東京・台東借地借家人組合1

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【Q&A】 ペット可の契約で入居したが退去時のペットの損耗修復費の支払いは必要なのか

2010年11月02日 | 敷金(保証金)・原状回復・消費者契約法

 (問) 「ペット飼育」が許可されたマンションで、入居時から2年間猫を飼っていた。先月そこを退去したが、敷金が全く還ってこない。理由を尋ねると、「猫による室内の破損・汚損が多数あり、それらの原状回復費用として敷金から控除したので、返還する敷金はない」と回答してきた。
 「ペット可」のマンションにおいて、飼育による費用負担の特約も無いのに原状回復費用は借主の負担になるのか。


 (答) 原状回復費用に関して大多数の判例は、「建物賃貸借において、賃借人が退去の際に負担する原状回復費用は、賃借人の故意・過失による建物の毀損や通常を超える使用による損耗等については賃借人が負担する」という見解である。

 賃借人の「原状回復義務には、特約のない限り、通常損耗に係るものは含まれず、その補修費用は、賃貸人が負担すべきである」(最高裁平成17年12月16日判決)としている。

 また、「原状回復特約、即ち、自然損耗等についての原状回復義務を賃借人が負担するとの合意部分は、民法の任意規定の適用による場合に比し、賃借人の義務を加重し、信義則に反して賃借人の利益を一方的に害しており、消費者契約法10条に該当し、無効である」(大阪高裁平成16年12月17日判決)。

 このように、通常損耗、自然損耗等は原状回復の対象にはならない。従って、「賃借人が通常の使用により生じた損耗を修復することは含まれていない」(大阪高裁平成16年12月17日判決)ということであるから、賃借人はこれらの修復費用を負担する義務はない。

 ペット飼育による一般的に生ずる破損・汚損については、「通常損耗」と言えるので、ペット飼育による費用負担に関する特段の定めがない限り、修復費用は賃貸人の負担となる。

 それでは、「費用負担に関する特段の定め」とは、どのような特約をいうのか。

 ①退去時の「ペット消毒特約」を定めた事例では、「『ペット消毒につては賃借人の負担でこれを行うものとする。尚、この場合専門業者へ依頼するものとする。』との合意は、ペット飼育した場合には、臭いの付着や毛の残存、衛生の問題等があるので、その消毒のために上記のような特約をすることは合理的であり、有効である」として、ペット消毒のための「クリーニング費用」(5万円)を原状回復費として認めた(東京簡裁平成14年9月27日判決)。

 ②退去時の美装工事(洗い工事)の借主の費用負担を定めた特約の事例では、「ペット飼育については、多くのマンション等共同住宅においては未だ一般的ではなく、建物の毀損や臭いの付着、毛の残存、蚤等衛生上の問題が発生してペット飼育特有の問題が生じるため、飼育者である賃借人に一定の負担をさせることについては合理性がある」と判断した。
 「猫の飼育に起因する汚れ・破損等についての原状回復費用を負担する旨定めたと解するのが相当」であるとして、猫の飼育による室内の脱臭処理費(2万5000円)を原状回復費用として認めた(京都簡裁平成16年7月1日判決)。

 以上が賃貸マンション・アパート等でペット飼育の原状回復費用として認められた「特段の定め」である。

 これらの特約が認められるためには、少なくとも、賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されていることなど、その旨を明確に認識し、特約が明確に合意されるていることが必要である最高裁平成17年12月16日判決)。特約を結べば何もかも有効という訳ではないし、特約として認められるということではない。最高裁の判決文にあるように特約の成立条件は可なり厳格である。特約が有効と認められるには特約内容が適切正であり、明確な合意があることが必要である。

 最高裁が指摘するように、「通常使用をした場合に生ずる賃貸物件の劣化又は価値の減少を意味する通常損耗に係る投下資本の減価の回収は、通常、減価償却費や修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませて支払いを受けることにより行われる」(最高裁平成17年12月16日判決)。

 このように、「ペット可」を謳う賃貸マンションの場合は、ペット飼育による通常損耗についての原状回復費用は、賃料の中に織り込まれているのが一般的であり、更に修復費用を賃借人が支払うことは不当な賃料の二重払いになる。

 結論、「ペット可」の賃借物件の場合、通常のペット飼育に関係する破損・汚損は原状回復の対象にならないので、修復費用を借主が負担する義務はない。

 

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