東京・台東借地借家人組合1

土地・建物を借りている賃借人の居住と営業の権利を守るために、自主的に組織された借地借家人のための組合です。

【Q&A】 備付けのエアコンの修理代金は家主の費用負担

2015年05月27日 | 修理・改修(借家)

    備付けのエアコンの修理代金は
      修繕特約がある場合でも家主の費用負担

 (問) 賃貸マンションの備付けのエアコンが故障し、不動産管理会社に修理を依頼したところ、特約で修理は賃借人負担となっているので、電気店に自分で修理を依頼 するようにと断られた。取敢えず自分で電気店へ修理を頼み、室外機のコンプレッサー不良交換で、5万円の修理代を支払った。本来備付けの設備は、貸主が修 理代金を負担するのが道理だと思うのですが。


 (答) 民法606条1項で賃貸人は修繕義務を負っている。賃借人の故意・過失がない限り、賃借人が修繕をした場合、賃貸人に対してその費用を請求することが出来 る。但し、同条は、任意規定であり、特約で修繕義務を賃借人に負担させることは可能である。しかし特約を結べば何でも認められる訳ではない。

 (1)「借家人の負担において修繕を行う旨の特約をもって賃借人に積極的に修繕義務まで課したものと解することはできない。仮に修理特約により何らかの修繕義務を負うものとしても、その範囲は小修理・小修繕の範囲に限られるべきである」(名古屋地裁 平成2年10月19日判決)。

 (2)「修繕特約は、一定範囲の小修繕については賃借人の全額負担とする旨を定めたものであるといえるが、居住用建物の賃貸借における特約の趣旨は、通常賃貸人の修繕義務を免除したにとどまり、更に特別の事情が存在する場合を除き、賃借人に修繕義務を負わせるものではない」(仙台簡易裁判所 平成8年11月28日判決)。

 (3)横浜地方裁判所は修理特約が契約書に書き込まれていても、「本 件修理特約の趣旨は、民法606条による賃貸人の修繕義務を免除することを定めたもので、右特約により、被控訴人(賃借人)が当然に本件建物の修理・取替 費用を負うことはないと解すべきである。また、本件賠償特約は、本件建物の損傷について損害賠償義務を定めるが、賃貸契約の性質上、この損害には、被控訴 人(賃借人)が、本件建物を通常の態様で使用した結果発生した損害は含まれないと解すべきである」(横浜地方裁判所 平成8年3月25日判決。平成7年(レ)第3号 敷金返還請求控訴事件)

  即ち、家主の修繕義務を免除したにとどまり、積極的に借家人に修繕義務を課したものではない。仮に修繕特約によって賃借人が修繕義務を負うとされる場合で も、少額の費用で済む「小修繕」についてのみ修繕義務を負い、「大修繕」については修繕義務を負わない。従って、大修繕に関しては修繕特約を結んでも無効 というのが裁判例である。
 上記、横浜地裁判決では、通常使用で発生した破損・損耗等の損害は賃借人に修繕義務がないと判示している。

  結論、修理代金が概ね1万円以下の場合が小修繕と言われる。相談者のエアコン修理は、小修繕とは言えないし、通常使用による損害に対しては賃借人は修繕義務を負わない。賃借人が自ら修理 費用を負担した場合は、賃貸人に対して、民法608条により、直ちに支出した費用の全額を費用償還請求できる。賃貸人が修理費用を支払わない場合は、修理代金と家賃を相殺することが出来る。

 

東京・台東借地借家人組合

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