東京・台東借地借家人組合1

土地・建物を借りている賃借人の居住と営業の権利を守るために、自主的に組織された借地借家人のための組合です。

【判例紹介】 *賃料増額請求を受けた借地人は相当と判断する金額の地代を払えばよい

2012年02月16日 | 地代の減額(増額)

判例紹介


 地主から賃料増額請求を受けた借地人が相当と考える地代を供託していたが、その地代額が後に裁判所で確認された相当賃料より低い額だったとしても債務不履行(契約違反)とならないとした事例 
最高裁平成5年2月18日判決、平成2年(オ)第1444号)。


【事案の概要】
 借地人は昭和45年に本件土地を地代6760円で賃借した。地主は昭和57年に3万6052円に、昭和61年に4万8821円に、それぞれ地代増額請求をした。

 借地人は6760円を支払おうとしたが地主が受領を拒否したので、昭和59年6月まで6760円、昭和62年6月まで1万0140円、昭和62年7月以降2万3000円を供託した。

 地主は借地人が請求どおりの地代を支払わないため昭和62年7月に支払いを催告し、支払わなければ賃貸借契約を解除する旨通知したが、借地人が応じなかったため土地明け渡しを求める訴訟を提起した。1審、2審とも地主の土地明け渡し請求を認めた。


【判旨】 2審(大阪高裁)判決取消し、地主の請求棄却。

(1)借地人が相当と考える地代を供託しているので、賃貸借契約解除の理由となる債務不履行(契約違反)はない。

(2)借地人が固定資産税等、本件土地の公租公課の額を知りながら、それを下回る額を供託している場合は、その額は著しく不相当であり債務不履行(契約違反)ともなりうる。

(3)借地人が供託した額は公租公課の額を上回っているから、本件土地の地代が隣地の地代に比べてはるかに低額であると知っていても債務不履行(契約違反)とはならない。


【寸評】
 借地借家法11条2項(旧借地法12条2項)は地代が「近傍類似の土地の地代等に比較して不相当」となったときは地代の増額または減額請求ができると定め(減額請求しないとの特約は無効)、同条3項は増額について地主と借地人の協議が調わないときは、借地人は裁判で増額が決まるまでは「相当と認める額の地代」を払えば足りると定めている。

 本件は「相当」の判断は借地人が相当と考える額でよいとする一方、その額が公租公課を下回る額であることを知っていた場合は借地人が相当と考えていても債務不履行(契約違反)となるとしたものである(註1)。

 なお、借地人が相当と考える地代に減額請求しても、地主は相当と考える地代を請求できる(借地借家法11条3項)ので注意されたい(註2)。

 

(2012.02.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より


 以下の記述は、東京・台東借地借家人組合

註1) 【判例紹介】 *賃料増額を拒否し支払額が税額以下と知っていた時は相当賃料に当らない (最高裁平成8年7月12日判決


註2) 【判例紹介】 家賃減額を請求した場合に裁判確定前の家賃額は従前と同額とした事例

     【判例紹介】 一方的に減額賃料を支払った借家人が賃料不払で契約解除された事例

     【判例紹介】 賃料減額で従前を下回る賃料を支払い続けが、契約解除が認められなかった事例

 

東京・台東借地借家人組合

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