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判例紹介
有益費償還請求権を予め放棄することは借家法6条、民法90条に違反しないとされた事例 (東京地裁昭和61年11月18日判決、金融商事判例773号)
(事案)
賃借人は、ビルの一室を賃借して店舗内装を一切自分で行い、パブを営業していたが、8か月分の家賃(約570万円、共益費含む)を滞納してしまった。家主は契約を解除して明渡の訴訟を提起した。
裁判で、賃借人は、店舗内装工事に4654万円を掛けたので、その有益費の償還を受けるまでは明渡す義務はないと争った。
家主は、賃貸契約書には、有益費償還請求権を予め放棄する特約をしているので、賃借人には、有益費償還請求権がないと反論した。
そこで、有益費とは何か、造作と何か、有益費償還請求権も放棄できるかが論点となった。
(判決要旨)
賃借人は有益費償還請求権は借家法5条6条に照らし、予め放棄することは許されないと主張するので検討する。
造作買取請求権は、賃借人が建物に付加した造作について、特にこれが独立の存在を有し、賃借人の所有に属することに着目して特に借家人保護のため強行法規とする。
これに対し、有益費償還請求権は、借家人が建物の改良に支出した有益費を償還せしめるものであって、借家人が右支出によって建物に付加した部分は独立の存在を有するものではない。従って当該部分の所有権は借家人ではなく、建物と一体となって建物所有者に帰属するものである。
有益費償還請求権の本質は任意法規でである不当利得返還請求権に由来しているものであり、両者は賃借人の建物に対する投下資本の回収という点では共通するものの、法律的にはその根拠ないし本質を異にする。
造作買取請求権の場合にはその目的物が賃貸人の同意を受けて付加したものに限られるのに対し、有益費償還請求権については有益費という限度があるほか、賃貸人の意思如何を問わず認められるものである。
従ってこれを強行法規と解すると、賃借人に過酷な結果を強いることになり、かえって建物賃貸借の円滑な設定を阻害するおそれもあるので、有益費償還請求権について明文の規定がないのに単に経済的には同一の作用を営む点だけをとらえて造作買取請求権と同様に強行法規であると見ることはできない。
(感想)
有益費償還請求権の法規の条項を入れた契約書が、よく取交される。本件では賃料不払のケースであるが、そうではなく期間満了あるいは合意解約で明渡す場合は矛盾が出る。
賃借人の負担で建物の価値を増し、その質を高めて賃貸人にも利益を与えたのに、特約を入れさすれば、その費用償還が認められないというのは不公平であるし、良質な建物を供給するという社会的利益にも反する。
(1987.12.)
(東借連常任弁護団)
東京借地借家人新聞より
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