鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

2014年4月12日(土)十勝沖海鳥・海獣類観察会のお知らせ

2014-03-25 10:51:40 | お知らせ
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Photo by Chishima, J.
ハシブトウミガラス 2014年3月 北海道十勝沖)


 来たる4月12日(土)、船を出してもらって海鳥や海獣類の調査・観察を行う予定です。基本的にはいつもの海上調査と一緒ですが、次年度は現時点で十分な予算を確保できていないため、参加費をやや高くする一方、調査と並行して解説を行うよう努めます。そのため、「観察会」としました。資料も配布予定ですので、これまで参加を躊躇われていた方もお気軽に参加下さい。以下の要領で実施します。参加を希望される方は要領を一読の上、メール、電話等にて連絡をお願いいたします。


日時:2014年4月12日(土) 時間未定(たぶん午前6時前後)
集合場所:浦幌町厚内漁港(詳細な場所は申し込み後にお知らせします)
参加費:一般5000円 学生2000円
注意事項
・集合場所までの移動は各自でお願いいたします(相談いただければ帯広、池田から 乗り合わせられる場合もあります)。
・近くに現れた鳥や群れにはできるだけ接近・観察を試みますが、安全上や船の都合でそれができない場合もありますので、ご容赦下さい。
・早春とはいえ海上は日によって真冬並みの寒さにくわえ、潮や波を被る場合もあります。
 体調や物品の管理は自己責任でお願いいたします。
・保険は各自でお願いいたします。
・スペースや事故防止の関係で、三脚・一脚は持ち込めません。
・定員13人の船ですので、先着順とさせていただきます。
・波や風の影響により欠航になる場合があります。最終的な出航の可否は、前日の午後に決定の上、申込みいただいた方に連絡します。また、出航しても海況によってはごく沿岸域のみの運航となったり、霧で見通しが効かない場合もありますが、出航した場合は参加費はお返しできませんのでご了承下さい。

 厳冬期に姿を消していたウトウやコアホウドリが徐々に戻りつつある海上では、運が良ければ北上中のウミガラス類やアビ類も観察できるかもしれません。過去の調査でマダラウミスズメやハシジロアビの記録があるのも4月です。

出会いの期待できる種類:スズガモ クロガモ ビロードキンクロ シロエリオオハム コアホウドリ ヒメウ ハシブトウミガラス ウミスズメ ウトウ ネズミイルカなど

申し込み先:メール pvstejnegeri_yoidore@dance.ocn.ne.jp
電話 090-4871-9480(千嶋)


(2014年3月25日 千嶋 淳)


140322 天然記念物野鳥観察ツアー

2014-03-25 10:22:51 | 水鳥(カモ・海鳥以外)
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All Photos by Chishima, J.
ハクガンシジュウカラガンなどの群れ 以下すべて 2014年3月 北海道十勝川下流域)

 NPO法人日本野鳥の会十勝支部東十勝ロングトレイル協議会の共催による「川のルート 天然記念物野鳥観察ツアー2014」のガイドを務めさせていただきました。

 午前9時、前日の雪とは打って変わって快晴の帯広を出発したバスは、道中にタンチョウを見ながら豊頃町茂岩に到着。ここで地元の野鳥倶楽部のKさんとMさんの更に2名のガイドが乗車。現地を知り尽くしたお二人の参加はたいへん心強いものです。その後は日高山脈を背に牧草地に群がるマガンの大群を皮切りに、お目当ての鳥が次々に現れ、昼前にはハクガンとシジュウカラガンの群れもじっくり観察でき、早くも天然記念物5種(オオワシ、オジロワシ、タンチョウ、マガン、ヒシクイ)+ハクガン、シジュウカラガンを制覇しました。世界広しといえど半日でこの7種と出会えるのは、おそらく十勝川下流域だけでしょう。昼食後は漁港でいつもの海ガモ類やカモメ類にくわえてハマシギやアビを観察し、茂岩でスイーツめぐりの後に16時前、帯広に戻りました。
 何人かの方に「解説にストーリーがあって面白い」と言っていただけたのは嬉しかったです。鳥を見付け、識別することももちろん、ガイドの大事な仕事ですが、目の前で起きていることの面白さを、フィクションや誇張ではなく、自身の経験や知識を紡ぎながらお伝えし、生態系や生物多様性に興味を持っていただけるようなガイドができたらこれに勝る喜びはありません。開水面の増えて来た旧河川の氷上に佇んで陽光を享受するアオサギの群れが春を感じさせてくれた一日でした。

