tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

民主主義と日本社会の劣化を問う

2023年02月10日 12時03分45秒 | 文化社会
ガーシーという先の参院選で当選した議員が、全く出席しないという事で参議院の懲罰委員会にかかっているという事です。

ここでは本人や、所属の党についてとは全く別の話になりますが、こうした問題が発生したという事は政治と国民意識の総体的劣化の片隅の綻びが偶々顕在化したのでしょうから、矢張り考えてしまうのは、民主主義の本質的に持つ問題と、民主主義を善しとする国の国民の在り方という問題です。

このブログでは、さきに「民主主義のトリセツ」を書きました。
民主主義という制度の根幹である選挙を中心に、民主主義というシステムの中に生きるのであれば、民主主義というシステムの中での生き方を十分理解し、民主主義を誤りなく使いこなすように、具体的な思考や行動の在り方も弁えていなければなりません。

町内会や企業の職場訓練などで、消火器の取扱い方の講習などもやります。使えなければ火は消せません。家電製品や各種の工具などを買えば、事細かに安全な使い方の説明、こういう使い方は絶対にしないで下さいといった「危険」を避けるための『取扱説明書』(トリセツ)がついています。読まないと巧く使えません。

これはメーカーに義務付けられているもので、いかに良い「トリセツ」を用意するかを推進する団体もあって積極的な活動を展開しています。

政治も同じで、日本の政治の基本システムである民主主義についても日本政府は義務教育の中で、徹底して国民に民主主義のトリセツを教えているはずです。

それなら、民主主義国家日本では、選挙はその根幹をなす国民の権利であり義務でもあるので、政府は国民に十分に必要な知識を与え、間違っても誤った使い方をしないように心を配っているはずだと思うのですが。

国民もまた、民主主義の理念を十分に理解し、民主主義社会で生きるための生活の在り方、選挙についての考え方など教育の成果を誤りなく活用する事を身に着けて日常の行動をしているはずです。

しかしその割に、選挙の投票率は高くないし、当選した政治家の不適切な言動も頻発するといった現状があります。

という事は、民主主義国の政治家として、適切でない人が選挙の結果当選している可能性が高いという事で、これは選挙する人が適切な判断をしていないからに他なりません。

責任は何処にあるのかというと、明らかに選挙民にあるという事になります。選挙には誰も出られますが、選ばれる政治家の質は選挙民の質の反映です。

真面目で勤勉な日本人なのに、何故困った事が起きるのか、原因はいくつかあると思います。①義務教育で教わった事を結構忘れている。②テレビからツイッター、U-チューブまでメディアの進化が早すぎる。③政治への絶望感→無関心(これが最も恐ろしい)など。

そんなこともあるかと、義務教育で教えてくれない「民主主義のトリセツ」も、当ブログでは考えてみた次第ですが、益々難しくなる世の中で、少しは役立つと思っています。

本来日本人は真面目で勤勉、物事の理解力に優れているのですが、今日のような変化の大きい時代には、それに対応して本来の真面目さに立帰って、確り考えて行動することが必要になってきているのではないかと思っています。

2022年、盛り上がりを欠いた年末商戦

2023年02月09日 12時05分56秒 | 経済
一昨日、7日に、2022年12月分の家計調査が発表になりました。

1年前に比べ4%を超える消費者物価上昇という逆風の中で、GDPの個人消費を支える家計の消費支出の動きはどうかと案じていましたが、矢張り年末商戦は期待した盛り上がりとはいかなかったようです。

2人以上世帯の12月の消費支出は名目値では3.4%の伸びでしたが、対応する消費者物価の上昇が4.7%という事だったので、実質値では結局マイナス1.3%という事になりました。

毎月勤労統計では12月のボーナスが少し増えたと言っていましたが、それも活用して昨年より3.4%余計支出したのですが、物価の上昇に食われて、買えた「モノとサービス」は昨年より1.3%少なかったという事です。

