カラヤン帝国興亡史 中川右介 幻冬社新書
巨匠フルトヴェングラー亡き後、ベルリン・フィル首席指揮者の四代目の座を掴んだ男、ヘルベルト・フオン・カラヤンの伝記である。現在、カラヤン生誕100年ということで彼のCD、DVDが発売されている。ドイツグラモフオンのものが圧倒的に多い。今、店頭では1988年4月29日から5月5日まで、東京と大阪で5回の公演のCDがラストコンサートと銘打って発売されている。カラヤンはクラシックを大衆に広めたという意味では評価に値する。日本に於けるカラヤンの人気は異常といえるほどで、帝王カラヤンの植民地と言われている。
興味深いエピソードをつづって厭きさせないが、レコード会社のEMI、ドイツ・グラモフオン、デッカとの契約交渉をめぐる部分とか、戦前からの大指揮者であったカール・ベームやアメリカのスター指揮者であったレナード・バーンスタインとの確執など、彼がどのようにしてクラッシック界の最高権力者に登りつめて行ったかが豊富な資料を基に描かれている。
ということで、先日カラヤンがグレン・グールドと組んでベルリンフィルを指揮したCDを買った。中味はベートーベンのピアノ協奏曲第三番とシベリウスの交響曲第五番(SONY CLASSICAL)。録音は1957年5月。グールドはこの2年前の1955年のバッハのゴールドベルク変奏曲のレコードで従来のバッハの解釈を180度変える演奏を披露して一躍スターダムに躍り出ていた。後年演奏会活動を一切止めてレコードだけを発表の手段にしたことは有名な話である。ベートーベンの方は流れるようなテンポで、若き日のカラヤンとグールドが溌剌とした演奏を聴かせる。ジャケットの二人のセピア色の写真も歴史を感じさせて大変すばらしい。