【問】 最近自動車を購入したので、自宅の空き地を車庫にしようと思うのですが、地主が車庫利用の承諾書を出してくれないので困っています。どうしたらよいでしょうか。
【答】 借地人は、借地内に自己の自動車を駐車する権利があるかどうかについてです。
地主によっては、駐車場としては貸していないので、使わせないという人もいます。 しかし、借地人は、土地を建物所有の目的で借りており、建物は、住居や、事務所、店舗など人の生活の場となるわけですから、建物利用のために当然付随する土地利用については、借地契約の目的の範囲内ということになります。
自動車を所有することは、現在ではごく当たり前のことですし、借地内に自動車を駐車したからといって、地主に損害を与えるものではありません。ですから、借地内に自分の自動車を駐車させることは、借地人の権利とした認められています。
次に、地主が車庫利用の承諾書を出してくれないという点についてです。
自動車の保管場所の確保等に関する法律3条は、自動車の保有者は、道路上の場所以外の場所において、自動車の保管場所を確保しなければならないと定めています。また、自動車を購入した時、陸運局に自動車の登録をしないと、自動車の運行ができません。
ところが、その登録を申請するときに、申請する人が自動車の保管場所を確保していることの証明書(車庫証明)を警察からもらわないと、登録ができないことになっています(自動車の保管場所の確保等に関する法律4条)。
そして、自動車の保管場所としては、
①当該自動車の使用の本拠の位置との間の距離が2キロメートルを超えないこと、
②道路から自動車を支障なく出入りさせ、かつ、自動車の全体を収容することができること、
③当該自動車の保有者が当該自動車の保管場所として使用する権原を有するものであること、
の3つの条件が必要とされています(自動車の保管場所の確保等に関する法律施行令1条)。
地主が、車庫利用の承諾書を出さないという点は、上記の③の条件にかかわることです。
車庫証明の申請を受けた警察は、当該自動車の保有者が申請した保管場所について、使用権原の有無をチェックをすることになります。
借地人は、借地に自動車を駐車させる権利がありますから、自動車の保管場所として使用する権原があります。ですから、地主が、車庫利用の承諾書を出さなくても、借地契約書など借地権があることを証明する書類があれば、警察から車庫証明を発行してもらうことができます。
この取扱については、警察庁の交通規制課が全国の警察署へ内部指示をして、指導しています。
東借連常任弁護団解説
「Q&A あなたの借地借家法」
(東京借地借家人組合連合会編)より
ここから先は東京・台東借地借家人組合が追加したものです。
自動車の保管場所の確保等に関する法律施行令
(保管場所の要件)
第1条 自動車の保管場所の確保等に関する法律 (以下「法」という。)第3条 の政令で定める要件は、次の各号のすべてに該当することとする。
1 当該自動車の使用の本拠の位置との間の距離が、2キロメートル(法第13条第2項 の運送事業用自動車である自動車にあつては、国土交通大臣が運送事業(同条第1項 の自動車運送事業又は第2種貨物利用運送事業をいう。)に関し土地の利用状況等を勘案して定める地域に当該自動車の使用の本拠の位置が在るときは、当該地域につき国土交通大臣が定める距離)を超えないものであること。
2 当該自動車が法令の規定により通行することができないこととされる道路以外の道路から当該自動車を支障なく出入させ、かつ、その全体を収容することができるものであること。
3 当該自動車の保有者が当該自動車の保管場所として使用する権原を有するものであること。
<参考>
「権限」 、「権原」、「権利」との違いは?
「権限」は、広く用いられる法令用語で、国、地方公共団体、各種法人又は個人の機関(又は代理人)が法律上若しくは契約上なし得る行為の能力又はその範囲をいう。或いは、法律上、ある法律関係を成立または消滅させ得る地位という意味。
(例) 国の権限に属する行為 代理人の権限
「権原」とは、「ある法律行為又は事実行為をすることを法律上正当化する根拠(原因)」のことである。民法上、所有権者に対し、地上権・賃借権などを有する者の法律関係を表す場合の用語として多く用いられる。
(例) 借地権の存続期間が満了した場合において、契約の更新がないときは、借地権者は、借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原により土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる(建物買取請求権・借地借家法13条1項)。
(例) 他人の土地に建物を建築する権原は、地上権、借地権等である。
「権利」というのは、法律用語としては法規範によってつくり出される正当性、狭義にはみずからの意思によって法的救済を求めうる法的可能性の意味に用いられる。或いは、一定の利益を自分のために主張し、また、これを享受することができる法律上の能力をいう。
(例) 私は飲酒運転による交通事故の被害者として、加害者及び飲酒運転を容認した同乗者の加害責任を追及する権利がある。
東京・台東借地借家人組合
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