この物価上昇は、長年に亘って値上を我慢してきた分が噴出したという面もあるので、許される範囲かとも思っていますが、今後の動きは電気料金などの国策次第でしょう。

話を戻して、家計の消費支出ですが、収入と支出両方が解る二人以上勤労者世帯の家計の消費意欲を示す「平均消費性向」のグラフも、昨年と一昨年の変化の比較が12月で完結しました。

     平均消費性向各月の対前年比較

                   資料:総務省「家計調査」

ご覧のように、2022年で前年より平均消費性向が下がったのは 3月と年末の11、12月だけで、その他の月は皆前年より高まっています。
そんなわけで昨年をきっかけに長年低下傾向にあった平均消費性向が下げ止まるのではないかと見て来ていまました。

そんな所へ11月、12月の小幅とは言え連続低下です。
勿論今後の数字の推移を見なければわからないところですが、昨年の11月、12月は消費者物価の上昇が3%台から4%台へと50年ぶり大幅上昇という異常事態の影響で、特に食料品では「あまり高いから買わない」気配もあったのかと読んでいるところです。

全体的には12月名目値消費支出(3.4%増)の中で、減っているのは住宅関連(マイナス9.9%、前年の大幅支出の反動)だけ、最も増えているのは値上がりした光熱・水道(15.9%)で、食料費の伸びが3.2%と低めですが他の費目は皆結構伸びています(2人以上世帯中分類)。

マスコミによれば、春闘を前に、大幅賃上げを実施したり表明したりという企業も多く、3月には政労使会議も開かれるようで、今年は何か雰囲気が変わる兆候もあり、これにコロナの鎮静化が並行すれば、それが現実になる可能性もありそうな気もします。

消費者物価の上昇もそろそろピークでしょう。国際情勢は険悪なようですが、日本経済に関する限り何か期待出来る年になるのではないでしょうか。

残念至極!三菱スペースジェットの撤退

2023年02月07日 13時24分32秒 | 国際関係
2015年の11月12日、「MRJ離陸」を書きました、その前の日に、アメリカでの「三菱リジョナル・ジェット」の初飛行が報道されたからです。

2017年9月には、「経産省、航空機事業に注力」を書いて、経産省が「我が国の航空機産業の本格的発展を目指して、纏まった政策を打ち出そうという事になった」と記しています。

初飛行から7年、経産省の政策表明から5年がたって、今日のタイトルは標記の通りです。本当に残念なことではないでしょうか。

戦後最初の国産旅客機であるYS11が最終的には2182機を製造し、世界でもよい評価を得ながら、お役所的な経営で破綻したなどと言われて以来、MRJは日本として、ジェット旅客機生産への満を持しての出発でしたが、残念ながら失敗に終わったようです。

日本の多くの企業が飛行機の部品製造には確りした力を持ち、ボーイングをはじめ、世界の航空機メーカーに評価されています。
しかし、ジェット旅客機の完成機ともなれば、最大の重要性である飛行性能や安全性の徹底した確保など、最終工程はまさに大変な仕事でしょう。

完成した機体に、そうした条件をすべて満たしている事を証明するのが型式認証でしょう。
その型式証明が、どうしても取れなかったというのが、三菱リジョナル・ジェット(MRJ)、最終的には三菱スペース・ジェット(MSJ)の製造からの撤退、三菱航空機という企業の清算という事になったようです。

もともとアメリカは日本が旅客機を製造する事には、望ましくないという感覚を持っているということは言われていました。

アメリカとしては、コストも安く、品質も確りしている日本に部品を発注する事は得策ですが、完成品を日本が製造するという事は、日本がまともに競争相手になる可能性だ出て来るという事です。

過去の歴史を見ても、貿易の日米関係というのは、日本の製品がアメリカに輸出されることになれば、日米繊維交渉から、自動車交渉、半導体交渉と、日本製品がアメリカの貿易赤字を増やすという摩擦はいつも起きています。

