All Photos by Chishima,J.
(クサシギ 2009年1月 北海道十勝川中流域)
2009年1月12日、十勝川中流域においてクサシギ2羽を観察した。本種は北海道には旅鳥として春秋に渡来するがあまり多くなく、特に道東では少ないようである。私はこれまでに十勝川中・下流域の湿地や川原などで観察しているが、いずれも5月か8~9月の渡りの時期である。本州、少なくとも関東以南では少なからぬ数が越冬している本種も、厳冬期の北海道での記録はきわめて稀と思われるので、写真(粗いが)とともに紹介しておく。
当日の天気はうす曇り。午前10時38分の発見時、シギは雪に覆われた礫の川原の水際付近にいた。やや距離はあったが、長くてまっすぐな嘴から、周辺で少数が越冬しているイカルチドリではなく、シギ科であることは明白だった。撮影した画像を液晶で拡大し、クサシギと判定した。その後一度見失い、2分後に上流方面に飛び去る姿を再発見した。この際、腰の白や翼下面の黒など近縁種との識別ポイントや「チュイッ、チュイッ」の本種独特の声を確認した。観察者は、私のほかに日本野鳥の会十勝支部エコツアー部会のメンバー4人である。
クサシギの飛翔
2009年1月 北海道十勝川中流域
湿地や浅瀬で主に動物質の餌を捕るシギ・チドリ類は、真冬の北海道での生存は困難とみえて非常に少ない。道東では冬鳥として不凍河川に越冬にやって来るアオシギ(本種も数は少ない)や海岸の岩場に飛来するチシマシギ(こちらは迷鳥級)のほかは、河川中流域でイカルチドリ、海岸でハマシギがいずれも少数越冬する程度である。昨年は1月に十勝海岸で、数羽のミユビシギがハマシギの小群とともに見られたが、その後南下したのか死んだのか姿を消した。他にはエリマキシギ、コオバシギ、シロチドリ、オオハシシギなどは冬の道東で記録があるが、例外的なものである。
今回のクサシギは、定期的に越冬しているものなのか、偶々居残ってしまっていたものなのか不明だが、どちらにしろこれから一年で最も寒い季節を迎えるこの地で生きて行くのは大変なことだろう。
イカルチドリ
2009年1月 北海道十勝川中流域
ハマシギ(右)とミユビシギ(いずれも冬羽)
2008年1月 北海道中川郡豊頃町
(2009年1月14日 千嶋 淳)