ごめんね、りかちゃん

「もしもし、ごめん、ちょっと遅れてて
りかだけど」と超親しい感じで言うので
「今、どこ？」と聞いた。
「東北沢だから、もうすぐ着く」
「は～い」

現在僕の携帯は公演のチケットの
問い合わせ番号になっているから
名前を名乗ってしまうと、
間違えたと思って切ってしまわれる方が
いないとも限りません、ので、

りかちゃんからの電話にも
名を名乗らなかったのだ。
ただ「もしもし」と

加えて。その時間、我々は明日の小屋入りの為
稽古場で使った道具や制作グッズを積むべく
ワゴン車を待っていたのだ。シモキタで。

そのタイミングで「遅れて」いて
「東北沢」で「もうすぐ着く」という
キーワードは、ついつい相槌を打っても仕方ない。

冒頭に書いたように、りかちゃんの
ハイテンションでやたら親しげだったので
「どちら様ですか？」が出なかったのだ。

でも。車を取りに行ったのは男優一人のはず。
ただイベント会社も経営する彼は、
最近は経理の女性と営業に行くと飲み屋で語っていて。

頭が混乱してきたので、階下に下りてメンバーに
「中嶋さん、一人で行ったよね？」と確認してしまった。

りかちゃん、ごめんなさい。
まあ、友達の元には辿り着いたのだろうけれど・・・。

それから１０分ほどでワゴン車は到着。
さあ！　明日は初日だ。