これが、アメリカの主力産業である旅客機にまで及ぶことに、アメリカがいかなる認識を持つだろうかという事は、当然想像がつくことでしょう。

三菱の旅客機製造に進出したいという意識は、技術水準のある企業としては当然のことでしょうが、三菱リジョナル・ジェットというプロジェクトは、官民共同での事業と、我々も聞いていました。

更に経産省は、「航空機事業に注力」という方針を2017年に打ち出していたのです。
その際、経産省は、航空機産業における日米関係の将来をどう見ていたのでしょうか。

5年後に結果が出て、三菱の旅客機製造のプロジェクトは、巨大なコストと、得意先となるはずだった航空会社との予約の処理など、多くの問題を抱えたまま挫折、終了し、三菱重工が処理をするという事になるようです。

マスコミが報じてえいますように、機体はいくら立派に出来てもFAA(アメリカ連邦航空局)の型式認証が取れなければ、結果として世界を飛ぶ旅客機としては認められないという事です。
そしてこれは、民間企業の仕事というより政府間の交渉と言われています。

日本政府・経産省は、この国を挙げての事業の挫折の原因を精査し、その原因や責任の所在について解りやすく国民に説明する必要があるのではないでしょうか。

連合、首相に「政労使会議」を要請

2023年02月07日 13時24分32秒 | 労働問題
昨日、連合の芳野会長は岸田総理に会い、春闘に向けての政労使が話し合う「政労使会議の開催を要請し、岸田総理も前向きに検討という意向を示したとの報道がありました。

これに関して、経団連の十倉会長も、詳細は聞いていないけれども、そういう機会があるなら「喜んで参加する」と記者会見で表明したとのことです。

きっかけや経緯はどうであれ、当面の日本経済の行方を大きく左右する今春闘について、政労使三者の代表が一堂に会して話し合う機会が生れるというのであれば、大賛成の意を表したいと思います。

これまで毎年春闘をやりながら、日本経済に対しの成果が乏しかったのはこの三者の間のコミュニケーションが深まらなかったからで、前回は2015年だったのですが、あれは当時の安倍総理が労使を呼びつける感じで、長続きしなかったのでしょう。

今回は賃上げの要求をする主体の連合が、政府を巻き込んでという事のようですが、経団連もそうした動きに鷹揚に「喜んで参加」と言っているところが、先ずは良好な話し合いの雰囲気を期待させるところです。

もともと日本では政労使の話し合いが本音で行われる感じの「産業労働懇談会(産労懇)」というのが平成不況の初期まで続いていて、これが日本経済の安定帯形成の大いに役立っていました。

当時は、労使が共に、「労使関係は日本経済の安定帯」などと言っていましたが、これは徹底した労使の話し合い、意見は戦わせても日本経済の安定発展という共通の目的を持ち、労使の信頼関係がそれを支えるといった基盤があったからのように思います。

そうした意味で言いますと、今回はきっかけは連合が、大企業での賃上げを中小にも何とか波及させたいという気持ちから総理に政労使会議を要請したようですが、賃上げ要求を受ける立場の経団連の十倉会長が、「喜んで参加する」という表現で、政労使のコミュニケーションの深化に積極的な意思表示をされたことは素晴らしいと思います。
 
いま日本の賃金・雇用構造は大きく歪んでいます。雇用者の4割近くが低賃金の非正規労働力です。この中の多くは就職氷河期に正規従業員になれず、結果教育訓練も受けられず、専門技能も身につかず、単純労働を転々とする無技能のゆえに賃金の低い「低技能・低賃金」層を形成しています。

アベノミクスの中で、日本の産業界は、この人たちの再訓練、正規化、賃金引上げを10年近く残念ながら、ほぼ放置して来ました。

今春闘で、ようやく日本の産業界の労使は、この歪みを正さなければ、日本経済の低生産性、低賃金は治らないと気付きつつあるのでしょう。

今回の連合の発意で、日本の産業界の労使が、改めてこの問題に取り組むことになれば、多少時間もコストも掛るでしょうが、日本経済再生のプロセスが着実にすすむことになるでしょう。

