竹取翁と万葉集のお勉強

楽しく自由に万葉集を楽しんでいるブログです。
初めてのお人でも、それなりのお人でも、楽しめると思います。

万葉集 集歌1178から集歌1182まで

2020年11月20日 | 新訓 万葉集
集歌一一七八 
原文 印南野者 徃過奴良之 天傳 日笠浦 波立見
訓読 印南野(いなみの)は往(い)き過ぎぬらし天伝ふ日笠(ひかさ)し浦に波立てり見ゆ
私訳 印南野は通り過ぎたらしい、大空を伝い行く日(=太陽)の、その日笠の浦に波が立っているのを眺めました。
左注 一云 思賀麻江者 許藝須疑奴良思
注訓 一(あるひ)は云はく、飾磨江(しかまえ)は榜(こ)ぎ過ぎぬらし

集歌一一七九 
原文 家尓之弖 吾者将戀名 印南野乃 淺茅之上尓 照之月夜乎
訓読 家にして吾は恋ひむな印南野(いなみの)の浅茅(あさぢ)し上に照りし月夜(つくよ)を
私訳 家にあって私は恋しく思うでしょう。その言葉のひびきのような、印南野の浅茅の上に照った月夜のことを。

集歌一一八〇 
原文 荒礒超 浪乎恐見 淡路嶋 不見哉将過 幾許近乎
訓読 荒磯(ありそ)越す浪を恐(かしこ)み淡路島(あはぢしま)見ずか過ぎなむ幾許(ここだ)近きを
私訳 荒磯を越す浪を恐れ敬って、淡路島を眺めることなく通り過ぎて行くのだろう。これほど近いのに。

集歌一一八一 
原文 朝霞 不止軽引 龍田山 船出将為日者 吾将戀香聞
訓読 朝(あさ)霞(かすみ)止(や)まず棚引(たなひ)く龍田山(たつたやま)船出(ふなで)せむ日は吾恋ひむかも
私訳 朝霞がいつも棚引く龍田山よ。船出する日には、私は恋しく思うでしょう。
注意 原文の「軽引」は、標準解釈では「たなびく」と訓じます。ここでは霞の濃淡の感覚の差を考えました。

集歌一一八二 
原文 海人小船 帆毳張流登 見左右荷 鞆之浦廻二 浪立有所見
訓読 海人(あま)小船(をふね)帆(ほ)かも張れると見るさへに鞆し浦廻(うらみ)に浪立ちあそ見ゆ
私訳 海人の小船が帆でも張ったのかと眺めるにまして、鞆の入り江に浪が立っているのが見える。
コメント
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