〝ちょっと、マルノウチ、行ってくるから…〟
30年前から、ここ最近まで、私は、営業に行く前に社員にそう告げて、中古ロレックスを買うたびに
メンテナンスで〝マルノウチ〟に足しげく通った。
まるで、お布施を持参して、和尚のありがたい法話を聴きに新興宗教の総本山にでも行くかのように。
その、マルノウチが今月末を以て終了となる。
この郵船ビルに日ロレが移転してからどのくらいの年月かは正確には知らないが、警備員に日ロレから頂いた通行証を見せて
二階のトイレに行って、日ロレの背の高い白人社長の隣で用を足したこともあったっけな。
あの、ひんやりとした空間、高そうな生花を飾った受付ホールの一脚50万円以上する総レザーのフカフカのソファーに潜り込むように座り、
〇〇〇サマ、とツーんと、響き渡る様な荘厳さがなかなか日本の受付にはない教会のような雰囲気が大好きでした。
1990年代にまだ、サブマリーナとGMTの区別がつかない若かりし頃からいろいろな、問答を繰り返したが、円形脱毛症の受付嬢はいたが、不思議
と、大きな声で怒鳴る客なんていなかった。皆、かしこまって紳士淑女を装わなければいけない重い空気があった。
気さくな受付嬢も稀にいたが、次回来店した時はもうその姿はなかった。
いつしか、警備員の横の独立したインフォメーションブースに居た女性も消えてしまった。
ちょうど、マルノウチで、アンケートに回答した直後だった気もするのだが。
亡き父と2回ほど来店した、マルノウチは、思い出の彼方へと、いま旅立とうとしている。
さらば、マルノウチ。
もう二度と、キャバクラなんぞでは満たされない私の心のオアシスは無くなってしまった。
いつか、メーカーで私をロレックススイス本社へご招待していただければ幸でございます、笑
ありがとう、マルノウチ。
あと20年、ロレックスと走り続けたいと思います。
GMTノーマルブルーじゃなくて、メテオを待ってよかったです。