南米の国々,例えばブラジル,アルゼンチン,チリ,パラグアイ,ボリビア,ウルグアイは,日本から見ると大同小異と思いがちだが,我々が想像する以上にいろんな面で差異が大きい。経済的に同一圏として深い繋がりはあるが,経済力に差があり歴史的な背景も異なるため,国民性や文化に独自性がみられる。
アルゼンチンとパラグアイを比較してみよう。
アルゼンチン人は陽気に,賑やかに喋りまくり,心の底で「田舎者のパラグアジョ(パラグアイ人)・・・」と振る舞う。パラグアイ人は相槌をうちながらも,「お喋り軽薄なアルヘンチーノ(アルゼンチン野郎)・・・」と考える。
例えば君がレストランに入ったとしよう。
アルゼンチンでは,モッソ(ウエイター)が席に案内し椅子を引きながら話しかけてくる,
「夕立が凄かったが,セニョーラ濡れなかったか。日本にもこんな夕立はあるか」
メニューを差し出しながら,飲み物の注文を聞き,
「これが美味しい,お勧めだ」と勧める。
一方,パラグアイでは,「今日は」とはいうものの,ほとんど無口だ。何回か通って初めて,「やあ,やあ・・・」と言うことになる。シャイな田舎者の感じだ。
この気質の差はどこから来たのだろう?
一つは,歴史と民族構成が影響していよう。アルゼンチンの場合は,ヨーロッパ移民を積極的に受け入れる「欧化政策」がとられ,原住民をアンデスの山奥に追いやり,ヨーロッパ人の世界を築き上げた。中でもイタリアからの移住者が多く,ブエノス・アイレスでは5人に1人,全国でも8人に1人がイタリア系だという。
一方,パラグアイでは先住民族グアラニイ族とヨーロッパ人の「混血」が大半を占め,今では混血が95%を超えている。更に,パラグアイは隣国との長い戦争,「鎖国政策」を採っていたことも独特の文化・気質を築いた理由だろう。
アルゼンチン人は仕事が終われば家にまっすぐ帰り,家族でお茶をし,夕食は家族揃ってとるのが普通で,パーテイも夫婦や恋人同士でと言うのが一般的。一方,パラグアイ人は帰りしなに男同士でビールを飲んでいることが結構多い。
パラグアイで日系のご婦人が話すのを聞いた。
「パラグアイの男は日本の男に似ている。仕事の帰りに酒は飲むし,それに立小便をする」
「ん? 立小便・・・」
確かにそうかもしれない。パラグアイでは,車を止めて立小便している姿をよく見かけた。国道沿いに施設が整っていないこともあろうが,辺りを全く気にしている様子もない。
「いや,アルゼンチンの男だって立小便するよ」
ただ一回の体験を思い出しながら抗弁してみた。
それは,男同士で出かけた仕事の帰り,夕闇が迫った町はずれの道路わきでのこと。同行の紳士が薄暮の原野に向かって言った。
「大地に尿素を施そう・・・」
何をするにせよこの国の紳士にとっては「言葉」が必要なのだ。
声の主は,土壌肥料学専門のインヘニエロ(技師)だった。
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