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平成28年度「北海道文教大学公開講座」を聴講して

2016-09-10 12:03:28 | 講演会、学成り難し・・・

北海道文教大学(鶴岡学園,恵庭市)の公開講座を受講した。本プログラムは,同大学が一般社会人を対象に生涯学習を支援する目的で実施する,公開講座である。学園創立75周年記念ということで,多岐にわたる49講座が設定されていた。その構成と内容は以下のとおりである。

「現代と人間」をテーマに,国際言語学科及びこども発達学科から5講座

「社会と言葉」をテーマに,国際言語学科及びこども発達学科から9講座

「健康と食,健康に過ごすために」をテーマに,健康栄養学科から7講座

「健康と医療,長寿を全うするために」をテーマに,作業療法学科,理学療法学科及び看護学科から19講座

「子育てと教育」をテーマに,こども発達学科及び作業療法学科から9学科

8月24日~9月10日に集中してカリキュラムが組まれ,講座選択制,事前予約制のシステムで実施された。テーマの設定を概観すると,大学が「地域と共生する学園」を目指して取り組もうとしている姿勢と熱意を強く感じた。

さて,筆者は以下の9講座を受講した。日程調整がつかず残念ながら受講できなかった講座も多い。聴講した講座はいずれも満足度が高いものであった。

◆8月24日「知って知らない日本語」(小西正人)

①日本語の文法(「です」の過去形が「でした」になるケースとならないケース,「ために/ので/から」の使い分け,日本語における述語の特徴),②日本語の音(アクセントの問題),③日本語の文字,④言葉の修得(試行錯誤説,間違い直し説,真似説,拡張説,赤ちゃん言葉説),⑤日本語の方言(東西方言差,北海道方言の変遷),⑥間違った日本語(「全然」と否定,「ら」抜き言葉)について解説された。日本語は難しいなあ・・・。

◆8月25日「Think Globally! グローバルに考える,今日の世界はどんな世界?」(Sarah Richmond,三ツ木真実)

私たちの知識は過去の体験やマスコミの報道に影響され,間違ってインプットされている場合が多い。世界を見る目も然り,移り行く真の情報を如何に入手するかが問われる。バイリンガルな能力,複眼的視点,グローバルな思考について思いを巡らす機会となった。

講義は英語と日本語で行われ,グループ討議型式で進められた。外国語から遠ざかること久しいわが耳は,講義が終わる頃になってようやく反応し始めた。

◆8月29日「多様性を尊重する社会,カナダに学ぶこと」(佐野愛子)

講師は,カナダなど海外生活や通訳の体験を通じて得たこととして,多様性を尊重する社会こそ成熟社会と言えるのではないかと語り,わが国におけるバイリンガル教育の重要性を指摘した。

◆9月1日「認知症の知識と家族ケア」(鹿内あずさ)

「高齢者に多い病気」概観から説き起こし,「認知症の原因疾患と行動の特徴」「診断・治療」「家族ができるケア」について解説された。認知症の人への関わり方,地域包括支援センターの活動実態等が情報提供された。

◆9月2日「キャリア・デザイン,図表で自分史を理解してみませんか?」(森谷一経)

このような研究領域があるのか? と感じながらの聴講だった。人生にはいろいろな節目があり,己の生き方を振り返る機会でもある。自分史を整理することは,人生の最終段階で重要な意味を持つのかもしれない。

◆9月5日「腰痛に対するリハビリテーション」(金子翔拓)

「腰痛の病態」「原因」「病態に適したストレッチング」について,写真と実技で解説された。以来,固くなった体を柔軟にしようと,15~30秒のストレッチを続けている。

◆9月8日「認知症になったらどうしよう・・・」(池田官司)

「認知症の定義と診断」「アルツハイマー型・血管性・レビー小体型・前頭側頭型の原因と症状」について解説し,介護の考え方を述べた。「認知症の世界を理解する,プライドを尊重する,感情を理解する」ことが重要であり,「指摘しない・議論しない・怒らない」ことが対応の原則であると指摘した。

◆9月9日「エゾナキウサギの生態と保護」(矢部玲子)

講師自身の体験を踏まえながら,エゾナキウサギの生態,保護活動の実際について述べられた。多くの方が,エゾナキウサギについて名前は知っているが,詳しくは知らないというのが実情だろう。北海道固有種であるエゾナキウサギ保護のためには,天然記念物指定などの方策が考えられるが,これもなかなか難しい。開発と環境保護の考え方が多様な中で,さてどうするのか?「緑が残って人類は滅亡した」とならないように。

◆9月9日「認知症予防と作業療法」(奥村宣久)

作業療法の意義について解説し,「歩くこと」(正しい歩き方)の提案があった。

一部の講座は恵庭市長寿大学の単位講座に指定されており,多くの受講者が詰めかけた。一方,一般講座の中には受講生数名という講座もあったが,講師の先生方は熱意を込めて語り続け,受講生は身を乗り出して聴講していた。大学当局が出席率をどう評価するか分からないが,次年度以降も多岐にわたるプログラムを設定して欲しいものだ。一聴講生の希望である。

平成27年度5講座,平成26年度4講座を加えると,本年度で18講座を聴講したことになる。公開講座を契機にして,初めて北海道文教大学の存在を認識し,そこで学ぶ若者たちの姿にも触れることが出来た。地元の高等教育機関による公開講座は有難い。

講座の多くは,片道40分の道程を歩いて通った。さすがに今年の暑さは尋常でなく,日陰を探しながらの通学であったが,最終日には「これで夏が終わった」と実感したのも事実である。

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