この新しい政労使会議が、持続し、かつての産労懇の再生と進化の道を歩むことを期待するところです。

労働問題、政府は民間の自主性重視で

2023年02月06日 14時14分44秒 | 労働問題
安倍内閣からの混乱ですが、労働問題についての政府の口出しが岸田内閣では少しひどくなり過ぎているように思います。

賃上げもそうですが、日本的職務給とか、リスキリング、労働の流動化等々民間に任せ、民間が確り知恵を絞ってやるべきことを、政府が事細かに口の出し過ぎです。

民間に任せることが民間労使を育てることになるというのが、戦後の労働省の基本姿勢でした。それが日本の労使関係の成熟、経済の安定と発展の基礎になっていたのですが、いまは親の世話の焼きすぎが子供の自主性の発達を阻害するといった状態です。

もともと政府の役割というのは、プレーヤがやる気になるような「良いルール」を確り作り、基本的な境界線をキチンと引き、あとは、レフェリーに徹することで、レフェリーはプレーはしないのです。これはスポーツを見れば一目瞭然でしょう。

日本的職務給などは、戦後日本の労使が試行錯誤を続けて中身のあるものして来ています。高度成長期は職能資格制度が大いに役立ち、低成長・高齢化の今日は、多くの企業や賃金の専門家が、労働力のどの部分にジョブ型賃金が有効か真剣に研究しています。

リスキリングも、これは日本企業の得意技で、元もとホワイトとブルー(カラー)の区別をなくし、多能工育成から、再訓練、職種転換、リカレント教育などを手掛け、企業自体が、東レや富士フイルムの様に別の業態に変わったといった例は無数です。

こうした技能、専門知識の高度化は企業の手で、企業内の人材育成システムとして行われ、訓練した人材を自社で資格も賃金も上げ活用するのが日本で、転職しなければ賃金が上がらないという欧米との基本的な違いです。

これは欧米と日本の伝統文化の違いから来るもの(マネー中心の欧米、人間中心の日本)であることへの政府の理解はまったく足りないようです。

その結果が、企業内「異動」はあまり頭になく企業間「移動」するのが良い事だと単純に考えているようです。

日本では転職を繰り返して高給を得るのは、ごく一部の優れた人達だけで、多くの人は社内異動で安定した昇給を選びます。
これは政府の問題ではなく本人と企業の問題です。

日曜討論などでも政府代表が、雇用保険2事業(雇用安定と教育訓練)の活用で転職をし易くなどと言いますが、雇用保険2事業の資金は、全額企業が拠出して政府に業務を委託しているものですから、企業の意見をよく聞くべきでしょう。

また政府はすぐに、「国費」で補助金を出すとか、支援するとかいいますが、政府に金があるわけではなく、それは国民の税金か国民からの借金です。政府が身銭を切るようなことは「多分」ありませんから発言には十分気を付けて欲しいといつも感じるところです。

労働問題は、政府は素人です。苦労して知恵を絞り論争し、かつては時にはストまでやって、適切な着地点探しを長年続けてきた企業の労使の自主性を一層高度で合理的なものにするためにも、政府は余計なことには口を出さない、労働法規順守というレフェリーに国は徹した方がいいのですよと、この際、助言したいと思います。

昨日は節分、豆撒きしましたか

2023年02月04日 13時50分18秒 | 文化社会
今日は立春です。都下国分寺では10時ごろから春らしい青空になって、立春に相応しい良い日になって来ました。

今日立春という事は、昨日は節分、皆さんのお宅では「鬼やらい」の豆撒きをされたでしょうか。
我家では家内が生協の毎週の配達に「福豆」を注文し、先週来た豆を1合の酒〼に入れて用意していました。撒くのは私の役目です。

新年は初詣から始まる日本の年中行事ですが、昔から理屈は言わずに、何となく、きちんとやっているような気がします。

やっぱり季節感というのでしょうか、時の流れに刻み目はないのですが、我々の先祖が太陽や月の動きを見て、食糧を得るための採集や栽培との関係を理解し、年、月を決め、人間の生活を自然の変化に合わせてきた知恵の原点のようなものは大事でしょう。

