tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

インフレの原因(その1)

2014年07月06日 10時56分11秒 | 経済
インフレの原因(その1)<2008年5月3日付のリメイク版>
昨年来長期不況から脱出した日本経済はでは、デフレからインフレへの転換が見られます。最近の消費者物価指数をみると五月の全国で前年比3.7パーセントの上昇です。

 最も大きな原因は、消費税の3パーセントの引き上げでしょう。理論的にはこれだけで3パーセントの上昇になるはずです。加えて、昨年4月、20円幅の円安がありました。理論的には輸入物価が2割ほど上昇するはずです。さらに、このところ原油をはじめ資源価格が上昇しています。これは円安とダブルでインフレ要因です。

 政府はインフレ目標2パーセントを掲げてますが、政府は消費増税分はインフレ目標に入れませんからまだ1.5パーセントほどで、目標にいかないと言っています。一口にインフレといっても結構解りにくいので、ここできちんと考えてみましょう。  

 インフレの原因として、通常、経済学でいわれるのは、デマンドプル・インフレ(供給より需要が多いから値上がりする)、コストプッシュ・インフレ(コストが上がって企業が値上げするからインフレになる)の2つですが、より現実に密着して、現実の状況を見ると、大きく次の3つほどがあるように思います。
1、通貨の量を増やすことによるインフレ(単純な貨幣数量説:物の量が増えずに通貨の量が2倍になれば物価は2倍になる)
2、海外での物価値上がりによる「輸入インフレ」
3、国内でのコスト上昇による「ホームメイドインフレ」(自家製インフレ)

 この3つについて最近の日本の経験を見てみると、インフレというものの性質がかなり解るように思います。
今回は、1の通貨の量を増やせばインフレになるかどうかという事を見てみます。

 上の1番目です。通貨の量を増やすとどうなるか、本当にインフレになるのか、というのは、プラザ合意(1885年)後の日本の金融政策を見ると、何となく解るような気がします。
 確かにプラザ合意(1985)から1990年まで、急激な円高による内需の失速を補うようにとのアメリカの意向を受けたのでしょうか、その辺の事情は良く解りませんが、「前川レポート」「新前川レポート」なども出されて、「内需拡大」「労働時間短縮」が喧伝され、その理由として、日本人の生活は貧しい、世界からは「ウサギ小屋に住む働き中毒」といわれて来ているなどと言う論議が蒸し返されました。

 政府、日銀は、国内需要を増やそうとしたのでしょう、マネーサプライ(M2+CD)は1884から1990年の6年間に約1.8倍に増えました。経済成長は実質でこの間1.3倍にしかなっていません。日本中はお金がジャブジャブでした。銀行はこぞって土地融資に狂奔しました。ところがこの間、消費者物価指数は6年で僅か9パーセントしか上がっていません。貨幣数量説は嘘なのでしょうか。しかし確かに上がったものはありました。実はこの間上がったのは、資産価値、特に地価でした。土地バブルです(当ブログ、2008年4月「キャピタルゲイン」と「インカムゲイン」>参照)。

 土地バブルは地価のインフレで消費者物価のインフレではありません。この経験から解ることは、無闇に通貨の量を増やして見ても、そのときに国民が取る行動によって、その効果(インフレの中身?)は変わってくるということです。

 次回は、2番目の輸入インフレについて、われわれの経験を見てみたいと思います。