tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

2021年度「政府経済見通し」を見る

2021年01月21日 22時32分41秒 | 経済
2021年度「政府経済見通し」を見る
 今週月曜、18日に内閣府より来年度(平成3年度)の「政府経済見通し」の閣議決定版が発表されました。

 昨年出した平成2年度の「政府経済見通し」は、「見通し」ではなく「希望数値」だなどと言われましたが、結局はコロナ禍で、現実は政府の希望とは反対のマイナス成長になっています。

 来年度の「見通しも」多分に希望的なものですが、国民も、まともな経済への復帰を希望していますから、そのつもりで点検してみたいと思います。

 まず実質GDP の成長率ですが、今年度の「実績見込み」5.2%のマイナス成長、そして来年度の「見込み」はプラス4.0%で、今年のコロナによる落ち込みを7~8割がた取り返すという数字になっています。(以下、数字はすべて実質値です)
 
 勿論、コロナは第3波で終わり、4波は避けられ、ワクチン接種は順調にいき、コロナ禍は沈静に向かい、オリンピック、パラリンピックも何とか実施され、世界経済も、日本経済もコロナ終息の見通しが立って、ほっと一息という前提でしょう。

 世界経済については「国際機関等の見通しを基準にした」と注書きしています。

 中身を見ますと、GDPの過半を占める「民間最終消費支出」が今年度のマイナス6.0%から3.9%のプラスに、民間住宅も同マイナス6.7%から1.8%プラスに小幅回復、頼みの民間企業設備は、あまり期待していないようで、同マイナス8.1%から2.9%のプラスの回復の見込みです。

 こう見ますと、確かに回復は回復ですが、今年度の落ち込みに比べれば、回復な鈍く、政府としては、民間の回復のペースについては慎重な見方が目立つといった所です。

 一方、政府支出の方を見ますと、巨大な補正予算を組んだ今年度が、政府支出全体で3.7%のプラスで、内、政府消費支出が3.2%、固定資本形成(政府の投資支出)が5.4%です。公共投資でGDPの落ち込みを支えようとした形ですが、1人10万円や、GoToの補助金、企業への給付金などは、合計10兆円~20兆円という巨大な額ですが、GDPにはそれほど反映されていないような気がします。

 来年度については,政府消費支出、固定資本形成は共に3.3%のプラスで、ほぼ今年度並みの財政テコ入れを見込んでいるようです。
 経済成長には役に立つでしょうが、いずれ赤字財政で賄うのでしょうから、財政再建はますます遠のき、将来への心配の先送りは明らかです。

 そして、予想外に大きくのGDPに寄与することになっているのが財貨サービスの純輸出(輸出-輸入)です(輸出には外国人観光客の買い物も含む)。
 昨年度-6.7%、今年度マイナス13.1%だった輸出の伸びが来年度は11.4%のプラスになる見通しで、来年度のGDP成長見込みの4.0%の内0.7%が純輸出によるものです。

 その他気の付くもの挙げますと。雇用者報酬の伸びは1.5%、雇用者の伸びは0.7%で、この差0.8ポイントは、1人当たりの賃金(正しくは人件費)上昇の見通し、企業所得は今年度19.4%のマイナス、来年度は17.2%のプラスで、かなり回復、失業率も今年度3.1%から来年度は2.7%に改善、世界のGDP成長率は5.9%で日本より高い(国際機関予測)、円レートは $1=¥104.4としている(円高になると成長率は見通しより落ちる)などです。

 コロナ次第、ワクチン次第、日本人の適切な行動次第、そして最も重要なのは「政府の誤りない政策の実行」次第の来年度ですが、何とか予想外の改善が実現して欲しいものです。