tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

今こそ日本型雇用の知恵に学ぶべき(続き)

2020年04月03日 15時40分16秒 | 労働
今こそ日本型雇用の知恵に学ぶべき(続き)
 戦後の日本の雇用は、深刻な失業時代から出発しました。
 全国の主要都市はほとんど灰燼に帰し、軍需工場を中心に生産設備は破壊し尽くされていました。都市機能はマヒ、多くの国民は飢餓の中で帰農、土地を持たなくても食料のある農村へ空襲を避けての疎開のままでした。(我が家もまさにそうでした)

 そこに外地からの大量の帰還兵、引揚者が戻って来ました。もともと国内の企業で働いていた方々ですが、徴兵その他で戦地に展開し、終戦とともに帰国した人達です。
 もちろん、元働いていた工場などは壊滅です。

 日本の企業は、こうした人たちの復職を何とか面倒見るべく努力したのです。戦後の混乱の中で、元わが社の従業員をはじめ「安定した雇用の確保」が人心の安定、社会の安定のために最も必要という意識が、基本だったと思います。

 更に、戦後の民主化運動の流れもあり、過激な労働組合運動への対応という指摘もありますが、そうした中で、日本の経営者は、 職員・工員などの身分制度をなくし、全従業員を「社員」として一本化したのです。

 日本経営者団体連盟「日経連」を、戦後の創立からオイルショックの時期までリードした桜田武(日清紡社長・会長)が誇りとしていたことはすでに書きました。
 
 今、非正規社員が雇用者の4割近くを占め、新型コロナ化の中で、多くが初l区を失う中で考えるのは、家計を支える主たる働き手で、正規社員として働きたい人が、「社員(正社員)」としての身分を保証されていれば、社会の安定に大きく役立っているのではないかと考えるところです。

 勿論、経営に非常事態においても、正社員の雇用を確保することは企業にとっては大変なことでしょう。しかし、日本企業は、戦後その努力を労使の責任意識でやって来ています。

 それが崩れたのは、プラザ合意と、リーマン・ショックへの緊急避難、それを政策として進めた政府の雇用政策の結果という事でしょう。
 企業の一部には、正社員化の復元もみられますが、政府は新たな「働き方改革」で雇用の流動化という真逆な政策を推し進めているという現状は極めて問題でしょう。

 今は昔と違い豊かな時代ですから、自由な働き方を望む方も多くなっています。現実に雇用者の2割ぐらいはそうした方がたでしょうか。
 しかし家計を担い、責任を持つ立場の方は企業として正社員として、積極的に雇用安定の努力をするというのが伝統的な日本型雇用管理だったと言えるでしょう。

 経営者も、そうしたっ社会貢献の努力に誇りを持ち、労働組合も、雇用の安定を第一義と考える労使共通の意識が日本経済社会の安定を、政府に頼るだけではなく率先して支え、「労使は社会の安定帯」といわれる労使関係を作ってきたのだと思います。

 今日のニュースでは、アメリカでは今1千万人が雇用を求め、失業率は過去最低水準の3%台から10%を超えるのではないかという状態だそうです。

 何もかも政府に頼るというシステムは、政府の顔は立てますが、結局は政府の無駄も含めて、国民負担になるのです。

 日本型雇用システムは、いわば「治にいて乱を忘れず」の識見を持ち、社会の安定を担う民間の能力を高める知恵を秘めていたのでしょう。

 今の状態は、平成不況の中で、政府も企業も、かつて試練の中で培った日本型雇用の知恵を忘れ、単純に欧米並みを善しとするところから発する部分も大きいということに、改めて気づくべきではないでしょうか。