tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

食糧価格とマネー資本主義  (3)金融工学の発展

2011年03月01日 11時24分16秒 | 経済
食糧価格とマネー資本主義  (3)金融工学の発展
 1960年代は、世界中が第二次大戦からの復興ということで、実体経済の成長発展に傾注しました。中でも敗戦国、日本と西ドイツの成長は目覚ましいものでした。
 しかし、アメリカの実体経済が次第に力を失い、1971年ニクソンショックで基軸通貨ドルが金(きん)と切り離され、変動相場制の下でアメリカの経常赤字が拡大するにつれて、アメリカはインカムゲインの不足をキャピタルゲインで補わざるを得なくなり、マネー資本主義に力を入れ始めたようです。

 こうしてアメリカ中心に、いわゆる金融工学 が発達することになります。
 マネー資本主義は、モノや証券、債券、通貨などの価格の変動で利得(gain)を得ることが目的ですから、価格変動(ボラティリティー)が命です。前々回の「株屋殺すにゃ 刃物はいらぬ・・・・・」の世界になるわけです。

 金融取引の原点としての信用、先物をベースに、レバレッジを大きくし、種々のデリバティブ(派生)商品を開発し、巨大な投機資金によるマネーゲームの世界を作り上げ、値動きさえあれば、値上がりでも値下がりでも利得が得られるシステムの構築を進めてきています。

 信用や先物というのは、現物の取引の価格の変化によるリスクをヘッジ し、実体経済の取引をスムーズにするための仕組みとして生まれたはずですが、レバレッジを大きくすれば、単なるヘッジではなく、ヘッジの何倍かの利得(何倍かの損失)を計上することが可能になります。
 こうして、現物取引のスムーズ化のための手段は、リスクのある投機、ギャンブルの世界に変貌していくことになりました。

 ギャンブルで最も望ましい立場は胴元です。胴元になるのには、巨大な資金を持つこと、ルールの管理者になることが必要です。そして一度手を染めると、なかなか実業、実体経済の世界には戻れないようです。こうして多くの大胴元、小胴元が資金の拡大にしのぎを削る状態が進んでいるように思います。

 こうした巨大なマネーが食糧価格を始め、原油その他の資源供給の過不足、債券や通貨市場の価格変動を、投機的売買によってより大幅 なものにし、キャピタルゲインを極大化しようと、実体経済の正常な活動を阻害、時には破壊してまで跳梁する状態です。

 金融市場の目的は、需給の安定のために適切な資金供給を行い、価格の安定、経済の安定的発展に貢献することでしょう。その金融市場を、本来の目的とは全く違ったマネー資本主義という鬼子の活躍の場に変貌させ、資本主義経済の正常・健全な発展を阻害するようなプロセスが、サブプライム、リーマンショック以降もその失敗の教訓にも学ばず、さらに進みつつあるのではないでしょうか。

  G20、IMF、世銀、などの役割と責任はますます重くなるようです。


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