読書日記

いろいろな本のレビュー

ボローニャ紀行  

2008-05-19 22:24:54 | Weblog


ボローニャ紀行  井上ひさし 文藝春秋
 イタリア北部の都市ボローニャから世界の在りかたを考えるのが趣旨だそうだ。著者は少年のころ家庭の事情でカソリックの施設の入っていた。その縁で上智大学に入り、フランス語科を卒業した。従ってカソリックのイタリアとは縁が深いのだ。ボローニャのただの観光案内ではまずいと思ったのであろうが、もう少し街そのものの風景・印象・市民生活の細部を書いて欲しかった。「世界の在りかた」を考えすぎてイマイチ面白くない。さすが日本共産党お抱えの作家・脚本家のことだけはある。
 イタリアは車、ネクタイ、靴、その他さまざまの工芸品においてそのスタイルセンスは抜群である。アルフアロメオのスタイリングを見よ。その造形美の素晴らしさは日本車が逆立ちしても敵うものではない。そのイタリアも現在経済不況で指導者がころころ変わり、政治の混迷を深めている。著者はそのイタリアに一筋の光明を見出し応援しようというスタンスだ。私もイタリア車は無理だが、ネクタイでイタリア経済の復興に一役買うことにしよう。
 これは余談だが本書に「私の妻が」という記述が何回も出てきたところを見ると再婚されたようだ。十年ぐらい前に離婚されて、そのいきさつを当時の細君であった西舘好子氏が「修羅の棲む家」(はまの出版)で暴露されていた。それによると井上氏は大変な暴君で、ドメスティックバイオレンスありいのバイオレンスセックスありいの凄かったらしい。細君側の一方的な見解ゆえ話半分としても、作家の日常の部分的断面の一側面を垣間見た気がした。作家ってストレス溜まるんですねえ。ほんとにサラリーマンでよかったです。守屋ひろしじゃないが、ああ、ありがたや、ありがたや。