相続対策として,祖父又は祖母から孫への一代飛ばしの遺贈を内容とする遺言がされることがあるであろう。
遺言者A,Aの子B,Bの子Cという関係において,AがCに不動産を遺贈する旨の遺言をしたところ,Bが死亡し,その後にAが死亡したという場合には,Aの相続において,CはAの代襲相続人であることから,Cは遺贈の登記の申請義務を負う(不動産登記法第76条の2第1項後段)し,Cは,単独で登記の申請をすることができる(不動産登記法第63条第3項)。
しかし,Aが死亡した時点でBが健在であれば,CはAの相続人ではないことから,Cは遺贈の登記の申請義務を負わないし,Cは,単独で登記の申請をすることができない。Cは,遺言執行者又はAの共同相続人全員を登記義務者として共同申請をすることになる。
ところで,Aが死亡し,遺贈の登記を申請する前に,Bが死亡した場合はどうか。
Aの遺言がなければ,Cは数次相続によって後発的に「相続により所有権を取得した者」として相続登記の申請義務を負う(不動産登記法第76条の2第1項前段)ものであるところ,自らに対する「遺贈」がある場合には申請義務を免れるのは背理であるように思われる。
確かに,遺贈は,意思表示に基づく物権変動であり,「相続を契機とする承継よりも売買等による承継に近い面がある」(村松秀樹ほか「Q&A令和3年改正民法・改正不登法・相続土地国庫帰属法」(金融財政事情研究会)265頁)ことは否定できないが,孫への遺贈は,主に相続対策としてされるものであり,「相続を契機とする承継」と限りなく同視できるものである。
事後的に相続人たる地位を取得することとなった者(例えば,先順位の相続人の放棄により相続人となった者や,代襲により相続人となった者)に対する遺贈についても,申請義務が及び,単独申請が可能であると解されている(後掲中間試案の補足説明184頁)ことからすれば,Aが死亡し,遺贈の登記を申請する前に,Bが死亡した場合についても,Cは後発的に相続人たる地位を承継しているのであるから,同様に解するのが合理的ではないだろうか。
また,「相続人以外の第三者が受遺者である遺贈については,登記原因証明情報として遺言書等が提供されることは同様であるが,被相続人の財産であった不動産の所有権の移転の登記が相続人の関与なくされることを認めると,相続人が受遺者である遺贈のケースとは異なり,遺贈の真正性に疑義のある事案が生じてしまう懸念も払拭することができないとの指摘があることから,その対象外とする」(後掲中間試案の補足説明184頁)と考えられている点についても,孫Cに対する遺贈であり,Cが後発的に相続人たる地位を承継している場合においては,相続人が受遺者である遺贈のケースとほぼ同視することができ,遺贈の真正性に疑義のある事案はほぼ生じないであろう。
したがって,遺言者Aが死亡し,受遺者である孫C(Aの子であるBの子)が遺贈の登記を申請する前に,Bが死亡した場合についても,Cは後発的に相続人たる地位を承継しているのであるから,Cに遺贈の登記の申請義務が及び,またCの単独申請が可能であると解すべきである。
cf. 民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する中間試案の補足説明
https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00007.html
遺言者A,Aの子B,Bの子Cという関係において,AがCに不動産を遺贈する旨の遺言をしたところ,Bが死亡し,その後にAが死亡したという場合には,Aの相続において,CはAの代襲相続人であることから,Cは遺贈の登記の申請義務を負う(不動産登記法第76条の2第1項後段)し,Cは,単独で登記の申請をすることができる(不動産登記法第63条第3項)。
しかし,Aが死亡した時点でBが健在であれば,CはAの相続人ではないことから,Cは遺贈の登記の申請義務を負わないし,Cは,単独で登記の申請をすることができない。Cは,遺言執行者又はAの共同相続人全員を登記義務者として共同申請をすることになる。
ところで,Aが死亡し,遺贈の登記を申請する前に,Bが死亡した場合はどうか。
Aの遺言がなければ,Cは数次相続によって後発的に「相続により所有権を取得した者」として相続登記の申請義務を負う(不動産登記法第76条の2第1項前段)ものであるところ,自らに対する「遺贈」がある場合には申請義務を免れるのは背理であるように思われる。
確かに,遺贈は,意思表示に基づく物権変動であり,「相続を契機とする承継よりも売買等による承継に近い面がある」(村松秀樹ほか「Q&A令和3年改正民法・改正不登法・相続土地国庫帰属法」(金融財政事情研究会)265頁)ことは否定できないが,孫への遺贈は,主に相続対策としてされるものであり,「相続を契機とする承継」と限りなく同視できるものである。
事後的に相続人たる地位を取得することとなった者(例えば,先順位の相続人の放棄により相続人となった者や,代襲により相続人となった者)に対する遺贈についても,申請義務が及び,単独申請が可能であると解されている(後掲中間試案の補足説明184頁)ことからすれば,Aが死亡し,遺贈の登記を申請する前に,Bが死亡した場合についても,Cは後発的に相続人たる地位を承継しているのであるから,同様に解するのが合理的ではないだろうか。
また,「相続人以外の第三者が受遺者である遺贈については,登記原因証明情報として遺言書等が提供されることは同様であるが,被相続人の財産であった不動産の所有権の移転の登記が相続人の関与なくされることを認めると,相続人が受遺者である遺贈のケースとは異なり,遺贈の真正性に疑義のある事案が生じてしまう懸念も払拭することができないとの指摘があることから,その対象外とする」(後掲中間試案の補足説明184頁)と考えられている点についても,孫Cに対する遺贈であり,Cが後発的に相続人たる地位を承継している場合においては,相続人が受遺者である遺贈のケースとほぼ同視することができ,遺贈の真正性に疑義のある事案はほぼ生じないであろう。
したがって,遺言者Aが死亡し,受遺者である孫C(Aの子であるBの子)が遺贈の登記を申請する前に,Bが死亡した場合についても,Cは後発的に相続人たる地位を承継しているのであるから,Cに遺贈の登記の申請義務が及び,またCの単独申請が可能であると解すべきである。
cf. 民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する中間試案の補足説明
https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00007.html