鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

130420 十勝沖海鳥・海獣調査

2013-04-30 22:49:38 | ゼニガタアザラシ・海獣
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All Photos by Chishima,J.
クロガモ 以下すべて 2013年4月 北海道十勝沖)


 今年度初の調査を20日に実施しました。港への道中、十勝川沿いは深い霧に覆われ、海も同じかもしれないとの不安を抱えつつ着いてみると海は快晴で、空と海の青さが目に眩しいほどでした。久しぶりの休日実施で11人と普段より多めの参加者を乗せ、意気揚々と沖を目指します。
 カモ類の群れがいくつも海上高くを飛び、渡り時期の只中にあることを実感させてくれます。先月まで多かったコウミスズメやエトロフウミスズメはすっかり見当たらず、代わりに南の海域から戻って来たウトウの姿が散見されました。南半球から赤道を越えて飛来したハシボソミズナギドリは、冬のウミスズメ類から夏のミズナギドリ類への、海上の主役の交代が迫っていることを確かに伝えています。と、こう書くといかにも多種多数の海鳥との出会いに胸ときめかせたかのようですが、この日は調査始まって以来と思われる海鳥の少なさでした。せめてもの救いは、種類だけはそれなりに出たこと、寒さも和らいで舳先で海を眺めていることが苦にならなかったことでしょうか。また、3月の2回に引き続きハシジロアビが観察され、少数が定期的に越冬しているらしいことが分かって来たのも収穫です。当日の海鳥の特徴の一つに、沿岸部のクロガモやカモメ類を除くと大部分が移動中で、普段は船に関心を示して接近して来るコアホウドリやフルマカモメも脇目も振らず飛んでいる感じでした。いつになく潮目が多く、海上にまるで何本もの川が流れているかのようだったので、海の構造がいつもより複雑で、そのため特定の海域でプランクトンが大発生して海鳥はそこに集中していたのかもしれません。
 そんな想像をめぐらすのも悪くありませんが、やはり実物を見ながら楽しみたいものです。次回以降に期待です。下船後は番屋でホッキカレーや飯寿司を頂きながら歓談し、適宜解散しました。帰路に見た海上は所々白波が立つ時化模様となっていました。春の海は不安定です。

確認種:コクガン ヒドリガモ オナガガモ コガモ スズガモ シノリガモ ビロードキンクロ クロガモ ウミアイサ アカエリカイツブリ アビ シロエリオオハム ハシジロアビ コアホウドリ フルマカモメ ハシボソミズナギドリ ヒメウ ウミウ ユリカモメ ウミネコ カモメ シロカモメ オオセグロカモメ ハシブトウミガラス ウミガラス ウミスズメ ウトウ トビ オジロワシ ハシボソガラス ハクセキレイ


シロエリオオハム(夏羽)
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海岸線を走る特急スーパーおおぞら
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(2013年4月22日   千嶋 淳)


*十勝沖調査は、NPO法人日本野鳥の会十勝支部が日本財団より助成を受けて、漂着アザラシの会、浦幌野鳥倶楽部との連携のもと行われているものです。


霧多布沖の海鳥・海獣⑭ シャチ(8月3日)

2013-04-30 22:14:02 | ゼニガタアザラシ・海獣
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All Photos by Chishima,J.
シャチ 以下すべて 2012年8月 北海道厚岸郡浜中町)


NPO法人エトピリカ基金会報「うみどり通信」第5号(2012年10月発行)掲載の「2012年度霧多布沖合調査(その1)」を分割して掲載、写真を追加 一部を加筆・訂正)

 前回調査から5日しか経っていないにも関わらず、海鳥の様子は激変していました。フルマカモメやハシボソミズナギドリ、ヒレアシシギ類等が万単位の群れで出現し、甲板は「一体どうやって数えるの~!?」という嬉しい悲鳴に度々包まれました。実は道東沖が夏期の重要生息域なのではと注目しているカンムリウミスズメも、この日は40羽以上が記録されました。

