tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

賃金、生産性、物価、為替レート、纏めてみれば

2023年02月13日 13時28分31秒 | 経済
賃金、生産性、物価、為替レート、纏めてみれば
今年の春闘は、日本経済の構造改革をかけた大事な春闘だと言われています。このブログも、その意識は十分持っていて、平均賃金水準で5%の上昇という思い切った数字も出してきました。

これは、アベノミクス以来、値上げの出来ない雰囲気の中で我慢してきた企業が、ここに来て一斉値上げに踏み切り、4%台の消費者物価の上昇になっているという現実に対応するものでもあります。

経済理論から考えれば、賃金が上がる前提条件は、生産性の向上です。生産性が上がらなければ、賃上げの結果は「利益の減少」か「物価の上昇」になります。

アベノミクスの第1の矢で、円安になった時、企業の利益は大幅に増えました。しかし企業はまり賃上げはしませんでした。その前、大幅円高になった時賃金を抑えましたが(非正規を増やして)その逆をやらなかった事のツケが今廻って来ているのです。

円安で利益が大幅に増えた企業は、今度の賃上げで多少の利益減になっても仕方ないでしょう。一方、値上げできずに苦しんだ企業は、未だ少し値上げをするかもしれません。
これらは日本経済のバランス回復のプロセスでしょう。

ここでもう1つ最も大事なことが置き去りになっている事に政府も企業も気が付いているのでしょうか。

それは生産性向上の必要です。生産性向上無き賃上げは上に書いた通りです。
日本経済の賃金の低さが言われますが、その真因は、生産性の低さです。1人当たりGDP(全国民の生産性)は世界で28位です(2020年)。これでは賃金の低いのも当然です。

多くの人が、かつて世界のトップクラスだった日本の生産性が、何で急激に下がったのか不思議だと言います。

不思議でもなんでもないようです。いま日本の雇用者の4割が非正規従業員です。毎月勤労統計(2022年速報)によれば、一般労働者の現金給与総額(月額)429千円、パートタイム労働者非正規従業員の賃金(同)102千円です。

この従業員分類が正規と非正規に多少の不適合もあるかとは思いますが、企業は非正規従業員にはこの賃金レベルの生産性の低い仕事をしてもらえばOKという事でしょう。

雇用者の4割が、この賃金レベルの生産性が前提で雇用されているということですと日本の雇用者の平均生産性が大幅に低くて当然という事になります。

この背後には、就職氷河期を中心に、非正規・低賃金の雇用を転々とし、無技能のままで生活の貧困にあえぐ多くの人々の存在という現実があるのです。
これが「子供の6人に1人が貧困家庭の子」といった現象、また「80=50問題」の背後にある現実でしょう。

企業に要請されるのは、円安実現から10年遅れましたが、非正規従業員の教育訓練、正規化、賃金上昇という努力を早急に開始する事です。

そして早期に非正規従業員を少なくとも半分以下に減らし、技能労働力に育て、賃金を上げ、企業全体、日本経済全体の高生産性化に挑戦して、持続的な賃金上昇、格差社会の是正、日本社会の健全化に民間レベルでの貢献をすることではないでしょうか。

これこそ、長期不況で歪みに歪んだ日本経済社会の健全な社会への復元を産業の現場から実践する企業の社会的責任と考えるべきでしょう。
日本企業がんばれ!!