tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

新型コロナ禍と「働き方改革」

2020年04月22日 14時55分09秒 | 労働
新型コロナ禍と「働き方改革」
 新型コロナウィルスが世界で猛威を振るう中で、企業経営、雇用問題といった「働き方改革」に直結する面でも、いろいろな課題が見えてきています。

 安倍政権が熱心に推進している「働き方改革」についてもその中で推進しなければならない問題と、推進したら「とんだこと」になる問題があることが見えて来ました。

 推進しなければならないのは、日々の仕事のやり方についてITC の活用なども含め、多様な「働き方」の可能性を開発し、変化する客観情勢に合わせて、今回のような場合でも効率的な対応ができるような仕事・働き方のあり方でしょう。

 営業時間の短縮、それに応じた労働時間短縮、テレワーク、ネット会議、などなど、経営環境の変化があれば、多様な対応が必要でしょう。
 こうした「仕事の仕方」における多様な対応は、今回の経験で、機器やシステムの開発、それらを巧く使いこなす馴れやノーハウは平時でも役立つものではないでしょうか。

 逆に推進してはいけない側面は、雇用の流動化でしょう。
 端的な例を挙げれば、東京都内で従業員全員を解雇したタクシー会社がありました。社長は、仕事が減って、まともな給料は払えないから、失業保険をもらった方が得だろうなどと言っていたようですが、従業員は不安と不満で東京地裁で係争に入っています。

 もう1つの例は仙台のアイリスオーヤマです。社長は「コロナでも社員減らすな」(日経産業新聞見出し)と置いうことで「マスク生産」などに進出、「従業員を削減すれば、路頭に迷う人が出るばかりでなく、コロナ後の立ち上がりが遅れる。雇用調整助成金などを活用して雇用は維持すべきだ」とのことです。

 振り返れば、戦後の日本の多くの経営者は、不況時には会社ぐるみで活路を探し、工場の草取りでも、事務所の塀の修理でもして給料を払うといった形で「雇用維持」に努力するのが企業の一体感を育てる源泉だとの気概を持っていました(有名企業の社史などをご覧ください)。

 翻って今のアメリカを見れば、この間まで史上最低の失業率を誇っていたのですが、コロナ騒ぎの今2000万人を超える、史上最高の求職者が出ているとのことです。

「働き方改革」が目指す、雇用の流動化の推進、職務中心の(人間中心でない)雇用制度では「雇用の安定」、ひいては新型コロナの蔓延のような場合の「社会の安定」は望むべくもないという事ではないでしょうか。

 先に「 転んでもただでは起きるな」と書きましたが、新型コロナかという試練の中で、日本人、就中、日本の労使は、「雇用の安定」と「社会の安定」という最も重要な課題も含めて、より多くのことを学び、それを新たな知恵に変えて、コロナ禍の中でもコロナ後に備えることに思いを致すべきではないでしょうか。