司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

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会社法第797条第3項の規定による通知又は同条第4項の公告(補遺)

2019-11-12 21:51:48 | 会社法(改正商法等)
1.会社法第797条第3項の通知又は同条第4項の公告
 吸収合併の存続会社において,簡易合併の要件を満たす場合であっても,その株主に対して通知又は公告をする必要がある(会社法第796条第3項参照)。

cf. 平成29年3月8日付け「吸収合併における株主に対する通知・公告の期間短縮・省略と簡易合併・略式合併」

 この場合の公告は,定款で定める公告方法によって行う。


2.1の通知又は公告における「消滅会社が有する存続会社株式に関する事項」
 会社法第797条第3項の通知又は同条第4項の公告においては,「吸収合併をする旨」「消滅会社の商号及び住所」のほか,「承継する吸収合併消滅会社の資産に吸収合併存続株式会社の株式が含まれる場合には,当該株式に関する事項」も記載しなければならない(同条第3項かっこ書)。

※ 「甲は乙の権利義務全部を承継」の部分を「甲は乙の権利義務全部(甲株式〇〇株を含む)を承継」と記載すればよい。

「承継する吸収合併消滅会社の資産に吸収合併存続株式会社の株式が含まれる場合」には,存続会社は,自己株式を取得することになり,これは,会社法第155条第11号により許容されているものの,存続会社の取締役は,株主総会において,この株式に関する事項を説明しなければならない(会社法第795条第3項)ものとされ,当該事項を会社法第797条第3項の通知又は同条第4項の公告に含めるものとされている(相澤哲編著「立案担当者による新会社法の解説」(商事法務)207頁参照)。


3.1の公告を振替株式発行会社が行う場合
 振替法第161条第2項に会社法の特例規定が置かれており,会社法第797条第3項の規定にかかわらず,振替株式を発行している株式会社は,この規定による通知に代えて,当該通知をすべき事項を公告しなければならない。

cf. 平成22年5月11日付け「反対株主の買取請求のための「公告」等」

 さらに,この公告には,買取口座も記載する必要がある(社債,株式等の振替に関する法第155条第2項)。ただし,簡易合併の場合には,この記載を要しない(同条第1項ただし書)。簡易合併における反対株主は,買取請求権を有しないからである。
※ 平成26年改正会社法関係(平成27年5月1日施行)

 買取口座を記載した実例としては,下記のものがある。

cf. 株式会社ユビキタス
https://www.ubiquitous-ai.com/ir/gappei180417.pdf
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