tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

付加価値の分析 その7:資源の希少化と資源生産性

2014年07月29日 09時50分30秒 | 経営
付加価値の分析 その7:資源の希少化と資源生産性
 通常、付加価値生産性の分析は、これまで述べて来た2つの公式で完了です。しかしここでは、最近の資源問題を意識して、「第3公式」を考えてみました。
 第1公式は付加価値生産性に売上高を介在させたもの、第2公式は資本を介在させたもの、そして第3公式は、「資源」を介在させたものです。
 したがって、第3公式はこうなります。

 第3公式  付加価値生産性 = 付加価値/資源使用量 × 資源使用量/従業員数

 ここで使用資源量は「額」ではなく「量」です。資源の価格上昇を反映させないためです。
   
「付加価値/資源使用量」 は資源の生産性
「資源使用量/従業員数」は1人当たりの資源使用量。つまり、資源の制約状況を示します。

 値上がりする化石燃料、さらに典型的にはレアメタル、レアアースなどが分析対象になります。一般論的に言えば、ここでは第2項の希少資源の1人当たりの資源使用量は、減りこそすれ増えることはありません。従って、付加価値生産性を上げるためには、「資源の生産性」を上げる以外はないことになります。
 さらに、ますます資源が減るのであれば、それ以上に資源の生産性を上げるしかありません。

 日本は世界的に見ても、この分野では高いパフォーマンスを上げて来ています。すでに「省資源・省エネ」は日本経済成長のためのキャッチフレーズになっていますし、中国の資源戦略でネオジムのようなレアアースが不足してくる中で、ネオジムの使用量10分の1で同等の磁力を確保できる磁石の開発など素晴らしい実績があります。

 また、一人当たり資源の供給量に制約がある場合は、資源における材料転換への取組が果敢に行われています。代表的な例は、化石燃料に代わる再生可能エネルギーの開発でしょう。太陽光や風力、海水利用などでの電力生産、トウモロコシから始まり、多様な植物のアルコール化、ミドリムシによるジェット燃料の生産などなどです。

 こうした新しい取り組みのベースにあるのは「第2公式」です。「労働の資本装備率」をいかに高めるか、それにはすでに述べましたように、企業がより多くの利益を蓄積し、それを技術開発、R&D,生産設備に具体化して現実の成果を出すといったプロセスが必要になります。

 こうした困難なブレークスルーを必要とする時代には、企業はより多くの技術開発のための資本投下を必要とし、その確保のために、より大きな利益を上げることが要請されるのです。
 現実のプロセスでは、利益は、付加価値を人件費に配分した後の残りです。人件費は春の賃金交渉で決まり、それを払った結果、翌年の3月に、その期の利益が確定するのです。しかしそれでは「成り行き経営」ですから、「付加価値、人件費、利益」の関係を確りと「経営計画」の中で策定し、研究開発、技術開発に備えなければなりません。

 その意味では「 労働分配率」(人件費/付加価値)の適正値というのは、企業環境、社会からの企業への要請によって変わらなければなりません。労使間でそうした高度な話し合いが出来るのは、広い世界でも日本ぐらいではないかと私は思っています。
 
 以上、このブログのメインテーマとする、付加価値、高付加価値化、付加価値生産性などについて述べて来ましたが、次回は総まとめをしたと思います。