tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

円安続く気配、賃金・雇用改善の好機

2023年02月27日 16時04分28秒 | 労働問題
$1=140~150円という行き過ぎた円安にはならないと思いますが、円レートが些か異常ではないかと思うほど円安傾向を強めています。

       円レートの推移(円)

                   資料:世界経済のネタ帳

今日は136円台まで付けて、日経平均はマイナスですが、輸出関連銘柄には大幅に上げているものもあります。

為替レートは出来るだけ安定しているのがいいというのは基本ですが、マネー資本主義の中ではそうはいきません。
日本銀行がこれをどう見ているか新総裁予定の植田さんもあまり行き過ぎてほしくないと思っているのではないでしょうか。

勿論この円安の主因は、アメリカのインフレがなかなか収まらないという事で、FRBが金利引き上げを続ける意向であることによるものでしょうが、同時に、日本の国際収支が大きく変化していることも影響があるようです。

          日本の経常収支と貿易収支(兆円)

                     資料:財務省「国際収支統計}、

貿易収支が大幅な赤字になっている事はマスコミが教ええくれているところですが、これが、原油、LNG、石炭や飼料用の穀物などの値上がりによることは明らかで、この高値がいつまで続くかは、ウクライナ情勢を見ても定かではないようです。
黒田日銀総裁は、海外物価高騰は一時的なものとの見方でしたし、後継予定の植田さんも年内には収まるのではという見方のようです。

そうなれば日本の貿易収支は改善に向かうという事になりますが、ここまで大幅になった貿易収支の黒字転換は容易ではないという見方もありそうです。
それは国際的な産業構造、サプライチェーンの安定などを必要とするからです。

グラフでご覧になりますように、日本の場合、経常収支の黒字は(第一次資本収支の黒字で)確保していますから、対面、過度な心配の必要はないと思いますが、アメリカの金利政策のせいで、円安傾向が長引いた場合、日本企業はいかなる対応をするか、かなり大事になるような気がします。

必要なことは、輸入価格の転嫁 を完全なものにすべきでしょう。一部の産業や小規模企業で遅れているところがあれば、完全転嫁を当然の商慣行とすべきでしょう。
もちろん 円高になればその逆の励行が必要です。

円安は、日本製品・サービスの競争力を増し、円建ての付加価値をその分増やしますから、当然それは雇用者報酬(賃金その他)への配分としても活用しなければなりません。
何故なら、円高の時日本企業は雇用者報酬の水準の大幅ダウンをやっているからです。

日本経済としては1割円高になれば営業余剰(利益)も1割増えて当然でしょう。しかしそれではお釣りが来ます。雇用者報酬も1割増やせる勘定になるはずです。

このブログでは、その分を先ず非正規社員の正規化のコスト(雇用安定と教育訓練)に充ててほしいと思っています。その上になお春闘レベルの定昇ベアも可能になるはずです。

これは日本の雇用・産業構造のかつての安定成長時代への復元という作業なのです。これからの日本経済・社会の新たな成長は、そこからの再スタートになるはずです。

そのためには、アメリカのインフレ傾向、金利引き上げ指向、それによる円安の期間が絶好のチャンスという事ではないでしょうか。
今の円安傾向を日本経済・社会正常化の大切な原資として有効活用してほしいと思っています。