tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

付加価値の分析 その5:資本生産性を上げるには

2014年07月27日 09時41分16秒 | 経営
付加価値の分析 その5:資本生産性を上げるには
 付加価値生産性の第2公式から、付加価値労働生産性を上げるには、①資本生産性を上げる、②労働の資本装備率を上げる、の2つが必要という事が見えてきました。

 今回は資本生産性を取り上げてみましょう。
 資本生産性では、一般的には企業が活用しているすべての資本「総資本」の生産性を見るわけです。総資本はご承知のように、企業のバランスシートの資産合計(=負債・資本合計)です。
 つまり、企業が使っている「運転資金」「設備資金」、言い換えれば、「流動資産」「固定資産」の合計です、企業はそれだけの資本を「寝かせて」仕事をしているわけです。ですから、流動資産を出来るだけ圧縮する、設備投資を出来るだけ効率活用するといったことが重要になります。

 流動資産を圧縮する為の常套手段は、売掛金の早期回収と、棚卸資産の圧縮です。もちろん売掛金の早期回収は、売掛期間を長くして販売促進をやるといった努力と裏腹の関係になりますので、それぞれの場合のメリット・デメリットを比較秤量する必要があります。

 棚卸資産の圧縮は、 トヨタ方式といわれるJIT(ジャストインタイム方式)、製造期間の短縮などの積み重ねで可能になります。JITは、リーン生産方式などともよばれ、世界的に取り組まれています。

 固定資産の効率活用は、工場関係とオフィス関係両方で取り組まれなければなりません。生産の場では設備のフル活用、8時間より16時間、24時間操業にすれば工場設備の生産性は上がります。しかしそれでは交代制で、作業員人が増える可能性があります。そこで自動化、省力化が重要になります。

 本社ビルやオフィスは中小企業よりも大企業の方が立派です、法人企業統計などで見ますと大企業の方が設備生産性が低いのが一般的な傾向です。立派な本社ビルなどを建てると、設備生産性はかなり下がります。

 小売業でも、デパートの建物とスーパーの建物とは全く違います。デパートは高価でも高級品、高額消費を目指すという事で、それだけ建物にもカネ(資本)を掛けます。スーパーは品物を安くするために、建物の建築単価を下げて、設備生産性を上げているわけです。

 資本生産性を上げるという事は、それぞれの目指す業態の中で、製品や商品の品質、顧客の要請や嗜好等との総合的バランスの中で、いかに少ない資本投下で目指す付加価値の生産を実現するかという事になります。
 いわゆる遊休資産などは適切に処分すべきです。

 かつて、土地神話のあった頃は、遊休土地の保有が地価上昇で最も有利な含み資産などと言われたこともありましたが、バブル崩壊以来、殆ど全て処分されてきました。付加価値生産性こそが企業の死命を制する指標という正常な経済社会の中では低い資本生産性は許されないでしょう。

 というのが企業経営の王道ですが、実は、資本生産性は、なかなか上がりません。例えば製造業で見ると設備投資の生産性(総資本のうち、設備投資(有形固定資産)だけの付加価値生産性を見たもの)は平成23年度までの10年間、景気変動による変化はありますが、71%ほどでまったく変わっていません。これは例えて言えば、2倍の効率の上がる新鋭機械を買うと値段も2倍だといったことによるようです。
 ですから資本生産性の方は、大きくは上がらなくても、下げないように最大限努力をするといったことになるのでしょう。
 そこで、付加価値生産性向上のためには、次回取り上げる「労働の資本装備率」が大変重要になってきます。


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