小柳春一郎獨協大学法学部教授「不在者財産管理制度見直しの方向」(土地総合研究2018年夏号)
http://www.lij.jp/html/jli/jli_2018/2018summer_p089.pdf
我妻榮教授の論考の紹介として,
「(1)本人が、その意思に基づいて財産管理人を選任するときは、自分の個人的な利益のために財産管理人を利用するのだから、代理人として管理させることが、最も普通であり、かつ適当でもある。
(2)これに反し、その他の場合に、財産管理人を代理人とすることの当否は疑問である。けだし、 代理は、本来、特定の個人の利益をはかることを目的とする制度だからである。しかるに、民法は、すべての法律上の財産管理人を代理人としている。不在者の財産管理人、相続財産の管理人、相続人不存在の財産管理人などは、いずれも代理人であることは、法文の上から明らかである(28条・918条3項・956条)。しかし、右の場合における財産管理人は、その財産の主体たる特定の個人の利益のために管理するというよりも、むしろその特定の財産そのもののために――正確にいえば、特定の財産に利害関係を有するすべての人のために――これを管理するものである。のみならず、これらの場合は、――不在者は管理中に死亡しまたは失踪宣告を受けることが多く(〔121〕参照)、相続人は変更することが予想される(918条・939条・955条・957条・959条など参照)のだから――その財産の主体は不明または不確実である。従って、その管理人を特定の者の代理人とすることは、甚だしく擬制的色彩を帯びる。かような場合は、むしろ、管理人が、管理人の資格において(管理人たる自己の名において)管理行為をなし、その財産に属する権利関係の変動を生じ、本人はただ財産帰属者たる地位においてその効果を受けるものとなすことが、はるかに真実に近いように考えられる。……擬制をあえてしてまで、個々の人格者を想定し、その代理人とする理論は必要なものではあるまい。特定の財産とその管理行為とについて、その社会的作用に基づいて独自の意義を認め、個々の人格者を単なるその帰属者とみる理論を構成すべきものと思う。」(我妻榮『民法総則(民法講義Ⅰ)』(岩波書店、1965年)331頁)
上記は,財産管理制度の重要な目的が,「特定の財産そのもののために――正確にいえば、特定の財産に利害関係を有するすべての人のために――これを管理する」ものであることを論じているようである(上掲・小柳)
なるほどね。