tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

労働問題、政府は民間の自主性重視で

2023年02月06日 14時14分44秒 | 労働問題
安倍内閣からの混乱ですが、労働問題についての政府の口出しが岸田内閣では少しひどくなり過ぎているように思います。

賃上げもそうですが、日本的職務給とか、リスキリング、労働の流動化等々民間に任せ、民間が確り知恵を絞ってやるべきことを、政府が事細かに口の出し過ぎです。

民間に任せることが民間労使を育てることになるというのが、戦後の労働省の基本姿勢でした。それが日本の労使関係の成熟、経済の安定と発展の基礎になっていたのですが、いまは親の世話の焼きすぎが子供の自主性の発達を阻害するといった状態です。

もともと政府の役割というのは、プレーヤがやる気になるような「良いルール」を確り作り、基本的な境界線をキチンと引き、あとは、レフェリーに徹することで、レフェリーはプレーはしないのです。これはスポーツを見れば一目瞭然でしょう。

日本的職務給などは、戦後日本の労使が試行錯誤を続けて中身のあるものして来ています。高度成長期は職能資格制度が大いに役立ち、低成長・高齢化の今日は、多くの企業や賃金の専門家が、労働力のどの部分にジョブ型賃金が有効か真剣に研究しています。

リスキリングも、これは日本企業の得意技で、元もとホワイトとブルー(カラー)の区別をなくし、多能工育成から、再訓練、職種転換、リカレント教育などを手掛け、企業自体が、東レや富士フイルムの様に別の業態に変わったといった例は無数です。

こうした技能、専門知識の高度化は企業の手で、企業内の人材育成システムとして行われ、訓練した人材を自社で資格も賃金も上げ活用するのが日本で、転職しなければ賃金が上がらないという欧米との基本的な違いです。

これは欧米と日本の伝統文化の違いから来るもの(マネー中心の欧米、人間中心の日本)であることへの政府の理解はまったく足りないようです。

その結果が、企業内「異動」はあまり頭になく企業間「移動」するのが良い事だと単純に考えているようです。

日本では転職を繰り返して高給を得るのは、ごく一部の優れた人達だけで、多くの人は社内異動で安定した昇給を選びます。
これは政府の問題ではなく本人と企業の問題です。

日曜討論などでも政府代表が、雇用保険2事業(雇用安定と教育訓練)の活用で転職をし易くなどと言いますが、雇用保険2事業の資金は、全額企業が拠出して政府に業務を委託しているものですから、企業の意見をよく聞くべきでしょう。

また政府はすぐに、「国費」で補助金を出すとか、支援するとかいいますが、政府に金があるわけではなく、それは国民の税金か国民からの借金です。政府が身銭を切るようなことは「多分」ありませんから発言には十分気を付けて欲しいといつも感じるところです。

労働問題は、政府は素人です。苦労して知恵を絞り論争し、かつては時にはストまでやって、適切な着地点探しを長年続けてきた企業の労使の自主性を一層高度で合理的なものにするためにも、政府は余計なことには口を出さない、労働法規順守というレフェリーに国は徹した方がいいのですよと、この際、助言したいと思います。