読書日記

いろいろな本のレビュー

ルポ 貧困大国アメリカ  

2008-05-05 18:07:29 | Weblog


ルポ 貧困大国アメリカ  堤 未果 岩波新書
 既に16万部売れたらしい。岩波新書久々のヒットである。「アメリカ弱者革命」の続編で特に目新しいものはない。腰巻には、「教育」「いのち」「暮らし」という、国民に責任を負うべき政府の主要業務が「民営化」され、市場の論理で回されるようになった時、果たしてそれは「国家」と呼べるのだろうか?というプロローグの一節が引用されている。教育、医療、戦争まで民営化されている現実を読むと、アメリカは大変だなあと思ってしまう。
 しかし、地べたを這いずりまわって生きている階層がいる反面、優雅に暮らしている連中もいるわけで、その総体としてアメリカを論ずることも大切だ。極端な民営化が貧困の再生産を助長する。これはアメリカの後を追う日本に対する警告に他ならないという議論に収斂させようというもくろみが見え見えで、少し勇み足かな?という感じ。岩波書店の悪いところが出てしまいましたね。次回は日本の民営化の実態とその影響についてルポしてもらいましょう。