閏秒までは意識出来ませんが、これから日が伸びてくる、これから草木が育つ暖かさになるといった感覚で1年の始まりを感じるための年中行事は、太陽暦であれ、旧暦であれ、大事にして確り感じたいと思うところです。

今も、手紙には「季節の変わり目、健康にご留意を」などと書きますが、昔の人は、季節の変わり目には鬼が出ると思って、「鬼は外、福は内」と言って豆(魔滅・魔目)で鬼を追う払う行事を考えたのでしょう。
明治生まれの私の父は「鬼は外、福は内、鬼の眼(まなこ)を打ち潰せ」と言って豆をまいていました。

昨夕、家内に「撒くのは少しにして下さい。後が大変だから」と言われて、「了解」といって「鬼は外、福は内」と一回り「最後の戸を閉める所だけ豆を撒いたょ」と言っておきました。

今朝「一回りしたけど、鬼はいなかったよ。福の神は居ただろうけど見えなかった」と言いましたら、後から家内が「鬼がいなくて結構でしたね、福の神は見えなくてもいいでしょう。今年もいい年になるでしょう。」と言います。

家内「福は、今見えないものなんですよ。後からあの頃は良かったというのが人間ですから。」
私「・・・・・」
言われてみれば、確かに「人間って、そんなもんだな」と腑に落ちる所でした。

ところで、一歩家から外に出てみれば、世界には戦乱に荒れ果てるところもありますし、日本としても、一歩一歩戦乱の当事国なる可能性に近づいているような現実があります。

日本が「福の神」から「鬼」になれば、節分に関係なく豆ならぬミサイルが飛んでくる可能性も出て来るでしょう。

節分、立春、こうした季節の変化を、心おきなく感じ、楽しめる日本であってほしいとつくづく感じるところです。

国民はリーダーに騙されないようにしましょう

2023年02月03日 13時49分39秒 | 政治
ロシアのプーチン大統領が、2日、第二次世界大戦でナチスドイツとの激戦地だった旧レニングラードで、演説をしたそうです。

動画入りのニュースで知ったのですが字幕の説明では、
「ナチスのイデオロギーが欧米とともに再びロシアの安全保障に対して直接的な脅威を齎している」として、ドイツを侵略者とし、第二次大戦でレニングラードを守り抜いたロシア兵士を称え、「我々は、この脅威に対して祖国を守るために戦う」ウクライナ侵攻の意義を強調したそうです。

ロシアでは、戦争の長期化、その犠牲の大きさから停戦の支持が増えているという報道もありますが、プーチンはウクライナ侵攻という自分の誤算を、ドイツは旧ナチスと同じだと強調することによって国民の愛国心に訴え、自己正当化をしているように見えます。

リーダーは、他国からの脅威を「自分たちは被害者だ」という事を強調し、国民の共感を得るという手法をよく使います。
メルケルさんがロシアに対し心して宥和的な政策を取ったなどということは、頭の片隅にも残っていないのでしょう。

少し冷めた目で、客観的にみれば、自分の立場の擁護、自分の地位の延命を図るリーダーの姿が丸見えです。

アメリカ大統領選に再出馬が言われるトランプさんの言動にも、被害者意識を強調して共感を得るという手法は巧みに使われています。

アメリカの栄光を再び、というスローガンと同時に、世界中の国や人々がアメリカを利用して儲けている、「お蔭でアメリカは損ばかりしている」という被害者意識の強調を忘れません。
多くのアメリカの人々が、俺たちの失業や低賃金は、外国のせいなのだと信じるのです。

アメリカの主要企業が中国に進出して低賃金を利用して巨利を挙げているのは棚に上げ、中国に関税戦争を仕掛けて返り血を浴び、国内外に多くのトラブルを起こして初めてトランプのウソがばれるのですが、それでも未だトランプ信仰者は数多いようです。

