tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

ベーシックインカムの応用問題

2021年01月06日 22時57分43秒 | 労働
ベーシックインカムの応用問題
 ベーシックインカムについては 過去にも一度取り上げました。確かに社会保障制度の充実を考えれば、有効な選択肢の一つではないかと思われます。

 全世界を見回せば、実験的に導入した国や地方自治体などはありますが、未だに恒常的な制度として長期に亘って導入している例はないようです。

 本来の趣旨は、すべての国民に安定した健康的な生活を保障するという社会保障の目的からすれば、税収の一定部分を割いて、全国民一律、あるいは一定の条件を満たす場合に、一律に健康な生活を営むための最も基礎的な部分について一定額を給付するというのは、1つの理想形かもしれえません。

しかし現実の場では、そうして理念の実現のために、ベーシックインカム制度ではなく、生活保護制度や、最低賃金制度などの方が一般的に普及しているというのが現状でしょう。

 理由はいろいろあると思いましが、ベーシックインカムの水準をどうするか、いかなる支給条件が適切なのか、全国民一律というのは納得性があるのかなどといった種々の問題があるのでしょう。

 そんなことを考えていたのですが、実は、今度のコロナ禍のような、特別の条件の中で、一定期間(コロナ終息まで)ベーシックインカムの考え方を導入するというのは、もしかしたら適切なイデアではないかという感を強くしたところです。

 端的な例を1つ上げてみれば、今回のコロナ禍の中で、当面の事業継続に問題を生ずる例はかなりあるようです。勿論コロナが収まれば、事業再開は可能なのでしょうが、コロナの中では事業継続は不可能というケースも多く、従業員の雇用継続は不可能という事になる例も多数でしょう。

 TVのルポなどにもありますが、会社の寮に入り、安定した生活が出来ている人が、突如として会社の縮小あるいは閉鎖、休業といった事態によって、解雇となった場合、収入と住居を一挙に失うことになります。頼れる所があればいいのですが、そうしたところがない、あるいはあっても諸種の事情で頼る訳にもいかず、いきなり路上生活者、あるいはその予備軍(失業保険期間中)になるといったことが現実に起きているようです。

 当然最低賃金制度は役に立ちませんし、生活保護はというと、多くの人は、社会生活の敗者のような印象をもっていて、親戚や知人の手前、申請に二の足を踏む場合が多いようです。しかもコロナさえ過ぎれば何とかなるという思いもあり、この一時的な苦境をいかに生き抜くかが現在・現実の問題といった状況という事でしょう。

 こうした場合に、適切な申請条件を定めて、例えば月額15万円とか、生活保護並みの20万円とかというベーシックインカムを給付するという事で、路上生活者への転落を防止することが可能ではないでしょうか。

 今、コロナの中で、本当に必要な人たちのところに政府の手が届いていないという声が多く聞かれます。社会事業者や、労働組合などの炊き出しに並ぶ人の多くはこんな手で救えるのではないでしょうか。

 政府はすでに、国民1人当たり10万円、(総額13兆円?)の支給をしていますが、本当に必要な人に適切な給付という事であれば、より少額の原資で、より効率的な本当に必要な人達への援助になるのではないでしょうか。

 以上勿論数字や方法論についても詰めたものではありません、しかし、コロナ禍のような異常事態の場合、より少ない原資で、より効率的な国民への援助を考えた場合、ベーシックインカムという方法論の活用を考えてみるのも何らかの役に立つかと思い敢えて書いてみました。