フルマカモメの大群
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 そして満を持したかのごとく現れたシャチ。ヨットのように大きな背びれを持つオス成獣や、親子を含む8頭前後の群れでした。発見時にはやや遠かったものの、まるで船を偵察するように接近し、潜水・浮上を繰り返して去って行きました。アイヌが「レプンカムイ(沖にいる神)」と呼んで大事にしたこの鯨類に、畏敬の念を感じずにはいられない瞬間でした。近年、知床や釧路沖で頻繁に観察されているシャチは、去年9月に続いて2度目の確認となり、霧多布沖にも定常的に来遊している可能性が出て来ました。群れの周囲にはクロアシアホウドリやミズナギドリ類も多く飛んでいました。南極海ではアホウドリ類がシャチに付き従い、その食べ残しにありついていることが知られています。霧多布でも、もしかしたらそんな光景が繰り広げられているのでしょうか。このように海鳥と海獣は同じ海に生きる高次捕食者であり、切っても切れない関係にあります。それは、調査や保全においても同じことだと思います。本調査では今後とも海鳥と海獣の結び付きを視野に入れながら情報を集積し、将来的な保全に活用してゆきたいと考えています。

親子と思われるシャチ
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(2012年8月30日   千嶋 淳)


*本調査は地球環境基金の助成を得て、NPO法人エトピリカ基金が実施しているもの


霧多布沖の海鳥・海獣⑬フルマカモメ白色型(7月29日)

2013-04-08 17:03:25 | ゼニガタアザラシ・海獣
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All Photos by Chishima,J.
フルマカモメ白色型 以下すべて 2012年7月 北海道厚岸郡浜中町)

NPO法人エトピリカ基金会報「うみどり通信」第5号(2012年10月発行)掲載の「2012年度霧多布沖合調査(その1)」を分割して掲載、写真を追加 一部を加筆・訂正)

 一部区間で曇っていたものの、大部分で晴れて視界も良好、波も穏やかでした。潮目に沿って多数のヒレアシシギ類が採餌しており、見応えがありました。また、海水温の高い時期に現れるマンボウやカンムリウミスズメの姿も確認され、盛夏の様相を呈してきた霧多布沖でした。
 この日も多数観察されたフルマカモメ(カモメの名が付いていますがミズナギドリの仲間です)には、全身灰褐色の暗色型と白っぽい白色型の2つの型があり、北太平洋では南に行くほど暗色型の占める割合が高くなります。分布域の南側にあたる北海道近海では大部分が暗色型で、昨年の調査でも白色型は日によって1~数羽が見られる程度でした。それが今年は、暗色型の割合が高いものの、白色型も6月以降毎回出現し、その数も10~数十羽に上っています。これもツノメドリ同様、今年特有の現象といえそうです。その時々の海の環境に対応じて、ダイナミックに分布を変化させるのが海鳥のようです。ちなみに、暗色型と白色型の分布の傾向は北大西洋では逆転し、英国で撮影された本種に白色型が多いのはそのためです。


フルマカモメ暗色型と白色型(中央)、ハイイロミズナギドリ(最後尾)
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ハイイロヒレアシシギアカエリヒレアシシギ(手前右側)
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(2012年8月30日   千嶋 淳)

*本調査は地球環境基金の助成を得て、NPO法人エトピリカ基金が実施しているもの


霧多布沖の海鳥・海獣⑫ ツノメドリ(7月8日)

2013-04-07 23:26:40 | ゼニガタアザラシ・海獣
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All Photos by Chishima,J.
ツノメドリ若鳥 以下すべて 2012年7月 北海道厚岸郡浜中町)


NPO法人エトピリカ基金会報「うみどり通信」第5号(2012年10月発行)掲載の「2012年度霧多布沖合調査(その1)」を分割して掲載、写真を追加 一部を加筆・訂正)


