東京・台東借地借家人組合1

土地・建物を借りている賃借人の居住と営業の権利を守るために、自主的に組織された借地借家人のための組合です。

【判例紹介】 *家賃差押え後に建物を買った者は家賃取得で差押債権者に対抗できない

2006年07月17日 | 借家の諸問題

 判例紹介

 家賃が差押えられた後に建物を買った者は家賃の取得について、差押債権者に対抗できないとされた事例 最高裁平成10年3月24日判決・判例時報1639号45頁)

(事実)
 Xは、平成3年3月、建物所有者(家主)Aに対する判決に基づき、Aの借家人Bに対する家賃債権を差押えた。

 Yは、平成4年12月に家主Aから右建物を取得して所有権移転登記を得た。そして、Yは借家人Bに対し、家賃を自分に支払うよう請求した。
 そのため、借家人Bは、平成5年2月以降、債権者不確知と差押えの両者を原因として、家賃を供託した。

 そこで、XはYに対し、供託金を取得する権利が自分にあることの確認を求めて本件裁判を起こした。
 東京高等裁判所は、平成6年11月29日、『家賃の差押中に建物所有権の移転があっても家賃債権の差押との関係では右移転は無効であって、家賃債権は依然として前の家主に帰属するものとして、右差押えの効力は及ぶもので、Xは、Yが建物所有権を得た後も家賃債権を取得できると解すべきである』と判示した。

 Yは、これを不服として、最高裁判所に上告した。

(争点)
 家賃債権は、差押債権者と建物の譲受人のいずれに帰属するか。

(判決要旨)
 最高裁判所は、『自己の所有建物を他に賃貸している者が第三者に右建物を譲渡した場合には、特段の事情のない限り、賃貸人の地位もこれに伴って右第三者に移転するが、建物所有者の債権者が賃料債権を差し押さえ、その効力が発生した後に、右所有者が建物を他に譲渡し賃貸人の地位が譲受け人に移転した場合には、右譲受人は、建物の賃料債権を取得したことを差押債権者に対抗することができないと解すべきである。けだし、建物の所有権を債務者とする賃料債権の差押えにより右所有者の建物自体の処分は妨げられないけれども、右差押えの効力は、差押債権者の債権及び執行費用の額を限度として、建物所有者が将来収受すべき賃料に及んでいるから、右建物を譲渡とする行為は、賃料債権の帰属の変更を伴う限りにおいて、将来における賃料債権の処分を禁止する差押えの効力に抵触するというべきだからである』と判示した。

(短評)
 近時、銀行等の債権者が家賃を差押後、建物が譲渡されるケースが多発している。
 この場合、借家人は、新家主に家賃を支払ってはならず、差押命令に従って差押債権者に支払うか、または、家賃支払履行地の法務局に供託するかのいずれかの方策を採るべきである。

(1998.09.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 

東京・台東借地借家人組合

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