tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

今こそ日本型雇用の知恵に学ぶべき

2020年04月02日 16時07分58秒 | 労働
今こそ日本型雇用の知恵に学ぶべき
 新型コロナウィルスの猛威が続いています。これから本格的に、実体経済への影響が出て来るのではないでしょうか。

 そのとき何が起きるかは想像に難くありません。最も恐ろしいのは「雇用の削減」が現実になることでしょう。

 雇用は経済活動が活発になるとき発生します。経済活動は人が活発に動き回り、集まり、そこに多様な需要が発生する時、種々の財やサービスが必要となることでその必要(需要)を賄うために活発化するのです。

 新型コロナの影響で、外出や集会が制限され、多くの人が家に籠れば、多様な需要は減り、企業は顧客を失い、売り上げは減少、企業の人を雇用する力は失われます。
 今、それが現実になるつつあり、それがいつまで続くのか先が見えていません。

起きているのは、まず非正規雇用の削減です。同様フリーランサー(自営業)も真っ先に痛手を受けます。
比較的に、守られているのは、公務員(非正規は別)、企業の正規従業員という事になります。
しかし、この新型コロナ禍がさらに長引けば、余裕の少ない企業から正規従業員の削減も当然起きて来るでしょう。(公務員は、原則、懲戒解雇以外はないようですから最も安全です)

 すでに非常事態となりつつある欧米諸国では、日本でいう非正規が一般的で、雇用の削減も比較的容易ですから、そうした失職者に対しての対策が喫緊の課題になり、自宅待機でも相当額に現金給付といった緊急対策に巨額の予算を計上する事態になっています。

 アメリカ政府は、新型コロナ禍に対して2兆ドル(日本の国家予算の2年分)の支出を決めましたし、デンマークではこの対策にGDPの13%を使うとのことです。
 アメリカの2兆ドルは、もともと赤字国ですから借金の増加になるのでしょうし、デンマークの政府負担も、いずれ国民負担の増加で賄われるのでしょう。

 もちろん新型コロナ禍のような異常事態は、最終的には政府の責任で対処しなければならない問題ですが、現実の雇用問題という場になりますと、雇用主である企業も、相応の役割を果たすべきで、恐らくそれが社会の安定に大きな役割を果たすのではないかと思われます。

現状も含め、常に社会の安定の基盤として必要な「雇用の安定」として考えれば、労使、特に経営者(雇用主)の果たす役割が何時の時代も大変重要ではないかと思う所です。

 今回の場合も政府から雇用調整助成金の活用方針が出されています。この財源は、雇用保険料(労使折半)に上乗せして企業だけが一定料率で支払っているものです。

 こうしたものも、経営者が雇用について出来るだけの配慮をするといった日本的な雇用観から生まれたものと思いますが、あるべき雇用制度、雇用慣行といった点についても、戦後の日本の経営者は、「雇用が第一義」とう言葉のもとに、独特の知恵を働かせてきたように思います。

 今、働き方改革の中で、政府はこうした歴史はすっかり忘れて「雇用流動化」こそが目指すべき方向と考えているようですが、今日のような「雇用非常事態」の中で、改めて、戦後の日本の経営者が目指した「日本的雇用の在り方」の知恵を学んでもいいのではないと思う所です。長くなるので、以下次回にします。