tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

残念至極!三菱スペースジェットの撤退

2023年02月07日 13時24分32秒 | 国際関係
2015年の11月12日、「MRJ離陸」を書きました、その前の日に、アメリカでの「三菱リジョナル・ジェット」の初飛行が報道されたからです。

2017年9月には、「経産省、航空機事業に注力」を書いて、経産省が「我が国の航空機産業の本格的発展を目指して、纏まった政策を打ち出そうという事になった」と記しています。

初飛行から7年、経産省の政策表明から5年がたって、今日のタイトルは標記の通りです。本当に残念なことではないでしょうか。

戦後最初の国産旅客機であるYS11が最終的には2182機を製造し、世界でもよい評価を得ながら、お役所的な経営で破綻したなどと言われて以来、MRJは日本として、ジェット旅客機生産への満を持しての出発でしたが、残念ながら失敗に終わったようです。

日本の多くの企業が飛行機の部品製造には確りした力を持ち、ボーイングをはじめ、世界の航空機メーカーに評価されています。
しかし、ジェット旅客機の完成機ともなれば、最大の重要性である飛行性能や安全性の徹底した確保など、最終工程はまさに大変な仕事でしょう。

完成した機体に、そうした条件をすべて満たしている事を証明するのが型式認証でしょう。
その型式証明が、どうしても取れなかったというのが、三菱リジョナル・ジェット(MRJ)、最終的には三菱スペース・ジェット(MSJ)の製造からの撤退、三菱航空機という企業の清算という事になったようです。

もともとアメリカは日本が旅客機を製造する事には、望ましくないという感覚を持っているということは言われていました。

アメリカとしては、コストも安く、品質も確りしている日本に部品を発注する事は得策ですが、完成品を日本が製造するという事は、日本がまともに競争相手になる可能性だ出て来るという事です。

過去の歴史を見ても、貿易の日米関係というのは、日本の製品がアメリカに輸出されることになれば、日米繊維交渉から、自動車交渉、半導体交渉と、日本製品がアメリカの貿易赤字を増やすという摩擦はいつも起きています。

これが、アメリカの主力産業である旅客機にまで及ぶことに、アメリカがいかなる認識を持つだろうかという事は、当然想像がつくことでしょう。

三菱の旅客機製造に進出したいという意識は、技術水準のある企業としては当然のことでしょうが、三菱リジョナル・ジェットというプロジェクトは、官民共同での事業と、我々も聞いていました。

更に経産省は、「航空機事業に注力」という方針を2017年に打ち出していたのです。
その際、経産省は、航空機産業における日米関係の将来をどう見ていたのでしょうか。

5年後に結果が出て、三菱の旅客機製造のプロジェクトは、巨大なコストと、得意先となるはずだった航空会社との予約の処理など、多くの問題を抱えたまま挫折、終了し、三菱重工が処理をするという事になるようです。

マスコミが報じてえいますように、機体はいくら立派に出来てもFAA(アメリカ連邦航空局)の型式認証が取れなければ、結果として世界を飛ぶ旅客機としては認められないという事です。
そしてこれは、民間企業の仕事というより政府間の交渉と言われています。

日本政府・経産省は、この国を挙げての事業の挫折の原因を精査し、その原因や責任の所在について解りやすく国民に説明する必要があるのではないでしょうか。

連合、首相に「政労使会議」を要請

2023年02月07日 13時24分32秒 | 労働問題
昨日、連合の芳野会長は岸田総理に会い、春闘に向けての政労使が話し合う「政労使会議の開催を要請し、岸田総理も前向きに検討という意向を示したとの報道がありました。

これに関して、経団連の十倉会長も、詳細は聞いていないけれども、そういう機会があるなら「喜んで参加する」と記者会見で表明したとのことです。

きっかけや経緯はどうであれ、当面の日本経済の行方を大きく左右する今春闘について、政労使三者の代表が一堂に会して話し合う機会が生れるというのであれば、大賛成の意を表したいと思います。

これまで毎年春闘をやりながら、日本経済に対しの成果が乏しかったのはこの三者の間のコミュニケーションが深まらなかったからで、前回は2015年だったのですが、あれは当時の安倍総理が労使を呼びつける感じで、長続きしなかったのでしょう。

今回は賃上げの要求をする主体の連合が、政府を巻き込んでという事のようですが、経団連もそうした動きに鷹揚に「喜んで参加」と言っているところが、先ずは良好な話し合いの雰囲気を期待させるところです。

もともと日本では政労使の話し合いが本音で行われる感じの「産業労働懇談会(産労懇)」というのが平成不況の初期まで続いていて、これが日本経済の安定帯形成の大いに役立っていました。

当時は、労使が共に、「労使関係は日本経済の安定帯」などと言っていましたが、これは徹底した労使の話し合い、意見は戦わせても日本経済の安定発展という共通の目的を持ち、労使の信頼関係がそれを支えるといった基盤があったからのように思います。

そうした意味で言いますと、今回はきっかけは連合が、大企業での賃上げを中小にも何とか波及させたいという気持ちから総理に政労使会議を要請したようですが、賃上げ要求を受ける立場の経団連の十倉会長が、「喜んで参加する」という表現で、政労使のコミュニケーションの深化に積極的な意思表示をされたことは素晴らしいと思います。
 
いま日本の賃金・雇用構造は大きく歪んでいます。雇用者の4割近くが低賃金の非正規労働力です。この中の多くは就職氷河期に正規従業員になれず、結果教育訓練も受けられず、専門技能も身につかず、単純労働を転々とする無技能のゆえに賃金の低い「低技能・低賃金」層を形成しています。

アベノミクスの中で、日本の産業界は、この人たちの再訓練、正規化、賃金引上げを10年近く残念ながら、ほぼ放置して来ました。

今春闘で、ようやく日本の産業界の労使は、この歪みを正さなければ、日本経済の低生産性、低賃金は治らないと気付きつつあるのでしょう。

今回の連合の発意で、日本の産業界の労使が、改めてこの問題に取り組むことになれば、多少時間もコストも掛るでしょうが、日本経済再生のプロセスが着実にすすむことになるでしょう。

この新しい政労使会議が、持続し、かつての産労懇の再生と進化の道を歩むことを期待するところです。