tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

賃上げと共に非正規の正規化の結果・計画も

2023年02月23日 15時12分59秒 | 労働問題
集中回答日を半月後に控え、既に満額回答といった労使合意の状況がマスコミで報じられるという今年の春闘です。

こうした合労使合意が早くも報道されることは、労使交渉の今後についての影響も小さくないでしょうし、今の日本の経済社会の状況から見て、労使双方が共に日本経済にとって賃金の上昇が必要なことを十分に認識している事の証左でもありましょう。

労使の信頼関係を基礎に置き、日本経済社会の再活性化を共通の目的とする今春闘で、日本の文化社会の伝統的在り方に根差す日本的労使関係が改めて認識されるという事であれば、日本経済復活の第一歩と評価出来そうです。

この好調の滑り出しを見せる春闘の中で、矢張り気になるのは、賃上げだけで問題は解決するのかという重い問いかけです。

確かに、大幅円高による長期不況を、雇用を維持しつつ乗り切るために、当時は「賃金より雇用」という声が労使間の共通理解として叫ばれました。

そしてそれは多分正しい選択でした。主要国の中で、日本だけが、経済の最悪期でも失業率5.5%以下という事で、雇用の確保に成功していることは明らかです。

しかし問題はその中身でした。不況があまりに深刻で長期だったため、日本の多くの企業は、緊急避難的に低賃金の非正規労働を多用して平均賃金を下げた結果、雇用の分断を生むことになったのはご承知の通りです。

今、日本の雇用構造は4割の非正規雇用を抱え、その多くは無技能のまま職場を転々、日本社会の貧困層の形成と、生産性の低迷の原因となっているのです。

この問題は、単なる賃上げでは正すことは不可能です。喫緊の課題は、(10年遅れてしまいましたが)この人たちを正規化し最速で技能労働力に育て上げ、賃金と生産性を同時に高めていくことです。

かつて、非正規従業員を増やすことで正規従業員の賃金引き下げは大きくならずに済んだのが現実であってみれば、いまこそ非正規の正規化に、遅ればせながら徹底努力するときでしょう。

余計な説明をしましたが、お願いは、まさにこの点に関してです。

春闘の賃上げの数値と同時に、非正規の正規転換についての実績、あるいは計画を表示していただくのはどうかという事です。

非正規雇用が、今の40%から20%近くに下がった時、日本経済・社会は、今よりかなり良くなっているのではないかと思っています。