tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

金融工学の欺瞞

2009年07月20日 10時44分49秒 | 経済
金融工学の欺瞞
 日本でも、かつてバブルの時代に「理工系の製造業離れ」がいわれました。当時は、何か勿体無い、人材の無駄遣いではないかといった印象で語られていたものです。

 今になってみれば、本来、技術革新に関わり、モノづくりという実体経済の世界でその能力を発揮し、より豊かで快適な社会の創造に参加して欲しいと期待されている人たちが、社会の富(GDP、付加価値)の「生産」ではなく、 、その「移転」を業とする分野に就職することは、社会にとって勿体無いことだとする意見が多いでしょう。

 アメリカ発の世界金融危機が現実に起こり、その背後にあったのがいわゆる「金融工学」だということが広く知れ渡った今、こうしたキャリア形成、社会における人材配置の問題点も、多くの人々の目に明らかになってきました。

 NHKの番組「マネー資本主義」でも金融工学をテーマに取り上げていましたが、金融工学でいくら複雑な確率論や計算式を駆使してみても、経済活動におけるリスクはゼロになるものではありません。
 実は、金融工学の駆使によって、原因と結果の関係がわかりにくくなればなるほど、人間はリスクに気付くのが遅くなり、リスクがどうしようもない程巨大になってはじめて気が付くという最悪の状況をもたらすのが現実に起こったことなのです。

 この現実を理解した人(頭脳)は、金融工学の世界から去り、相変わらずリスクの分散と極小化の熱に浮かされている人たちは、今でも巨大災害のリスクの低減などを考えて、投機資金を集めているとのことですが、
① 巨大災害は常に違った形で起きるので、過去のデータを集積しても、将来のリスクを推計できるとは限らない。
② 巨大災害のリスクは、投機の失敗で負担(注)するものではなく、災害を免れた人の善意で負担すべきもの。
③ 今回の巨大損失の穴埋めを新しい分野の金融商品で考えているに過ぎない。
など、計算式を駆使しなくても、その問題点がもう、多くの人に、解ってしまっているのではないでしょうか。

 折角、天が与えてくれた優れた頭脳ですから、本当に世のため人のたまに役立つ使い方をするようなキャリア形成が望まれるところです。

   (注)金融工学の世界はゼロサムですから、災害の損失を金融工学で埋め合わせた人がいれば、同じ額を金融工学で損をして、結果的にその人が災害の損失を負担したということになる。


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