観察種:ヒシクイ マガン ハクガン シジュウカラガン オオハクチョウ ヒドリガモ マガモ ホシハジロ スズガモ クロガモ ホオジロガモ アビ アオサギ タンチョウ ハマシギ カモメ オオセグロカモメ トビ オジロワシ オオワシ ハシボソガラス ハシブトガラス ハシブトガラ ヒバリ ツグミ スズメ ハクセキレイ アトリ ベニヒワ(29種)参加者20名+スタッフ・ガイド7名

牧草地に群れるマガン

背後には白い日高山脈
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オオワシに見入る一行
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(2014年3月24日   千嶋 淳)


140317 十勝沖海鳥・海獣調査

2014-03-18 22:47:40 | 海鳥
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エトロフウミスズメの群れ 以下すべて 2014年3月 北海道十勝沖)


 十勝川沿いに霧が出ており、海も同様かと心配しましたが、川から離れるにつれ青空が広がりました。どうやら川霧だったようです。午前6時半、すっかり明るくなった港から沖を目指します。多少風浪があったものの、この時期としては穏やかでツブやタコなどの漁船が所々で操業しており、それらにはたいてい数~数十羽のオオセグロカモメが群がっていました。しかし、それ以外の鳥はサッパリです。否、完全にいないわけではなく、エトロフウミスズメやコウミスズメの群れがぱらぱら飛び、ウミオウムやハシジロアビも観察できたのですがいずれも距離が遠く、「見た」という満足感とは程遠いものでした。例年、流氷が最南下するこの時期はエトロフウミスズメ属やウミガラス類が多数、時に船のすぐ近くでも見られるため、それを期待していただけに残念でした。間近に見られた外洋性の海鳥はハシブトウミガラスくらいで、この時期数~数十羽が毎回観察されるウミガラスやケイマフリの姿もありませんでした。先月までいなかった夏鳥のウトウが1羽だけ出現したのは、春の兆しといえるでしょう。
 そして戻って来た沿岸。秋~春には沖で鳥が少ない時もクロガモをはじめとした海ガモ類やアビ、カイツブリ類などで賑わうのですが、こちらも海鳥が非常に少なく、半信半疑のまま帰り着いた港周辺も特に海ガモ類の少ない状態でした。沖のウミスズメ類が海流や水温、湧昇などといった複雑な海洋構造と関連して当たり外れが大きいのはわかりますが、沿岸で主に貝類や無脊椎動物を食べている海ガモ類がこうも少ないのは一体どうしたことでしょう。広い海のどこかにいると信じたいものです。海ガモ類は狩猟や海洋汚染、混獲、繁殖地の環境改変などにより激減しているようで、コオリガモやクロガモは国際自然保護連合の鳥類レッドリストに近年入りました。これまでの経験からは信じられないくらいの沿岸の海鳥の少なさが、海洋版「沈黙の春」でないことを切に願っています。
 下船後はいつものように番屋でカニやタコなど、海の幸をたらふくいただきながら歓談し、適宜解散しました。帰りに十勝川下流域に立ち寄ってみたところ、数百羽のマガンやヒシクイ、オオハクチョウなどが雪の融け始めた畑に群れており、春の到来を告げていました。今回は釧路や静内からも遠路参加いただきました。参加・協力いただいた皆様、どうもお疲れ様でした。冒頭の写真はエトロフウミスズメの群れ。個体同士が非常に密接して飛ぶのが本種の特徴で、この中にも約30羽が写っています。数百~数千の大群になると、まるで黒い雲の塊のようで非常に見応えがあります。もっとも、最近ではそんな大群もなかなか見られなくなりました。全身黒いのも特徴ですが、写真からもわかるように晴天・順光下では個体によって下腹~下尾筒が淡色に見えます。

確認種:マガモ コガモ スズガモ シノリガモ ビロードキンクロ クロガモ カワアイサ ウミアイサ アカエリカイツブリ ミミカイツブリ アビ ハシジロアビ ヒメウ カモメ ワシカモメ シロカモメ セグロカモメ オオセグロカモメ ハシブトウミガラス ウミオウム コウミスズメ エトロフウミスズメ ウトウ トビ ハシボソガラス


ハシブトウミガラス
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早春の十勝沿岸
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*十勝沖調査は、NPO法人日本野鳥の会十勝支部が日本財団より助成を受けて、漂着アザラシの会、浦幌野鳥倶楽部との連携のもと行われているものです。


(2014年3月17日   千嶋 淳)


コオリガモ(その2) <em>Clangula hyemalis </em>2

2014-03-10 22:25:24 | 海鳥写真・アビ目、カイツブリ目、カモ目
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Photo by Chishima, J.
雌雄のコオリガモ 2011年3月 北海道厚岸郡厚岸町)


