昨日、標記統計が発表になりました。
4-6月期は、これまでのところ、企業が、新型コロナの影響を最も受けた時期だったので、通常の経営状態だった前年同期に比べて、どのくらいの変化があったかを見、今後について考える参考にしてみたいと思います。
検討するのは、売上高、売上原価、管理・販売費、営業利益、経常利益、付加価値(簡便的に人件費+経常利益)、それに、バランスシートの主要項目の変化についても見てみたいと思います。
景気全体との関連を考えるのが主眼ですので、全産業(除金融保険)・全規模、で分析は対前年同期の変化率が中心です
損益計算書を見ますと
売上高17.7%減少、売上原価17.8%減少、販売・管理費7.8%減少、営業利益64.8%減少、経常利益48.5%減少、付加価値20.7%減少(内訳は、人件費7.8%減少、経常利益48.5%減少)という事ですべて減少です、
バランスシートの方は、
資産の部、流動資産0.1%減少、固定資産0.7%減少、総資産0.3%減少
負債の部、流動負債0.2%減少、固定負債3.3%増加、純資産(自己資本)1.3%減少
という事で、固定負債を除いてやはりすべて減少です。
まず、損益計算書の方ですが、変化の原因のすべては売上高の17.7%の減少で、企業としては変動費の多い売上原価はほぼ同じぐらい減らしています。この売上げ減に対する仕入等の迅速な対応は驚異的です。しかし間接部門の対応はそう簡単ではないわけで、販売・管理費は7.8%の減少にとどまっています。
人員も調べられていますが6.5%の減少で、人件費は7.3%の減少、雇用重視の日本企業ですから、これでもかなり無理をしているということでしょう。この間接部門のコスト削減は、この後も長期のコストダウン努力になる可能性は大きいと思います。
結果的に営業利益は64%減で約3分に1に落ち、営業外収益(利子配当など)で多少埋め戻しても経常利益は48.5%減、約半分に落ちています。
付加価値の20.7%の減少は売上高の減少より大きく、付加価値率の高いサービス部門のダメージが多かったからと思われます。付加価値の減少はちょくせつGDPに影響します。
しかし、総じてみて、2割近い売上げ減で、付加価値率も下がって、利益は半減したものの、そこで止めたというのは、企業経営の柔軟性の高まりを示しているように思われます。
自己資本比率の向上の結果、営業利益より経常利益が高くなっていることはその代表的な指標でしょう。
バランスシートの方は、その性格上、急な変化はありませんが、総体的にスリム化の動きで、増加しているのは固定負債のみです。コロナ禍での収益低下による純資産の減少1.3%を考慮(予測)しての(余裕)資金の準備でしょうか。
中身は、社債、金融機関長期借入金が太宗です。
関連して調査されている設備投資(ソフトウェアを含む)の動きは対前年同期比11.4%減ですが、売り上げ減より落ち込みは小さいわけで、企業の長期見通しを示していると思われます。
いずれにしても、今回は、新型コロナという緊急異常事態で、ここは我慢してコロナ後になれば・・、という短期的緊急避難行動も多分にあったように思われるので、企業としては短期のコスト削減と中・長期の設備投資の両方を、両睨みして、その対応を取っていると思われます。
しかしその後の状況を見ますと、コロナ後までには、かなり時間がかかるという見方もあります。コロナの第2波が比較的深刻で、ワクチンも実用化には時間がかかるという意見も多いようです。
いずれにしても、初体験の異常な事態です。短期的には何とか凌げても、長期化すると、企業の基礎体力が弱まることは当然ですから、コロナの早期征圧への注力が、政府の政策努力も含めて最も望まれるところです。