ロシアの場合は、プーチン政権による情報統制が大きな効果を持っているようで、太平洋戦争中の日本ではありませんが、大本営発表を信じる人が多かったように、プーチンの言う事が正しいと思う人がやはり圧倒的に多いようです。

アメリカの場合は、情報は自由ですが、難しい事は解らないが、解り易い言葉で、アメリカは被害者だ、被害のツケは皆さんに回っていると聞けば、「やっぱりそうだったのか」と納得する人が結構多いのでしょう。

翻って日本の場合はどうでしょうか。
日本は、情報は自由です。ありとあらゆる情報が入ってきます。北朝鮮が頻繁にミサイルを撃っていて、技術は進んでいうようだ。中国は尖閣列島の接続水域、時に領海に入ってくる。ロシアは北方領土を返すつもりはないようで、そこに基地を作っている。

そんなことは皆知っています。でも、現実に日本に侵攻してくると考えている人は殆どいないでしょう。

戦争をしない国である日本に侵攻するというのは、近代国家としては、世界の目が厳し過ぎるからという気持ちが、どの国にも根底にはあるのでしょう。

その日本では今、政権党が「毛を吹いて傷を求めて」(戦争する国になろうとして)いるようです。しかし多くの国民は、未だ上の空です。全く実感がないからでしょう。
しかし、実感が出て来てからでは、既に手遅れという事になるのではないでしょうか。

これからどうなるかを決めるのは、主権者である国民の仕事です。この度のロシアの状況に鑑みれば、国民が「早いうちに」問題に気付き、積極的な言論や行動により「国民の望む正しい選択」を政府がとるよう「民主主義の方法論で」問題解決をすべきではないでしょうか。

戦国時代に逆戻り、大河ドラマを彷彿

2023年02月02日 20時34分36秒 | 国際関係
このブログでは、人類の文化には2種類あると思っています。
「争いの文化」と「競いの文化」です。
人類はかつては「争いの文化」が主流でしたが、次第に「競いの文化」が主流を占めるようになって来ていると考えています。

人類の文化が進歩するのは、人間が向上心を持っているからでしょう。向上心が「競いの文化」を生みます。オリンピックは「競いの文化」の典型でしょう。

向上心は、経済的には人間が豊かになりたいという気持ちに現れます。これが「争いの文化」を生んできました。

かつては豊かになるためには領土を広げることが必須でした。これが戦争を生んだのでしょう。中世までのヨーロッパでも日本の戦国時代でもそうでした。

それぞれの国が領土を広げようと考えれば、攻めなければ攻められるという恐怖心や被害者意識を持ちますから、その両方が相まって、戦争が絶えないという事になります。

しかし今は違います。技術革新の世の中では、より高度な技術や経済システムを持てば、いくらでも豊かになれます。世界で1人当たりGDP 最大の国はルクセンブルグです。

こういう世の中になっても、未だに中世のヨーロッパや日本の戦国時代のような考え方のリーダーの国はあるようです。

大体そういう国は独裁者の国で、ロシア、中国、北朝鮮などが挙げられます。

日本はと言いますと、1945年以来、「争いの文化」から世界に先駆けて脱皮し、戦争放棄の平和憲法を掲げる「競いの文化」を主唱する国となり、文化の面では世界の最先端を行く国になりました。

ところがこの所の自民・公明の政権は、自分たちの先輩の苦労も解らずに、戦国時代の日本に戻ろうしているようです。

しかも、国民の意見を聞けば、そんなことは許さないという声が大きいに決まっているので、そんな大きな歴史の逆転をのような事を、単なる閣議決定でやってしまって、国民が気が付いた時には「もう手遅れです」という事で済まそうとしているように見えます。