 少し前に調べ物をしていて気付いたのだが、2012年にコオリガモがIUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでVU(絶滅危惧Ⅱ類)にリストアップされている。バルト海の個体群が1990年代以降に激減し、分布域の多くで湿地環境の悪化や油汚染、混獲、ハンティング等の脅威に曝され続けていることによるもののようだ。同じランクの日本産鳥類がアホウドリ、カラシラサギ、ズグロカモメ、カンムリウミスズメ、ルリカケス等であることを考えると驚きを禁じ得ない。同リストではクロガモもNT(準絶滅危惧)に指定されている。30年くらい前の道東の海では、海ガモ類の群れが帯になって切れ間なく見えたと言う人もいる。そこまでではないが、自分が北海道に来た20年前にも今よりは余程いた。現状が殆ど調べられないまま、消えようとしているのかもしれない。広域的な海ガモ類のモニタリング体制の確立と関係者間の情報共有が必要だ。画像のコオリガモのペアを撮影したのは3年前の今日、午後の陽射しが柔らかな厚岸港だった。日本が平和で安全な国と思えた最後の日だったかもしれない。


(2014年3月10日   千嶋 淳)



140225 十勝沖海鳥・海獣調査

2014-03-10 15:04:27 | 海鳥
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All Photos by Chishima, J.
ハシブトウミガラス 以下すべて 2014年2月 北海道十勝沖)


 今年初となる調査を実施しました。午前6時半、水平線よりやや高くを上る太陽を眺めながらの出航です。寒くはあるものの、厳寒期特有の肌を刺すような痛みを伴うほどではありません。港ではなぜか、カモメ類が1羽も見られませんでした。その後、沖合で操業中の漁船に群がったり、操業後の海上で休息するカモメ類が多く見られたことから、早朝から漁船周辺で餌を探しているか、海上で塒を取って港にはまだ飛来していなかったのかもしれません。帰港時(午前10時半)には港でも少数が見られました。

 港を出て20分ほど、穏やかな快晴の中、水深50m付近まで来るとコウミスズメやケイマフリが現れ始め、一同の期待も高まりましたが、水深100m前後から沖では鳥が著しく少なくなったことに加え、真冬には珍しい霧も出て来て視界不良に陥り、あまり成果は上がりませんでした。水深300mで引き返し、やや沿岸域に戻って来てミガラス類やケイマフリ、コウミスズメといったウミスズメ類が現れ始め、更に沿岸ではビロードキンクロ等の海ガモ類やヒメウ、カイツブリ類も観察できました。ただ、あまりにベタ凪のせいか、コウミスズメをはじめ多くの海鳥が、かなりの距離から船の接近を感知して飛び去ってしまい、やや消化不良感の残るクルーズでした。昨年の2月末から3月はじめにはエトロフウミスズメやコウミスズメ、ウミガラス類等がかなりの数見られ、今年も2月に入って流氷が良い感じに南下して来たので過度の期待をし過ぎてしまったかもしれません。こういう年のデータを蓄積してゆくことも、海鳥の分布や保護を考える上では大切と思うこととしましょう。ちなみに今冬は海鳥が少ないと、1、2月に何度か乗船した根室の「歯舞パノラマクルーズ」の船員の方々も話しておりました。北方系の海鳥が少ないということは海水温が高いのかなとも思いましたが、2月中旬の十勝沖における海面水温の平年差は0~‐1℃ということで、特に高いわけでもなさそうです。そんな単純なものではなく、また他の海域との複合的な要因もあるのかもしれません。
 霧に包まれた春のような岸壁から下船後は、番屋でカニやタコ、飯寿司、鮭のアラ汁等海の幸を心行くまで味わいながら歓談し、昼前に解散しました。参加・協力いただいた皆様、どうもお疲れ様でした。


確認種:コガモ スズガモ シノリガモ ビロードキンクロ クロガモ ホオジロガモ カワアイサ アカエリカイツブリ ミミカイツブリ ヒメウ カモメ シロカモメ オオセグロカモメ ハシブトウミガラス ウミガラス ケイマフリ ウミスズメ コウミスズメ エトロフウミスズメ 海獣類:ネズミイルカ


ケイマフリ
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ウミガラス
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*十勝沖調査は、NPO法人日本野鳥の会十勝支部が日本財団より助成を受けて、漂着アザラシの会、浦幌野鳥倶楽部との連携のもと行われているものです。


(2014年2月25日   千嶋 淳)