 曇りながら霧や波は無く、快適な航海でした。沖合では普段手足を出して休んでいるだけのキタオットセイが小群で、イルカのように豪快なジャンプを繰り返していたのが印象的でした。
 この日最大のトピックは、やはりツノメドリでしょう。オホーツク海北部やベーリング海等、ずっと北の海で繁殖する本種は、北海道に住んでいても滅多に会うことができません。そんな鳥が次から次に、全部で9羽現れました。一日の確認数としては、国内最高ではないでしょうか。嘴の地味な若鳥ばかりでしたが、見慣れてくると体下面の純白さで、ウトウやエトピリカとは容易に区別できました。同時期に十勝や根室の海上でも確認され、本州でも観察情報がある(未確認)ことから、この7月の北日本海上には相当数の本種が来ていたと考えられます。何故かはわかりません。7月初めまで例年より低めだった海水温の影響でしょうか?海鳥をやっていると、わからないことのあまりの多さに驚くと同時に、それらに切り込んでゆく興奮を覚えることがありますが、まさにそんな日でした。ツノメドリは6月と7月2回目の調査でも各1羽が確認されています。また、エトピリカは若鳥が7羽観察され、昨年ほどの数ではないにしろ、沖合に若鳥が飛来している状況が明らかになって来ました。


キタオットセイ
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エトピリカ若鳥
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(2012年8月30日   千嶋 淳)

*本調査は地球環境基金の助成を得て、NPO法人エトピリカ基金が実施しているもの


130325 十勝沖海鳥・海獣調査

2013-04-02 22:53:45 | 海鳥
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All Photos by Chishima,J.
アビ冬羽の飛翔 以下すべて 2013年3月 北海道十勝沖)


 3月2回目の調査は20日の予定でしたが時化が続き、道東では魚価の高騰も報道される中、ようやく船を出していただけました。それでも沖へ出ると風浪が強まって波飛沫を被りながらの観察となり、水深130m前後で引き返しです。
 そのような状況でしたので、海況も良く、多くの冬のウミスズメ類と出会えた先の2回と比べると鳥も少なめでしたが、沿岸部で300羽以上のコウミスズメを見ることができたのは収穫で、中には胸の鱗模様や顔の飾り羽等夏羽の片鱗を見せる個体もいました。半月前の調査で多くが確認されたエトロフウミスズメやウミガラス類は1~数羽が観察されたのみで、短期間にも海鳥の分布が大きく変化していることを実感できた調査でもありました。
コウミスズメ
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 スズガモや淡水ガモ類、ガン類等、渡り途中の鳥が多く記録されたのも季節の移ろいを感じさせてくれました。海上を飛ぶハクセキレイも観察され、その時に調査員間で交わされた「なんかさぁ、ハクセキレイが飛んでない?」、「そうだよね、波打って(飛んで)るもんね。」なんて会話もこの時期ならではのものでしょうか。
 トップの写真はやや不鮮明ながらアビです。海岸からの観察では十勝のアビ類は本種ばかりだと思っていましたが、いるのは岸近くのみで、とても沿岸性の強いことが分かって来ました。


海上高くを飛ぶスズガモの小群
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確認種:ヒシクイ マガン ヒドリガモ オナガガモ スズガモ シノリガモ ビロードキンクロ クロガモ ホオジロガモ カワアイサ ウミアイサ ミミカイツブリ アビ ハシジロアビ ヒメウ カワウ ウミウ ウミネコ カモメ シロカモメ オオセグロカモメ ハシブトウミガラス ウミガラス ケイマフリ ウミスズメ ウミオウム コウミスズメ エトロフウミスズメ トビ オジロワシ ハシボソガラス ハシブトガラス ヒバリ ハクセキレイ

*十勝沖調査は、漂着アザラシの会が日本財団、NPO法人日本野鳥の会十勝支部がセブンイレブン記念財団より助成を受けて、上記2団体と浦幌野鳥倶楽部の連携のもと浦幌町厚内沖で行っているものです。


(2013年3月26日   千嶋 淳)