私は九州の某ベンチャー企業との打ち合わせのために空路、福岡に向かうべく羽田空港を出発した。不幸にも胸にはSuicaを入れていたことを忘却していた私は、当然の如く、搭乗検査に引っ掛かった。
以下私(甲)と女性検査官(乙)との会話。
乙「すみません、もう一度お通りください」
甲「はい」
…ピンポーン…(ゲート式検査機の感知音)
乙「ポケットに、カード、名刺入れ類は入っていませんか」
甲「何もありません」
…手持ち探知機や手で再検査する…
…ジーッ…(検査官手持ち探知機の感知音)
乙「それでは、腕時計をお外しください」
甲「はい」
…X線通過専用トレーにDAY-DATE、118235をゆっくりと置き、乙がコンベア式自動X線通過機にこれを通過させる…
乙「はい、よろしいです」
甲「…?」
ここで私は自分の失敗に気づいた。ポケットにSuicaを入れていたことを。名刺入れでさえも反応するのにもかかわらずにである。第2にいつもは時計を外すよう、検査官から要求されず、検査官の手持ち探知機がロレックスにぶつからぬ様、気をつけていたにもかかわらず、外すよう指示され、意表を突かれ、咄嗟にトレーに置いてしまったことである。
検査官は必ずしも高級品の取り扱いには慣れてはいない、ましてロレヲタでも何でもない。基本的に彼ら彼女らは私が嫌悪する、国家に保護された「木っ端役人」の端くれである。それを咄嗟に判断できず、制帽を深々と被り、眼光しか確認できない女性検査官に乱暴に手渡されてしまった。大キズがついていたら空港警官の前で怒鳴ったであろうが…、品が悪いので止めた。今後はロレックスをハンカチに丁寧に包んでトレーに乗せることを教訓とした。
しかし、不思議なのだが私の胸にSuicaがあり、そこでジーッと探知機の反応音がしたのだから、腕時計まで外す必要があるだろうか。第2にロレックスをX線に通過させる必要性があるだろうか。Cal.3155の中に超ハイテク小型爆弾をDAY-DATE、118235の中に仕込ませていると、この女性検査官は私を判断したのだろうか。確かに私は『Die Hard』1のあのテロリストのような姿だったことは間違いないのだが…。
こういうときこそ、ミルガウスの方がより安心なのだが、機内で左下斜め45度の角度から見下げるとカッコいいロレックスなので、出張にはやはりゴールドロレックスでないと落ち着かない私なのであります。