国家安全保障戦略の中には、「これは国益のためだ」と書いてあります。最大の国益は戦争をしない事です。戦争は破壊そのもので、人命も失われ、国にとっては大きな損失です

更に、国民にそう言われては困るのでしょうか、中国と北朝鮮とロシアが日本にとっての重大な脅威になっていると克明に書き込んでいます。

そんな形で国民に恐怖心を植え付ける前に、直接の首脳会談などで外交の成果を挙げ、国民を安心させてほしいと思うのですがそんな気配はありません。

何か戦国時代の迷える中小城主の姿を見ているような感じになって来ます。

戦争は放棄し、経済大国として堂々と世界と付き合うというかつての自民党リーダーの顔も浮かび、その日本もここまで落ちたかと本当に嘆かわしい気持ちになってしまうといった声を、あちこちで聞きます。

アメリカは何を考えているのか

2023年02月01日 13時51分20秒 | 国際関係
アメリカの歴史は250年ほどです。独立前のプリマスへの植民から数えても400年ほどです。
その400年ほどの間にヨーロッパの2000余年の歴史をなぞって、1945年以降は世界の覇権国の地位を確立しています。

植民船で上陸、先住民アメリカ・インディアンの征服、母国イギリスからの独立、奴隷制度・南北の内戦も経験、急速な経済発展、二度の世界大戦参戦を経て覇権国になるという超高速の発展進歩です。

そして戦後70余年、覇権国の地位を守り続けています。
覇権国の地位を守るには経済力と軍事力が必要です。冷戦では核戦力を含む軍事力を中心に覇権国の地位の維持に努めました。

その間経済力では日本が急速に追い上げました、日本が軍事力を持たず、戦後アメリカの援助で復興した友好国ですが、繊維交渉から始まって、自動車、半導体に至る経済競争の中で、部分的にも覇権国に挑戦するような状況になりました。

しかも、日本の勢いは、当時は大変なもので、アメリカは守りに追い込まれることが多く、特に1970年代から90年代にかけての二度の石油危機後のスタグフレーションで苦しんでいたアメリカは、覇権国の地位を守るために、日本の追い落としを計りました。

それがプラザ合意です。G5の場を利用したこの試みは大成功をおさめ、円レートは2倍ほどに切りあがり、日本経済は深刻な長期不況で低迷、経済面での脅威はなくなりました。

その後、ソビエト崩壊もあり、アメリカの覇権国の地位は安泰かと思われましたが、改めて急速に経済力をつけてきたのが巨大国の中国です。
このままでは2030年ごろには中国GDPはアメリカを抜くという予想も出始めました。

中国の急成長に対してもアメリカは人民元の切り上げで対応しようとしましたが、日本の経験を見ていた中国は拒否、成長を続けました。

トランプ大統領になり「アメリカ・ファースト」で、アメリカは関税戦争という形の経済戦を挑みました。
アメリカも返り血を浴びましたが、中国の不動産価格ベースの経済成長の行き詰まりやコロナ問題もあり中国の経済成長率は低下、先行きは不透明の状況です。

一方、軍事的な局面では、ソ連のウクライナ侵攻が世界の問題になる中で、中国は台湾進攻を示唆してアメリカを牽制、覇権国の地位と、自由世界の防衛とを重ね、アメリカは覇権国の地位堅持に着実に動いているようです。

アメリカは、二度の世界大戦に勝利しているわけですが、その間アメリカ本土は無傷です。
これはまさに地政学的な条件によるものですが、今は違います。
太平洋、大西洋を飛び越えて核弾頭がミサイルに乗って飛んで来る時代です。

この状況の中で、アメリカの最大の関心事は、本土の安泰、つまり核不使用でしょう。
先ず、ロシアが核を使う事態は絶対避ける、更に、もし台湾有事となってもアメリカ本土にミサイルが飛んでくるような事態は絶対避ける事を考えるでしょう。

そのために何が必要か。アメリカはニコニコしながらも常に、物事は冷徹に考え、あらゆる能力を駆使して、本土の防衛を確実にしようと考える国なのでしょう。

そうしたアメリカに倣えば、日本も事態の本質を冷静に理解し、日本の国民のために最善の選択は何なのかを確りと見定める目が、総理をはじめ、政治家、官僚、あらゆる場面でリーダーとなる人には必要なように思われてなりません。