例えば,相続人が配偶者(妻)と長男の計2人である場合に,居住用不動産を長男に相続させようというとき,その仲が円満であったとしても,長男が配偶者(妻)よりも先に死亡する可能性を考慮すると,配偶者(妻)に配偶者居住権を取得させることは不可欠であると思われる。
配偶者(妻)が長生きすることにより,長男の方が先に死亡して,長男の相続人がその妻と子らである場合,その仲が円満であればよいが,いわゆる嫁姑の不仲の関係であるとき,配偶者(妻)の居住の権利は,配偶者居住権によって守られていることが望ましい。いきなり,「お義母さん,出て行ってください」と言われることがないようにである。
また,長男の相続に関する相続税の問題については,下記のとおりであり,配偶者居住権による評価減は,重要なポイントになろう。
〇 配偶者より先に所有者が死亡した場合
配偶者より先に居住建物の所有者が死亡した場合には、居住建物の所有権部分について所有者の相続人に相続税が課されます。この場合、配偶者居住権は存続中ですので、所有者の相続開始時において上記(2)③ロの所有権部分と同様に評価することが考えられます(居住建物の敷地についても同様です。)。
なお、居住建物の所有者から所有権部分の贈与があった場合も同様に贈与税が課税され、その課税価格は贈与時点における居住建物の評価額から配偶者居住権部分の評価額を控除した金額とすることが考えられます。
cf.
令和元年7月4日付け「配偶者居住権が消滅することとなった場合の課税関係」
よって,配偶者に配偶者居住権を取得させることは,ほぼ不可欠といえるのではないか。