響は、営巣木の喪失という直接的な影響にとどまらず、林縁が増えることによって捕食者からの襲撃の機会を増大させている。生態的にはほとんど同じという本種において、北海道で同様の圧に晒されたことは想像に難くない。
 繁殖個体群だけでなく、越冬鳥もおそらく減っている。1990年代には冬の十勝海岸から海上を眺め、1~数羽の本種を探すのは難しくなかったが、近年ではなかなか出会えない。更に遡ると、1920~30年代の東京湾では、採集記録から、比較的普通の海鳥だったようである。極東の個体群は恐ろしい勢いで衰退しているかもしれない。北米のmarmoratusでは、10~20年で40~50%もの減少が知られている。
 24~26cmという全長はウミスズメにほぼ等しいが、横長な体型と細長い嘴のためか、より大きく見える。上面は褐色で、夏羽ではこのように胸から腹、下尾筒にかけて鱗模様で覆われ、全体的に茶色っぽく見える。本個体の喉は冬羽同様白っぽい。個体や齢による差を把握し切れていないのだが、これまで夏の北海道で出会った個体は、喉の白い個体が多い。翼下面は暗色で、ウミスズメやカンムリウミスズメとは異なる。また、エトロフウミスズメやその近縁種に比べると、翼は細長く、先端の丸みを欠く。遠くで大きさが判定しづらい状況では、細長い嘴がケイマフリのように見えることがある。


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 翼上面は暗褐色で目立つ白斑等はない。肩羽は夏羽、冬羽とも白色のラインを形成する場合が多いが、本個体ではほとんど認められない。腰のあたりに虫食い状に白い部分が見えるが、これが羽色そのものなのか、風等でめくれ上がってそう見えているのかは不明。


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 後下方から見ると、側面から見た時より一層黒っぽく見える。翼はウミスズメ類の中では細長く、ケイマフリやウミガラス類に近いプロポーション。一連の写真を見ると嘴を開いて鳴いているようにも見えるが、残念ながら声は聞こえなかった。


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 真後ろからのカット。喉の白色部は隠れ、全身黒褐色の鳥に見える。このアングルからだけでは、識別は難しいかもしれない。
 本種を日本から最初に記載したのは、函館近郊での記録に基づくブラキストンである。


(2012年10月2日   千嶋 淳)