豆の育種のマメな話

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パラグアイで納豆を食べる(前回の内容)

2011-03-24 10:47:59 | 南米で暮らす<歴史・文化・自然>

納豆

大豆を水に浸してよく水分を吸収させ,蒸し煮します。これを熱いうちに稲わら(納豆菌:Bacillus subtillis var. natto,枯草菌の一種が付いている)に包んで4042℃ぐらいに保たれた醗酵室に入れ,納豆菌を繁殖させます。その納豆菌が大豆の蛋白質を分解し発酵させたものが納豆です。

 

納豆菌は1000分の1mmくらいの大きさで,わらによく生息する微生物の一種です。数多くの分解酵素を作りだして,たんぱく質や脂肪を素早く分解する働きを持っています。発酵に使われる菌の中でも,麹菌や乳酸菌と違い,醗酵すると糸を引く特徴があります。また,納豆菌は胞子を作る性質があるため,胞子が大豆に植えつけられると,胞子が発芽してたくさんの納豆菌が生まれます。発酵の適温40℃では,30分に1度分裂するという,すばらしいスピードで繁殖します。また,納豆菌は大変生命力が強く,100℃以上になってもなかなか死にません。そのため,稲わらを使用しても,有害な雑菌の繁殖なしに,納豆作りが出来るわけです。

 

納豆は蛋白や脂肪などが納豆菌によりある程度分解されているため,消化吸収が良い健康食品です。また,グルタミン酸が多く含まれ,美味しく食べられます。納豆菌が分泌する主な酵素には,蛋白質をアミノ酸に分解するプロテアーゼ,でんぷんをブドウ糖に変えるアミラーゼ,脂肪を脂肪酸とグリセリンにするリパーゼ,繊維質を糖に変えるセルラーゼ,ショ糖をブドウ糖にするサッカラーゼ等があります。これらは分離精製され,消化剤として使われているほどです。

 

納豆を食べると酵素も一緒に体内に入り,消化を助けてくれます。納豆酵素には,整腸作用があるといわれています。また,納豆菌には昔から細菌に対する強い抵抗力(抗細菌性)があることも指摘され,多くの研究が行われています。

 

さらに最近,納豆菌が作り出すネバネバの部分に血栓溶解の働きをする物質(ナットウキナーゼ)があることが発見されました。まだ十分解明されていませんが,ナットウキナーゼは血栓を溶かす働きをする酵素プラスミンの合成を促進するのではないかと推測されています。

 

納豆と同じように無塩発酵させた食品に,インドネシアの「テンペ」があります。テンペは,煮豆をバナナの葉に包んで発酵させたもので(テンペ菌:Rhizopus oligosporus,クモノスカビの一種),外見はチーズのように白い菌糸で包まれた硬いものです。薄く切って油で揚げたり,砕いてスープに入れて食べます。テンペは貯蔵性が高く,淡白な味ですので,パラグアイでも親しみやすいかもしれません。

 

参照:T.Tsuchiya(2007)「Soja-Sabrosa,Nutritiva,Saludable」

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