ミラクルな逆転劇で勝ち上がる、
或いは、圧倒的な怪物がいる。
そんなチームに注目は集まりやすい。
けれど、個々が与えられた仕事を
的確にこなす集団は
話題性は別にして〈強い〉!
古豪に多い特長とも言えるが、
創立70周年の老舗劇団
「東京演劇アンサンブル」も
まさにそんな〈塊〉といえる。
70周年記念公演第3弾
『白い輪、あるいは祈り』は、
この劇団の出自でもある劇団俳優座の
先人たちがつくった劇場で19日に開幕
俳優座養成所3期生が集まって
1954年に結成され、
発足時「三期会」と称した
東京演劇アンサンブル(以下TEE)。
そのTEEが節目の年に招いたのは
鄭義信(チョン・ウィシン)。
新宿梁山泊から世に出た彼もまた
辿れば俳優座に連なる。
彼が最初にいた「黒テント」は
俳優座養成所第14期生の佐藤信らが
立ち上げたアングラ劇団だ。
そしてまた、TEEといえばブレヒト。
「異化効果」などの演劇理論を生んだ
ドイツの演劇人の作品にこだわり
上演してきた彼らが、
ブレヒトの代表作のひとつ
『コーカサスの白墨の輪』をもとに
鄭流にアレンジし演出するのが
『白い輪、あるいは祈り』。
2015年韓国国立劇場の依頼により
上演された韓国唱劇『白墨の輪』を
下敷きに今回再構成され、日本初演。
さて、チームが前年度優勝だろうと
初出場だろうと、
エースは居てムードメーカーが居る。
TEEも脈々と看板俳優を輩出してき、
今は永野愛理(ながのえり)と
雨宮大夢(あめみやひろむ)の
2011年に入団した同期二人が
主演を張ることが多い。
領主の子を育てる女中グルシェと
その許嫁のシモンが今回の役どころ。
サッカーでは危機の芽を積む守備や
ハードワークをこなすボランチが
玄人筋には評価が高いが、
演劇においてもコメディリリーフ等
脇に徹して楽しませる役者がいる。
『白い輪〜』では三木元太がその責に。
舞台監督など裏方でも劇団を支える
中堅が役者としても一皮むけた。
ブレヒト『〜白墨の輪』といえば、
座長クラスが担う裁判官アツダクに
洪美玉(ほんみお)。
タカラヅカのトップよろしく
艶やかに凛々しく演ってのけた!
一方で、入団間もない福井奏美が
育ての親グルシェと対立する
産みの親にして領主夫人ナテラを
好演……とこの調子で書くと、
出演者全員に触れてしまいそうだ。
最初に書いたように与えられた役割を
個々が全うした〈塊〉の結晶が
何より一等素晴らしかった。
その公演も明けて今日23日が千秋楽。
そして、会場の俳優座劇場閉館も
いよいよ来月末に迫った。
挿し込んだ2枚の写真は
コーカサス地方のイメージ画像。
追記
俳優座劇場は閉館するが、
株式会社俳優座劇場は存続し、
〈俳優座劇場プロデュース〉を冠した
演劇作品の製作も続く予定。
尚、別法人の劇団俳優座も勿論健在。
〈創立80周年記念〉の15公演も
いよいよ5公演6作品を残すのみ。
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