豆の育種のマメな話

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世界の果て国立公園,テイエラ・デル・フエゴ

2012-07-31 11:09:05 | ラテンアメリカ旅は道連れ<南米旅日記>

国立公園は世界に約7,000あるという。国が自然を保護するために制定した管理地で,最初の国立公園は1872年アメリカ合衆国の第18代大統領によって指定されたイエローストーン国立公園である。ヨーロッパでも1909年に最初の国立公園が指定され,20世紀に入ると国立公園制定の動きは世界中に広まった。

南米アルゼンチンには29の国立公園があるが,その中の一つ1960年指定のテイエラ・デル・フエゴ国立公園(Parque Nacional Tierra del Fuegoは,フエゴ島のチリ国境,ウスアイアの西方18kmの所にある。アルゼンチンの中では唯一海岸部の国立公園で,高緯度(南緯5354度)にあることから植生に特徴がある。北西から南東に走る山脈は,アンデス山脈の南端にあたり,標高は10001,500mとそれほど高くはないが険しい自然の姿(森林,湖沼,海岸,氷河)をみせている。いわば,世界最南端に位置する「世界の果て国立公園」である。

 

20××年1229日,ウスアイアから少人数のツアーに参加した。

 

国立公園をトレッキングする前に,蒸気機関車に牽かれた玩具のような観光列車(世界の果て号,Tren del Fin del Mundo)に乗る。スペイン語と英語の説明を聞きながら列車の外を眺める。二十世紀の初め,囚人たちが木材を伐採した後の切り株が残る草原を列車はゆっくり進む(この鉄道自体も1910年,囚人達により建設されたものだと説明が続く)。

 

途中,マカレナで列車は一休み,観光客は列車から降りて写真を撮り,周辺をしばし散策。再び列車は終点まで行き,帰りは真っ直ぐ駅まで戻る。

 

国立公園の詰所からレンジャーが案内につく

「国立公園です。草花,木の葉一枚とて採ることはできません。罰せられます」

手振りよろしく,笑いを誘いながら説明する。

森を抜け,草原を渡り,山を越えて進む。

「パタゴニアは乾燥の土地だが,この島は雨が多く冷たい雨林帯を形成している」

「この木がレンガ(Lenga,ナンキョクブナ,この木が最も多い),風が強いからこのように背が低く,一方になびいた形になるのです。この小さな葉がニイレ(Ñire),ギンド(Guindo)・・・,ビーバーを見ることもありますよ」

「これがカラファテ(メギ科,Calafate, Berberis buxifolia),この実を食べた人はもう一度パタゴニアに戻ってくると言う伝説があるのです。皆さんは食べましたか?」

 

パタゴニアで最も有名な話を,このガイドも語った。棘のある小灌木で黄色の花をつけ,実は熟すると濃い青色でジャムなどに加工される。

 

草原を歩き,小高いブナ林の山を越えると,ロカ湖に出た。波静かなラパタイア湾,ロカ湖は標高ゼロにもかかわらず高原の湖のよう佇まいをみせている。

 

最果ての郵便局で絵ハガキを投函する。国道3号線の終点を示す標識の前で記念撮影。アラスカまで17,848kmの文字が旅の感傷を誘う。ここは国道3号線の終点であると同時に,「パンアメリカンハイウエイ」(Pan-American Highway, Carrentera Panamericana)の終点でもあるのだ。この道路を歩いていけば,いつかアラスカにたどり着くのだ,空想を掻き立てる。

 

ちなみに,パンアメリカンハイウエイの整備構想が最初に提唱されたのは,1923年の米州国際会議であったという。構想を受けてパンアメリカンハイウエイ会議が設置され,道路整備とネットワーク化が進められた。アメリカ大陸を縦断する幹線道路構想である。

アラスカ州のフェアバンクスを起点に,北米大陸西岸から中西部を通りメキシコから中米に抜け,南米大陸の西海岸を南下しサンチアゴからアンデス山脈を横断してブエノスアイレス,さらにそこから南下して大陸南端のテイエラ・デル・フエゴに至る(実際には,単一の路線ではなく道路網)。ハイウエイの全長は約48,000kmとの記載もあるが(WikipediaBuritannica1977),両都市間を緯度と経度で計算したところ約15,000kmであった。

このハイウエイはナスカの地上絵を横切っている(地上絵が破壊されている),熱帯雨林や原住民保護の上で支障を来たしたとの意見もある。開発と自然保護のバランスはどうあるべきか,人類は常に問われている。

 

30分ほどの軽いトレッキングであったが,心地よい疲労感を覚えた。世界の果てで自然に遊ぶ体験が,長い人生の中で一度はあっても良いだろう。思い出に残る旅だ。

 

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